矛盾した論理かもしれないが…おすすめ度
★★★★★
毎年夏になると何故か“戦争映画”に目が向いてしまいます。
本作は,単純に“戦争映画”で片付けられるとは思いませんが,あの第二次世界大戦の悲劇が題材となっていることは間違いありません。
本作では,第二次大戦下の名古屋空襲の時,不時着した米兵を斬首した罪でB級戦犯とされ,絞首刑となった岡田資(たすく)中将の裁判の様子が描かれていますが,岡田中将は,本裁判で「責任はすべて司令官である自分にある」としながらも,一貫して「無差別爆撃をした米軍もまた国際法違反である」という主張を論理的に訴えた人物です。
裁判の中で岡田は,名古屋空襲は無差別爆撃であり,軍事施設への爆撃のみを認めたジュネーブ条約違反であると主張し,搭乗員たちは捕虜ではなく戦犯であるから処刑はやむをえないと断じ,さらには,無差別攻撃を行った責任はたとえ直接爆撃したわけではない無線員であっても負わねばならない,それは連帯責任であるからと述べ,バーネット検察官から「操縦士でも爆撃手でもない,単なる無線士であっても戦争犯罪人だと言うのか? 基地で搭乗を命じられて彼が拒否できるとでも?」と追及されますが,岡田は「確かにそうだが,それでも空襲は搭乗員全員が有機体となって行われたことだから」と反論します。
しかし,この主張と「斬首の指令を下したのは自分であり,責任はすべて自分にある」と強調して斬首を実行した部下の命を救おうとしたことは矛盾した論理といえるかもしれませんね。
本作は,大岡昇平原作の「ながい旅」に感銘を受けた小泉尭監督が,15年の歳月をかけてあたため,満を辞して映画化されました。岡田資の誇り高く生きる姿に込められたメッセージはまさに次世代への“遺言”とも言える作品です。
ちなみにバーネット主席検察官を演じたのはスティーブ・マックイーンの息子さんです。いかついところがよく似ていますね。
ひたむきな姿が、心を打つおすすめ度
★★★★★
誰だって自分の命は惜しい。もし誰かに罪をなすり付ける事で自分の命が助かるなら、悪魔に魂を売ってでも、自分だけは何とか生き延びようとするのが人の常。彼には、あわよくば助かろうなどという気は一切ない。責任はすべて自分にあるという立場を貫く。
岡田中将が捕虜の米兵を死刑執行をしたことが、はたして不当なのか否かが論争の焦点となっていくわけですが、岡田中将と弁護士は、論点を巧妙にずらしていき、無差別爆撃=不法行為をおこなっていた米軍機に搭乗していた乗組員は、犯罪者と同等であり、捕虜としては遇することをせず、あくまで大量殺戮の犯罪者として処罰したのであって、それは不当にはあたらない、という論理を展開していくわけです。
まあ、詭弁という感じもしないわけではありませんが、「あれ?ひょっとしたら、無罪になっちゃうかも?」なんて思わせる映画の撮り方がされていて、なかなか楽しめました。
3台のカメラのよるマルチカム撮影は、確かに黒澤映画を彷彿とさせます。でも、ギラついた全盛期の黒澤とは違い、緊張感みなぎるものではありますが、静かに落ち着いています。偉人を描いても、その超人性ではなく、気高い精神にこそにじり寄る感じですね。
そして、この映画には米国に対する恨みがましさも、規律正しい旧日本軍人への過剰な郷愁もありません。むしろ、裁判で公正な弁護をおこなった弁護士フェザーストンや、岡田中将の助命嘆願をしたとされる検察側、裁判官らの姿を人情味ある人物として描いています。つまり、古きよき日本人の姿とともに、アメリカの良い部分をも公正に描いています。そのあたりにも感動させられます。
男の中の男。おすすめ度
★★★★★
戦争を美化するつもりはありませんが、
こんな素晴らしい将校が日本軍にはいたのですね!
「勝ったら何でもアリ、負けたら何でもダメ」という
戦後の日本を取り巻く状況に屈することなく、
最後まで筋と信念を通したこの岡田中将は、
まさに男の中の男ですね!
これはぜひ多くの人に見てもらいたい映画です!
これが、日本映画の実力
おすすめ度 ★★★★★
太平洋戦争の末期、日本全国が空襲を受けました。
名古屋も大空襲を受けたのですが、
日本も対空砲火で何機かのB29を撃墜、
当時の米国パイロットがパラシュートで助かりましたが、
当時の日本軍が彼らを処刑してしまったことが、「処罰」なのか「復讐」なのか「報復」なのか?
無差別攻撃が立証されるのか?
東海軍司令官の岡田中将のB級戦犯としての公判を中心に描かれています。
もちろん実話です。
3月8日〜9日にかけての東京大空襲を境に、終戦を急いだ米国はそれまでの軍事施設への爆撃から無差別爆撃に切替ます。
その後に始まった東京や各地の大空襲は
焼夷弾を中心とした日本の家屋を焼き尽くし戦意を喪失させる方向へ向かいます。
法廷では、軍事施設でもない孤児院や商店街が焼夷弾で焼かれたこと、
列車に対して航空機から機関掃射が行われた証言が次々に..。
当時、米国のルーズベルト大統領はドイツのポーランドへの無差別爆撃を非難し世界へ声明を出しましたが、
その何年か後には声明を発した国が無差別爆撃以上の都市を一瞬で破壊する残酷な指令も
出しています。
それは、双方にこれ以上の犠牲者を出さないためだとする一方的な大義名分の解釈で..。
作品の80%以上が法廷シーンです。
主演の藤田まことさんの最後まで部下を守り抜き司令官として一人責任を負う迫真の演技は見事でした。
検事として出演していたフレッドマックィーンはお父さんのスティーブマックィーンを思い出させました。