アンコール!~ヴァイオリン愛奏曲集
最近イヴリー・ギトリスの小品集を聴いて触発され、改めて五嶋みどりの『アンコール!』を耳にした。何よりも選曲がよい。ギトリスのディスクは演奏自体凄いものだが、レコード会社の注文に応じてポピュラー作品を弾いてみましたという感じだ。五嶋のは違う。選曲に相当な思い入れや周到さを感じさせる。この手の小品集にありがちな狎れがないのだ。そのため何度聴いても飽きが来ない。勿論、お決まりの有名曲も入っているが、ショスタコーヴィチの前奏曲やバツェヴィッチの『オベレック』というものなど、このディスクで初めて聴いた。
何よりも高級な響きと音色による格調の高さと秒殺的と言いたいピアニッシモ! ハッキリいって最早聴き飽きたエルガーの『愛の挨拶』やクライスラーの小品でも、ゾクッとするような瞬間がいくつもある。それには収録されている作品の順番も大きい。愛の挨拶→ウィーン風小行進曲と来て、ショスタコーヴィチの前奏曲冒頭のピアニッシモが始まると驚かされる。
全曲の白眉がこの『4つの前奏曲』だろう。確かなテクニックと融通無碍な表現力! しかもどんなに激しい表白をしても格調を損なうことはない。五嶋自身はどの曲にも顔を出さない。音楽だけが現われ、奏者は背景へと隠れるのだ。これこそ音楽。五嶋は紛うかたなき天才である。
アンコール小品集もいろいろと聴いたが、本ディスクは別格の1枚といえよう。
メータの指揮で入れたシベリウスのコンチェルトはいまだに同曲のベスト盤だと思うが、五嶋は結構レコーディングに慎重なのか、ベートヴェンやブラームスのものはまだ出ていないようだ。ひょっとすると自ら適性を疑っているのだろうか? そろそろドイツ物も期待したいところだ。ブラームスのヴァイオリン・コンチェルトでは久しく「本物」を聴いていないように思われるのだが。
名曲喫茶のクラシック~懐かしのクラシック小品集
このアルバムの企画としては、昔「名曲喫茶」で流されていた小品のクラシック音楽を家庭でどうぞ、という趣旨のようである。企画はどうあれ、よくあるオムニバスアルバムで、曲テーマもバラバラ、演奏家も玉石混淆である。曲によれば何もこのアルバムでなくとも、別の優れた演奏家から聴けば良さそうなものであるが、ここでの良いところは、何と言っても他のアルバムでは見つけにくい珍しい曲目を収録していることであろう。また、聴き覚えある曲ながら題名のわからない曲の題名を特定できたことも大きな収穫であった。
とりわけ私としては、「ハイケンスのセレナード」や「怒濤を超えて」「ドナウ河のさざ波」が興味深い。
特にハイケンスのセレナードは戦時中、「戦線へ送る夕べ」というラジオ番組のテーマ曲だった(らしい)のだが、印象的な名曲ながら原曲を聴く機会がなく、このアルバムを通じて初めて聴くことができた。また「怒濤を超えて」は‘NHKみんなのうた’の初期に合唱曲として採り上げられた曲で、私の幼少時によく聴いていたもの。
あと、このアルバムでは1曲ごとの曲解説がわかりやすく載せてあるのもうれしい限り。
時には、こうしたアルバムでクラシック小品を振り返るのも良いかもしれない。
「ロシア五人組」集 (世界音楽全集)
ロシアの作曲家でキュイの作品にとても興味があったのですが、
輸入物しか楽譜がなくて困っていたところ、なんと国産であって
すごい驚きました☆
キュイ全集とかあれば良いのですが。。
とりあえず満足しています!!
アンコール! ヴァイオリン愛奏曲集
五嶋みどりさん、21歳の時(1992年)の録音。
コンサートや協奏曲の最後に、
ソロ・ヴァイオリニストがアンコールに応えて弾く小規模作品。
コンサートの演目や奏者の個性に合わせて、アンコールで弾く曲は種々様々。
それらが28曲も。
弾いているのはプリンストン大学内のアレキサンダーホール。
たぶん彼女がこれまでの演奏活動の中で、
実際にアンコールで奏でてきたものを集めたのではないでしょうか。
やさしく甘く美しいのは、エルガー、チャイコフスキー。
サラサーテ「序奏とタランテア」は優美な美音がここちよい前半部から一転して、
後半は彼女の早弾きと疾走するパッションが味わえる。
同じく「ハバネラ」もスペイン民謡の旋律とリズムをベースにしていて、
華麗に踊るダンサーのスカートの動きが浮かんでくる。
通して聴くというよりも、ランダム演奏させるなどして、
アンコール感覚を持ちながら聴くと、
コンサートホールの聴衆のなかのひとりのような気分になって
アルバムの幅広い音楽性がより楽しめます。
ミ・キュイ
帯で野口美佳が「これはわたしのことではありません」とコメントしてるものの、主人公里中若菜が辿る人生は野口美佳にどうしても重なる。
しかし、野口美佳物語とも片づけてしまえないのは、予想外に普遍的な人間のテーマに触れるからだ。
金で何でも買う主人公若菜は、欲望の塊でそのエネルギーは途切れることがない。
そんな若菜の傍に居ることは、庇護のもと不満の持てない虚しさが蓄積される。
人間関係までも金で買う人間性を外側から批判するのは簡単で、
目の前にそんな人間が出てきてしまった時、
滑稽で惨めな行動に出てしまうのも人間なのだと思う。
そういう人に振り回されたり、消耗していく人が描かれている所に一見の価値がある。