DEMO TAPE‐1
リアルタイム世代ではないが、YouTubeで偶然耳にした、岡元清郎の「Marble Water」があまりにも気に入ってしまったので購入。
アルバムの総売り上げ数が男性ソロ歌手で歴代1位になった槇原敬之やイギリスやオーストラリアで1位を獲得したテイ・トウワより人気を集めていたってのもすごい。
同梱の歌詞カードで当時17歳で作曲していたとわかり、またびっくり。
どうしてそれほどの才能を持ちながら、その後、身を潜めてしまったのか、本当に不思議。その事実を知りながら聴くと、せつない。
やはりマーケットを築くには、完成度の高さより誰とも似ていない「個性」が一番大事ってことなのか?
槇原敬之のメッセージにも胸をうたれた。
昔から音楽の才能があったのはもちろん、信頼する人と作品をつくっていくのが大好きな人なんだなあと。
テイ・トウワのアレンジセンスにも後の飛躍の片鱗が。
などなど、上記以外の曲は素人臭がですぎていて聴くのがつらく、飛ばしているが「超巨大なダイヤモンドの見分け方」がわかる、岡元清郎の曲が何度も高音質で聴ける、という意味では貴重な一枚になった。買って良かった。
Edge
田中信正は日本におけるフリージャズの第一人者である佐藤允彦に師事した経歴を持ち、
その奇抜なプレイのみならず独特の演奏フォームからも極めて非凡かつ
「変態的」なイメージを抱かせるピアニストである。
私は2年前の大晦日に期せずして聴いた彼の「A列車で行こう」を決して忘れない。
ベテランドラマーの村上寛を振り落とさんばかりに白熱する彼のピアノソロは
「A列車」というよりも「暴走特急」と呼ぶのが相応しく、その音の洪水に呑み込まれた私は
終演後、その凄まじい音楽が感性の域値を超越して放心状態に陥った。
その切れ味鋭いインプロヴァイズは脳みそに「天才」の2文字を刻ませるには充分なものであった。
そして本作「Edge」である。
田中信正kartellというトリオ名義では2作目でありデビュー作から実に6年越しに発表された作品となる。
全て彼のオリジナル曲で構成されているがその水準はおしなべて高い。
その楽曲はどれも独特のポリリズムを含んでいるのが特徴的で
意外なほど(?!)均整のとれたメロディーで構成されているのが印象的である。
随所に入るフリージャズ的アプローチも彼ならでは。
しかしながら結局CD媒体ではライブにおける彼の「暴走」を目撃したときのような
カタルシスを得られないのが事実である。名実ともに日本のトップに君臨している
山下洋輔とのピアノ対決の際、名ドラマー森山威男をして「全く負けていない」とまで言わしめた
彼の高いポテンシャルの片鱗を覗かせるのは、本作においてはタイトル曲の「Edge」に限られる。
それ故に本作の魅力は前衛的かつ先鋭的なピアノトリオのサウンドスケープに尽きると断言して良い。
ここでの彼は明らかに総体的なトリオ表現の方に注力しており、その完成度は前作よりも際立っている。
寧ろ彼が脇役として参加している森山威男の諸作品の方が奔放な顔を見せているのが面白い。
インフォーマント! [DVD]
実際にアメリカであった国際価格カルテル事件の内部告発を題材にした社会派コメディー映画。
マット・デイモン扮する主人公が企業を内部告発したものの、自分自身の不正もあらわになって、
嘘で塗り固めた人生が剥がれていくストーリー。
予告編を見るとコメディータッチ、はたまたスリルとサスペンスに満ちたテンポの速い映画を想像しますが、
極めて盛り上がりの無い淡々とした渋い映画となっています。
アメリカでは有名でも日本では馴染みの無い話であり、ブラックジョーク的な部分や社名も実名で登場するし、
映画館での公開が単館系なのも頷けます。
後半は徐々に展開していき面白くなってくるのですが、
序盤が何の説明もなしに淡々とストーリーが進んでいくので、
分からん人には最後まで内容を掴めずに終わるかもしれません。
しかし、役のために体重を増やしたり、長い台詞を連発したりと、マット・デイモンの役者魂を感じます。
マット・デイモンはアクション作とかメジャーな大作以外にも、
こういう映画にも出るのだなと感心しました。
良い映画ではありますが、マット・デイモンの大作感を期待してみる人には期待を裏切るかもしれません。