NHK大河ドラマ 翔ぶが如く 完全版【第壱集】 [DVD]
幕末から維新の歴史を知りたいという一般の人にとっては、本やドキュメンタリーを含めて、今手に入るもっとも最適なテキストではないかと思う。これが総集編になると、薩摩藩士たちの様々な苦悩や情熱が伝わってこないので、やはりこの全巻セットを鑑賞することをお勧めする。
後世の人には推し量りがたい西郷隆盛の人徳と魅力はもちろん、その弱き部分も正直に描かれている。また、過小評価されてしまう事の多い、大久保利通の魅力と特質も十分に描写されている。大久保利通の光と影を知りたければ、本DVDがもっともふさわしい。
第一巻は、西郷吉之助の島流しにおける愛加那とのメロドラマ的描写と、イギリス艦隊へのスイカ売りの場面を除けば、冗長な部分がほとんどない、硬派なドラマとなっている。これが第二巻になると、維新の志士たちの家庭描写にも重きを置いた構成になっていく。
幕府を倒し、新生日本を創りあげるための、薩摩藩士の凄まじい情熱が、演じる俳優達に見事に乗り移っている。現代の日本の状況を鑑みるに、かっては異国と対等に渡り合える、「智仁勇」に優れたサムライが存在したのだと、思うたびに涙を禁じえない。
12回目での「日本を立て直すためには、まず既存の権力にとりいるしかない」と、刀を畳に突き立てて決意する壮絶な大久保の描写がいい。17回目では寺田屋での同士討ちにおける、大山綱良の返り血を浴び刀を捨てた上での決死の説得が印象に残る。18回目では、したたかな公家を取り込む大久保の策士ぶりと忍耐力が印象的。26回目では倒幕に至るまでの大久保、岩倉の様々な策謀、陰謀が興味深い。27回目でようやく王政復古の大号令が発せられ名目上、徳川幕府が御役御免となる。
放送時の第一部の最後が、この第一巻に収められていないのを不思議に思うかもしれないが、王政復古以降は、大久保による新国家建設の過程に入るので、実はちょうど良い区分となっている。
渋沢栄一「論語」の読み方
今まで論語の解説書をいくらか読みましたが、この本はその中でも最高です。仕事柄、ビジネスに関する本を読むことが多いのですが、参考になることが本当に多くて、手放せません。渋沢翁の解釈もとてもよかったです。
翔ぶが如く〈5〉 (文春文庫)
得てして巨悪の塊、冷酷な人物としての印象が強いように見受けられる大久保利通の、政治家としての能力の卓越、外交官としての胆力が見られる。中国との外交交渉において、国家元首かのように、超法規的活躍をみせるが、その交渉を成功裡に治めてしまった結果、国内の反政府分子の不満を増長させてしまった政治の難しさ。
外交官として、政治家として、国際政治にあたる者に不可欠な胆力を、大久保利通は保持していた。
西郷隆盛の親友、または敵としてでなく、有能な政治家としてもっと肯定的な評価を得てしかるべき人物である。
NHK大河ドラマ総集編 翔ぶが如く [DVD]
素晴らしい作品です。司馬遼太郎先生の原作で「翔ぶが如く」の他、「竜馬がゆく」「最後の将軍」をおりまぜて描かれます。方言も多用され薩摩隼人の気概も感じることができます。この作品は西郷隆盛を主人公とするだけでなく大久保利通との友情物語として描かれており、特に征韓論での二人の対決は、今の国会が二分して外交問題を話し合うことを想定すれば、セリフの一言一言に凄味があります。また、西南戦争に至る過程が痛々しく涙なくして見られない。西田敏行の演技もさることながら鹿賀丈史の演技が素晴らしい。原作では途中までしか描かれてなかった芦名千絵という人物でしたが、本作で感動のラストへと至る重要人物として描かれ見事です。西郷隆盛は政治家であり軍人であるが、敬天愛人に辿り着いた哲学者・思想家という言葉がふさわしいでしょう。士族とともに逝った西郷は真の意味で明治維新を成し遂げたといえるでしょう。まったく大きな謎の多い人物ですが、それだけにとんでもない魅力を感じてしまいます。鹿児島に行ったときは、南洲神社に並ぶ西郷を囲むように祀られているラストサムライ薩摩隼人たちに手を合せました。こうして日本が近代国家の道を歩んできたのかと思い、作品をご覧ください。ただ総集編であるため、西郷と大久保の友情エピソードや家族の物語が細かくカットされていることは残念。もう1時間長く編集すればもっと良かったと思うのは欲張りすぎか。