キン・コン・ガン!―ガンの告知を受けてぼくは初期化された (文春文庫PLUS)
氏の本は、金魂巻以来のファンでほとんど読んでいる。でも、この遺作となった本だけは読んでいなかった。なんとなく敬遠していた、というかな?氏の切り口はどこまでも、シニカルなので、闘病記なんて似合わない、と思いこんでいたせい。ところが、この作品に至っても、まったく文体も心意気も変わらず。逆にうるうるしてしまった。そして、渡辺氏らしいな、と思ったのが、ガンの告知によって、人生が「初期化」された、という表現。その時は、言いえて妙だと思ったが、具体的には、その原因がはっきりしなかった。ところが、偶然にも、つい最近学生時代のサークルの友人の訃報をまじかにして、はっきりとそのメッセージが感じられた。
生き方って、ガンの告知などの外からのワンクリックによって、もののみごとに簡単にリセットされるものだということ。そこから先は「死ぬことを前提に生きる」ということがデフォルトになるんだろう。そこまでは「緩慢にしかし確実に人は死ぬという事実は忘れて生きている」から。しかし、その初期化を行わずに、死ぬことだって多い。突然の病、事故、加齢など。その場合は、その分、周りの誰かの人生が初期化されているのかもしれないけど。人生の初期化、もちろん遠慮したいけど、その人生も生きる価値が多いにある。
キン・コン・ガン!―ガンの告知を受けてぼくは初期化された (NAVI BOOKS)
確かに闘病記ではあるが、比喩のし方がいかにもナベゾ画伯的視点で、
何度も何度も爆笑を誘う。
特に、テーブルの下に落ちたものを婦長さん自ら取るところの描写なんか、
経済論にまで発展していって、どこまでも脱線しつづけるのだった。
クルマやバイク、飛行機などオトコの子の趣味を持つ人なら、別にガンに興味がなくとも楽しめるはず。
ちょいモテvs.ちょいキモ
下流な人の幸せを決して認めないコテコテの右寄りな筆者の切り口が鼻につくものの情報は非常にリアル。覆面筆者だからここまで書けた業界暴露話は背筋を凍らされつつ随時爆笑させられる。読んで損はない。いや、読まないと損だ。
金魂巻―現代人気職業三十一の金持ビンボー人の表層と力と構造
困ったことにこの本に書いてある通りに20年間世の中が進んでしまった。
都会やセレブ世界に追いつき追い越せでしがみつくことの悲哀、苦悩、滑稽が描写されております。
金持ちには何やってもかなわんということです。
「いやいやそうじゃないよ」、「ハートだよ」というあなた。
読んでみて。
今の世の中これより酷いです。
○ビがダサい服着るくらいかわいいもの。
病院にすらかかれない。
コータリさん、2011年版再度お願い。
寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~
ふと平積みされている本書をパラパラと何気なく手にとったら、予想をはるかに超える名言と感じるフレーズが何箇所からも飛び込んできて、買った。
渡辺監督というと私は現役時代に芸能人とフライデーされていたりとちょっとチャラチャラしているけど実力派の投手だったという印象しかなかった。ここ数年は野球も見ていない。そんな印象(偏見)を吹き飛ばす内容が立ち読みからも感じた。
本書は、監督としての、選手、コーチとの接し方について書かれた本であるが、とても深い。
選手への指導方法は、「会話」がすべてというくらい大切。頭ごなしは絶対してはいけない。と説く。渡辺監督は、現役時代に元祖「新人類」と呼ばれ今の若手選手の立場がよくわかるのかもしれない。しかし埼玉西武ライオンズをここまでに復活させた手腕は、本来の素直な性格、現役後半の苦労、思いがけない台湾での3年間のコーチ経験。その後の西武2軍での監督経験。これらにより構築されていることが本書を読むとよくわかる。
しかし、なんて優しく、頼もしい指揮官であろう。そして本書で力説されている人との接し方、つながり方は、スポーツの世界だけでなく、会社での人間関係、親子間の人間関係など、人との関わり全般に活用できる金言となっている。
もちろん、埼玉西武ライオンズの過去、現在の歴史、選手の素顔などが興味深く紹介されているので、野球ファン、埼玉西武ライオンズファンにも期待を裏切らない内容になっている。
読んでよかった。