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或る女 (新潮文庫)

有島 武郎
おすすめ度:★★★★★
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内なる世界の恐怖
おすすめ度 ★★★★★

自由奔放に生きてきた女が最後に陥る虚無の孤独地獄。
この話のラスト三分の一は全て主人公の葉子の主観から見た人物と世界で描かれていて
おそらく葉子から観た世界と他の登場人物から観た世界は全然別の世界だったことでしょう。
全ての善意が悪意に見えてしまう恐怖。
自分の思い込みの世界に嵌りきり自分の内なる世界に嵌り込んで自滅していく女を
突っ放して描いているのがこの小説の醍醐味です。
新潮版のこの本は注訳がかなり詳しく、登場する人物&建物のモデルがわかります。
20世紀初頭の早すぎた女の悲劇を是非どうぞ。



タクト風?な女
おすすめ度 ★★★☆☆

葉子はどんな女だったか?それを一言でいうとタクトのある女。と著者によって本文中に説明されています。女学生の制服をひとつ着るのでも、他の女学生とは一風変わった着こなしをする。男の気を引くような素振り、科を作って見せる。媚を売ると言ってもいいが、そこまで100%自尊心を捨ててもいない。自負があるようで、ないような女。自立しているようでしていない女。男にすがって生きている癖に、自分勝手に生きている。自分に夢中になる男をバカにしてせせら笑っている。結婚してもすぐ飽きて、次の人生にさっさと乗り換える。外国に行ってみたり、戻って来てみたり。

船員の倉地だけが葉子の思うままにならなかった。だからこそ葉子は彼に執着した。自分より強い、自分より自我の強い、そして人格の大きい男を愛する女。縋りつき抱きついても、振り捨てられ、殴られることを好む女。理智より情熱を愛する女。それが「或る女」葉子の真実です。



運命に翻弄される女の生涯
おすすめ度 ★★★★★

外的な要因によって運命が翻弄される、思い通りに行かない、というのではなく、むしろ自らの内面にある種子が皮膚を突き破り主人公を肥やしとして新たな生命を持ってしまうような、暗いそれでいて激しい行き方の一つのモデルが描かれています。繰り返される欺瞞のせりふや、駆け引きを愉しんで快活な人生を送ってきた美貌の主人公が最終的に内なる意識に蹂躙されるさまは読むものを恐怖させます。


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