この映画は管理社会に対する不満と管理社会による安堵感をうまく描いた傑作ともいえるでしょう。管理される事によってまた管理社会の中にいることによって安全という保障が得られると同時に自由に対する束縛やプライバシーの侵害という問題が生まれてきます。この映画はそれらによる疑問を投げかけるだけでなくそれによって愛までも制限されてしまう。という新鮮な問題を扱った最初のSF映画ではないでしょうか、主人公の男とルームメイトの女の禁じられた愛のゆくえもこの映画の一つの見所です。最近上映されている「コード46」という映画の設定もおそらくこの映画が基礎になっているのでは?
スタイリッシュなSF映画おすすめ度
★★★★☆
近年でも『リベリオン』『ガタカ』『マトリックス』シリーズ等に影響を与え続ける作品。
美術デザインやカーチェイスシーンに当時からの卓越したビジュアルセンスが窺える。
元々ダラダラとしたストーリーの作品だが、ずいぶんCGやらで手直しされていて、まあなんとか現在でも見れる作品となっている。
自主制作版が映像特典として入っているのは嬉しいが、それならぜひ劇場公開版も入れて欲しかった。
消化しきる事のできないSFおすすめ度
★★★★☆
統制された社会とそれに反し脱出を試みるヒーロー、このプロットは映画、その中でも近年の作品で云うと「マトリクス」や「リベリオン」にも通じるものがあります。
薬及び神の様な統一者への忠誠を基盤にして人々をコントロールすると云う部分では後者に近いでしょう。
併し決定的に違うのが、その世界を明確に現すのでは無く、1シーンをフラグメントの様に積み重ね、概観を曖昧に見せているところです。
冒頭からパッチワークの様に繋げられていく一つ一つの画は、いやがおうにもその繋がりを追う為に頭を使う事の行使を促され、
それと同時に「REM」の様な、見ている側が記憶をとばされる様な奇妙な感覚に唯身を任せると云う逆の効果も与えられました。
そしてある程度世界設定を把握した中盤以降最後まで、何が世界を支配してるのか、脱出する先に何があるのかも分からず、
リンチの作品を観終えた後の様な心地良い不愉快さを覚えます。
特典のDVDでルーカス等製作者の言葉を聞く事ができますが、わたしはこの映画に込められたアイロニカルな部分等のメッセージは汲み取る事は
できず、それを踏まえた上でもう一度見返すと理解でき、多少不条理感は拭えるのかなと思いました。
わたしはこの様な何度も観なければ気の済まない様な作品は大好きです。
概要
ジョージ・ルーカス監督が、学生時代に製作した「電子的迷宮」をフランシス・フォード・コッポラ監督のもとで長編リメイクしたSF映画。「スター・ウォーズ」で知られるルーカスだが、本作は対照的にコンピューターが支配する冷たく閉鎖された未来社会が舞台となっている。
25世紀。地下に広がるシェルターで人類は名前さえ持たない、番号で管理され、精神安定剤の服用を義務づけられていた。そんな中、THX-1138は女性ルームメイトのLUH-3417と安定剤の服用をやめ、禁じられている肉体関係を持ってしまう。
モノトーンで描かれたシェルター内部。その非人間的な社会の恐怖は映像だけでなく、音響にも反映されており、終始低音部で薄く流れているノイズが、冷たく先鋭的な緊張感をさらに強調している。自由への渇望というテーマは「スター・ウォーズ」の、とりわけ「新たなる希望」と共通しているが、同じ監督でも題材の違いがこれほど異なる印象を与えるものだろうか。(斉藤守彦)