老いる覚悟 (ベスト新書)
定年退職後をいかに生きるかの指南書です。「老いの才覚」のいわば男性版であり、サラリーマン経験のある森村誠一氏を選んだのは、なかなかのものです。
肩書きを外されてからも、人は残された時間を無駄に使ってはいけない。「 何もしなくてもいい自由 」より「 何をしてもいい自由 」を選んで、積極的に外へ出なさい。新しい人との出会いを求めること。外への興味も関心も失ったら最後、孤立してしまう。
60代以降の男性を対象にしたのか。ある程度、身につけておられる方が多いのではと思いました。今どき、自分で料理を何一つ作れない人は少数派でしょう。
残された余生、孤独に向き合う覚悟をするのは大切です。自立と孤独に耐える。これは帰属社会や家族の有無にかかわらず、人生の早い段階から各自が備えておかなければなりません。
ただ、「 何もしなくてもいい自由 」とは、無為無策だとする解釈は早急すぎる気がしました。一人暮らしの年配者が、自宅でゆったり、まったりと趣味に興じるのであれば、時間を無駄にしているとは言えません。
氏も散歩をしながら、俳句をつくるのを趣味にしているそうです。このような創作活動、ひいては文化・芸術の分野の趣味なら、「 何もしなくてもいい自由 」に自然とふれあいながら、無我の境地の中から生み出されるのではないでしょうか。たとえ他人から見たら、何もしていないように映ろうとも無駄ではありません。
余生までも、時間と絡めて “ 効率 ” と “ 生産性 ” を、最優先にして、追わなければならないのなら、いささか窮屈な生き方です。
組織を離れ一個人として生きるなら、時間の使い方も、組織に流れる時間の掟とは違ってくるはずです。この点に関しては疑問が残りました。
人間の証明 [DVD]
邦画・洋画を問わず、映画化されると原作より質が落ちることがほとんどだが、
この作品だけは原作を上回っているように思える。
特に、八杉恭子、棟居刑事の苦悩と悲しみが画面からにじみ出て、観るものの心に訴えてくる。
角川映画も初期の頃は、よい作品を作ろうと張り切っていたのが見て取れますね。
腐蝕の構造 VOL.1 [DVD]
他には見れない松田優作の正義感が見れますけど・・権力の汚さの中で潰されて行く善良な人々達しかし松田優作の全力を尽くした正義感が最高です・・主題歌の心のひだは最高です!
新・新幹線殺人事件 (光文社文庫)
森村氏の初期代表作の新版とも言うべき作品であり、定番のアリバイ崩しトリックと複数の事件が絡み合う王道の展開はさすがといったところ。新と銘打っているが、オリジナルの新幹線殺人事件とは事件自体は関連性はないが、さりげなくオリジナル版と関連する小ネタが織り込まれているのが嬉しい。単身赴任による家族の崩壊がモチーフとなっているが、この85年辺りの時代性として単身赴任というテーマがかなり主流だったのでしょうね。