修羅の宴
イトマン事件をベースに書かれた小説ということ。いづみ銀行(住友銀行がモデルらしい)から社長として派遣された高卒の主人公が、浪速物産(イトマンがモデルの会社)の社長としての地位を死守する為に、強硬な行動、果ては、粉飾に手を染め、最後は、ペテン師の手にかかって、バブルの崩壊と共に巨額な損失を出し、犯罪者として告発され、転落するまでが、丁寧にか書かれて読み応えあり。銀行の学歴社会の壁にも驚かされた。
宿命 1969-2010 -ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京- [DVD]
放映が始まってしばらくは、ああまたテレ朝臭ぷんぷんのベタな展開・説明的演出で、
しかもかなり昼メロチックな古典ドラマだなあ・・なんて少々馬鹿にしながら
見ていたのですが、回を重ねるごとにだんだんと引き付けられ、気づけば最終回まで欠かさず
見ていました。政略結婚とか忌まわしい血縁とか、はたまた昭和の学生運動とか、
およそトレンディでない、アナクロともいえる題材、脚本なのに倦むことなく楽しめました。
”けれんと虚構の香りぷんぷんの演劇チックなある種重苦しくうざったいノリも開き直って徹底すると、
昨今もてはやされる”軽妙なリアリティ”にもじゅうぶん対抗できるのだということを強く感じた怪作でした。
トーク番組で「役になりきるためには平気で歯だって抜いちゃう」とも語っていた、主演の北村一輝は、
狂気を湛えた表情で実にいい演技してました!
クーデター (角川文庫)
麻生幾著「宣戦布告」より自衛隊の状況など細かい描写は劣ると感じたが、
一部新興宗教が登場するなど、98年当時のキャッチーな話題を
ふんだんに盛り込んだ意欲作だと感じました。
未だに本書の状況と変わらない現実に、98年の発行から今に至るまで、
この国は何を目標としてきたのか、考えさせられます。
そして、テレビのアナウンサーがしめくくる、
「安全保障とはどうあるべきか、われわれ自身が自覚し、考えていかなくてはなりません。」
とこれからも言いながら、過ごしていくのでしょうね。
是非、ご一読を。
プラチナタウン (祥伝社文庫)
商社から下請け会社への転出内示のくだりは正に商社マンの綱渡り的な日々を描き、
あっという間に財政再建自治体転落崖っ淵の町長になる。
ここからがページを繰るスピードが加速度的になっていく。
予定調和のラストに向けて現実問題を積み重ねて読者に納得させながらも「ホントに
上手くいくのか」と気持ちハラハラさせるところは作者の筆力あればこそ。
地元に暮らす一般町民や都落ちの奥方の描き込みがもう少しあると更に深みのある話
になったのだろうけれど「プラチナタウン」ローンチまでの町長奮戦記としてはこれ
で必要十分。
このまま何処かの自治体がプラチナタウン計画を立ち上げても良いのではないか。
文庫本の解説で堀田力さんの書いている事を「う〜む」と感じながら読んだ。