ステップ (双葉文庫)
主人公のこの男、各章の最後で、必ず死ぬ。
死ぬのは、主人公のみならず、アウトローの人間達や刑事なども含む。
ところが、主人公は、死ぬ時に何故か、一日だけタイムスリップし、過去に戻る。
これが、幾度となく、繰り広げられ、タイムスリップした後には、いったん死んだ人間も、蘇っている。
物語を貫く、一本の筋がある。
それを、主人公は、何度も死んで、同じ一日を、繰り返し体験する事で、真実に迫る。
タイムスリップする事は、非現実的ではあるが、同じ日を繰り返す事によって、浮き彫りになる事柄も多い。
作品では、バイオレンスと拳銃が多用され、物々しい。
感傷に浸る間もなく人が死ぬが、ハードボイルドとはいえ、時にしんみりとさせられる。
同一の日を繰り返し体験して、段々と見えてくる。
作品は、こういう部分が中核になっており、大変面白い。
何度も死ぬ主人公に、愛着を感じる。
本作品は、傑作だ。
炎の影 (ハルキ文庫)
ここのところ印象に残る長編が少なくなってきている香納諒一だが、かつて『梟の拳』『幻の女』で見せてくれた作品レベルの高さを、いや、何よりも作家としてのスタンスの確かさを、今も期待しない手はないわけで、ここのところ短編の名手というだけでは物足りないという思いを抱いていた香納ファンには、久々に登場するこの力作は、相当に納得ゆく手応えを感じさせてくれるものと思う。
キャラクター造形がこの人の真骨頂。本作では、まるで『さらば愛しき女よ』の大鹿マロイのような心優しき大男が主人公。ふとしたことから人生の道を踏み外し、背中に墨を入れ(勿論知る人ぞ知るヨコハマの彫安の手になるもの)、ヤクザとしての自分に忸怩たる思いを噛み締めている。
死んだ親父の足音を追っているうちに深みに嵌まってゆく主人公は、謎を追い、父の人生の航跡を追い、自分自身の明日を追っているようにも見える。主人公に絡む兄妹が
出色である。そして香納作品には欠かせない「忘れがたき悪役」としては、元プロ空手家が登場。これがまた素晴らしく存在感を醸している。いつも香納ワールドに響きを持たせる彼ら個性的な悪役の存在。組織に属しながらいつも個人であり続ける不敵なやつら。なんという人物造形の確かさだろう。
数えてみれば三ヶ所。ぼくがつい涙腺を緩めた場所の数である。ラストシーン、それこそずきずきと胸が痛くなるほどに心臓が鳴り響いた。錦繍の榛名山腹。どこまでも続く山並み。あくまで美しく、痛いところを突いてくる作品。メロドラマではなく、だれもが持っている父親へのこだわり……葛藤、不在感、そして反骨と後悔。あくまでミステリーであり娯楽性を追求していながら、こんなにも見事に深々と読者の側の傷の痛みを突いてくる。これが香納諒一なのである。和製ハードボイルドの旗手という称号を今回だけは文句なしに与えたくなった。それだけ感動的な一冊ということである。
心に雹の降りしきる
そろそろ警察小説も出尽くしたかなあと、最近どれを読んでも、私の心が満足することはなかった
しかし、今作は新しい!
主人公の生き方が危なっかしくて、読んでいるものをハラハラさせる。
格闘シーンも
ちょっと大丈夫? 死んだら嫌だよ〜 頑張れ!
と応援したくなるような臨場感…というより焦燥感かな?
妙に人間臭いハードボイルドでした
まあ、読んでください。
絶対読んで良かったと思える一作
今までの香納諒一とは違うよ
ステップ
孤児院で共に育った悟を救うため、ヤクザや中国人マフィアとの争いに巻き込まれることになった斉木が、死ぬたびに再び同じ1日をやり直すというストーリー。同じ1日をやり直すことになるのだが、毎回異なるシチュエーションで始まり、やり直すたびに新しい事実が明らかとなるため、飽きることなく最後まで楽しく読んだ。登場人物たちも、昔の相棒の杏、刑事の比村、医者の片瀬、悟の恋人の敬子など、各人の個性がしっかりと描かれていて読みやすかった。
贄の夜会〈上〉 (文春文庫)
間違いなく香納さんの最高傑作です。
主要登場人物である刑事とスナイパー、それぞれの物語が奥深く、とてもよく描かれていて最後まで一気に読めてしまいます。
ここ数年間に読んだ本の中でも最高のクライムノベルですね、読んで損はないです。