メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故
現時点で(そしておそらくこれからも)もっとも包括的かつ理解しやすい東電福島原発事故に関するドキュメンタリーだろう。
これが国外の事態であれば興味深く読むだけだが、国内の今も進行中の事故であるというのは本当に不幸なことであり、目頭が熱くなります。一方、このようなすばらしい書籍を上梓した著者と出版に関わった方々には頭が下がります。
以下のような致命的な状況が関係者のヒアリングを基にした記述で、多くの実名入りでつづられます。
・直前まで津波や電源喪失(だけではないが)への対応をおろそかにしようとしてきた東電・安全保安院(被害が彼らだけに及ぶのならまさに「天罰」といいたくなるほどのおろかさ)
・緊急時をほとんど全く想定していない東電のリスク管理の低さ(企業トップが同時にそろって重要性の低くプライベートな「出張」に行くなど最たる例)
・東電幹部が状況をほとんど全く理解していない一方、吉田所長が壊滅的に困難な状況でいかに知恵を絞って尽力したか
・現場と乖離している東電の企業体質
・事故で大きな被害を出しても自分は被害者かつ殿様という意識が抜けない東電トップ
『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』のような技術的な記述はほぼ全くありません。一方で、誰が何を言ったり実行したかと同じくらい(もしかしたらそれ以上に)重要な、なぜ、何を考えてそう言ったのか実行したのか、が良くわかります。