中島らも烈伝の作者の背景おすすめ度
★★★★★
高校時代にJAZZ喫茶に一つの文化があった時代を懐かしむ人にはお勧めします。今のゆとり教育がゆとりを無くしているパラドックスがこの本の中にあります。
傷ついていく青年群像の世界を描きだしながら、作者は人間の自由とか
自分に正直に生きていく挫折感をうまく描きだしています。
作者は、高校をロックアウトしたときの教務主任が亡くなる1週間前の激励の葉書を胸に、あらゆる亡き友人に哀悼をこめて世に送り出した力作です。
無為のフィロソフィーおすすめ度
★★★★★
とりとめなく時間がレイドバックしました。
そこには、時代の季節が砕かれ散りばめられた朗読のようです。
ロックアウト・ランボー・オルグ・天井桟敷・ウェザーリポート・
フェリーニ・
らもさんの古い友人達からのレクイエム。
表紙もそうですが、若いころの二人のスナップ写真もとてもいい感じです。
すべての方達から愛されていたんですね。
「中島らも」という題の、詩であり哲学書である「烈伝」おすすめ度
★★★★★
この本は「中島らもの伝記」なのかと思っていたら、違った。
「バンド・オブ・ザ・ナイト」に、たしか、この本の著者である鈴木創士こと「エス」が、「真実とはひとつの『空白』のようなものであり、哲学は、その空白の周囲を言葉で埋めてゆくことにより真実を現出させようとするものだ。それに対して詩は、真実それ自体を矢のように射抜く」というようなことを語る場面が出てきたと思う。
その考えでいけば、この本は、中島らもというひとつの「真実」に、「哲学」と「詩」の両面からのアプローチを試みたものであるという言い方も、すこし強引だが出来ると思う。これは「中島らも」という題の風変わりな論文であると同時に、また「中島らも」という題の風変わりな散文詩であるというふうに。
169ページとずいぶん短いこの本は「中島らもはどこどこで生まれ、これこれの青年期を過ごし、いついつになになにをものし」といったような、「事実」については殆ど沈黙を保っている。また「らもはこんな思想を持つこんな性格のこんな男でした」という説明も殆どしない。ただ「らもの周囲にあるもの」、たとえば喫茶「バンビ」、たとえば「ヘル・ハウス」の居候、たとえばらもの読んだ本、たとえばらもと行った街、らもの育った時代、そういったものを片っ端から言葉に変えてゆくことによって、また同時に、「らも」それ自体を直接射抜く「詩」を放つことにより、この本はらもを表現しようとしている。そういうふうに「書かれた」中島らもを知りたいと思う人には、間違いなく読むだけの価値はある。中島らもの熱心なファンだという人以外には、そういう本だから、あまりお薦めできないけれど。
星五つの評価は、この本の内容がどうこういうというより、「中島らもについて身近な人間が書いた本」という存在の希少性に対してのものかな。