NHK映像ファイル 「あの人に会いたい」DVD-BOX
様々な逆境にも負けず、ただひたすら自分の信念、夢に向かって純粋に突き進んできた偉人達の生の映像、声に触れられる素晴らしいDVDです。
皆さん活躍の分野は違っていても、誰もが根底に”本当にこれが好きだ”という強い信念を持ち、時には揺らぎながらも自分を励ましながら困難に打ち勝って行く人間像が素晴らしく描かれています。
戦後の高度成長、バブルが終わり、現在の日本は未来が見えないまさに迷走状態です。
それでもひとつの”国”としてこれからも国際社会で生き残って行く為には、資源のない私達は”人”で勝負するしかありません。
司馬遼太郎さんのコメントでも出てきますが、”素直で賢い自己を持った若者”に頑張ってもらうほかないのです。
このDVDを観て一人でも多くの若者が触発され、未来大いに世界で活躍してもらいたいものです。
山の音 [DVD]
川端康成原作。古都鎌倉に住む倦怠期の夫婦と同居する老夫婦の人間模様。鎌倉の閑静な住宅街、まだ建物がほとんどない東海道線沿線、丸の内のレンガ街、まだ広い空が東京にあった頃の新宿御苑(らしい)といった風景が美しい。これが写されただけでも価値があるのではないか。
気丈に生きる古い女を演じる原節子と、それを不憫に思いながら見守る山村聡の不思議な交歓が作品の肝。哀願するような目を持って、二人のただならぬ関係を表現する(何があるわけでもないが)。市川昆監督の「細雪」みたない質感といえばいいのか。暴力性を持て余す夫・修一の冷酷さがそれを際立たせる。心の通い合わないねじれた親子像が、家出してきた妹も含めて描かれている。そのなかで、姑の長岡輝子のコミカルな台詞回しが面白く、ほどよいテンポとアクセントを与えている。こういう脇役がいるかいないかで、映画の印象が断然違ってくる。
伊豆の踊子 (新潮文庫)
川端文学の旗手とも言うべき(?)代表作。短編なので教科書にも採用されている模様。
大学生の主人公が伊豆に旅行した際に出会った芸妓の少女(おそらくは中学生くらい)に対して抱いた淡い恋心を紡ぎ出している。
旅先での行きずり・・しかもまだ相手は少女で年下とくれば、当時の恋愛感覚を考えても「適齢期のラブ・ストーリー」としては成り立たない。
少女が温泉に入浴中に全裸を晒しても恥ずかしがることもなく、主人公に向かって手を振るシーンが「少女の純潔」を表現し切っていて、いやらしさもなくかえって爽快ですらあるのだ。
この作品があるおかげで、東京から伊豆に向かうJRの特急の愛称が「踊り子」になったぐらいなのだ。
それ以前の伊豆行きの特急の愛称は「あまぎ」(伊豆にある天城山のことね)だったのだから、康成の作品としてどれ程多くの人間に浸透していたかが分かるというものだろう。
決して「結ばれることの無い別離」も、前述したことを考えれば当然の帰結。
お互いに「いいな・・・」と思いつつも別れてしまう・・って事、人生において結構あるのではないかな。
なずな
「なずな」を通して見えてきた、外に開けていく《世の中》を体験しながら育んでいく父親役の菱山の、なずなに対する愛情が、それこそ手ですくえないほどに伝わってきました
菱山自身の囲碁の布石も予想もできない模様を描いていたように、それまでのものの見方や価値観が一変されていきます。「なずな」を世界の中心とみなしているときの考え方や言動の端々に親としての穏やかなまなざしが感じられました
私には子どもはいないけれど、子連れ草食動物の、そのときどきの心境にとてもよく共感できているような気がしてしまうのが不思議でした
赤ん坊には人を引き寄せる力があるのだという。そしてなずなの記録を丁寧に綴った、この小説にも読者の眼を惹く魅力があります。
子どもができるようなことがあれば、ぜひとも再読してみたいと思いました。菱山がなずなと過ごした日々の中で得ていたものが、自分にとってとてもうらやましく見えていたからかもしれません。
掌の小説 (新潮文庫)
短くて2ページほど、長くても5、6ページの小編が122編収められています。表現は詩的で、あくまで繊細。人間の心の細部、暗部を鋭く切り取る視点は、さすがノーベル賞作家と、読んでいて唸らせられます。ぜひ読んでおきたい一冊です。