僕はサラ金の星です!―安部慎一最震作品集
根本敬さんが装丁を務め大絶賛している本です。その「僕はサラ金の星
です!」は不気味な作品に仕上がっており、登場人物の行動がほぼ理解
できません。所々会話がかみ合ってなかったり絵も他の安部作品と違っ
て女性の体型が変だったりでこんなにぶっ飛んだ漫画が読める事に幸せ
を感じました。
作者自身、これを描いた当時は宗教に染まっていて頭がおかしかったと
言います。
それ以外の作品の中にもそれに通じたものはありますが、切ない「除夜」
や「結婚物語」のようなホンワカとした心が温まる作品も多数あり、とて
も大好きな一冊です。
迫真の美を求めて―安部慎一混沌作品集
私の大好きな安部慎一のマンガ。
マンガと言ってもいいのかな?
もうマンガの域を越えて、文学とか芸術とか・・・・
一気に読みました。
もしかしたら読んでいる間は、息をしていなかったかも。
何と表現したらいいかわからないのです。
読まれたことのない方は、ぜひ読んでいただきたいです。
「迫真の美を求めて」っていうタイトルも素敵!
若い方(実は私も若いほうですが・・・)に
ぜひ読んでいただきたいです。
ずっとずっと大切にしたい本になりました。
天国―安部慎一作品集
数々の傑作と才能を発掘した雑誌「ガロ」。
この巻の作品は、主に「ガロ」に掲載されたものです。
確かに「ガロ」以外でこれらの作品を掲載するのはなかなか難しいのではないかと思います。
逆に「ガロ」だからこそ、この感性を受け止めることができたのであろうと想像しています。
作家と読者というのは作品が生み出される上で絶対的な条件です。
「ガロ」は、作家の新しい才能と感性を探り出し、受け止めるある意味厳選された読者を有していたと思うのです。
「ガロ」読者が見つけた宝物が、安部慎一さんなのでしょう。
読み手のことよりも、自分自身の内側にあるものを吐き出すような感覚の作品です。
絵のコマづかいが独特の感性があって、省略されたコマとコマを想像させられます。
何とも言えない感覚を覚える漫画です。
病み付きになりますよ。
美代子阿佐ケ谷気分
不思議な作品です。
1970年代初期の作品でありながら、40年近くたって映画化されました。
今でも阿佐ヶ谷はあまり変わっていないのでしょうか。
永島慎二さんが阿佐ヶ谷で日本の60年代の若者の群像を描きましたが、安部慎一さんは70年代のJR中央線沿線の若者の心象を表現されていると感じています。
70年代は、オイルショックで戦後の高度成長期に終止符が打たれた頃です。
そして公害問題が露となり、ロッキード事件が発生し、成長の負の面が国民の目に見えてきた頃になります。
新宿という若者が集う大繁華街から少し離れたねぐらにあたるのでしょうか。
吉田拓郎が『高円寺』という歌を作りましたが、その隣駅が阿佐ヶ谷ですね。
確かにこの街のある側面は描かれていると思います。
著者本人の体験とそこから派生したイリュージョンによって描かれた70年代の気分です。
日の興奮
ガロに連載していた「悲しみの世代」は、何かポルノを描こうとしているのかと思える作品が続きましたが、この作品集は、漫画「エロトピア」向けに描かれた創作集であるとのこと。しかし、「ポルノ劇画家山村真介」は、こういう雑誌に掲載するのが勿体無い位、ストーリーも良く出来ていてインテリジェンスを感じさせ、文学的です。何度読み返しても秀作です。「淫らな娘」もそうです。精神と肉体の二律背反を描いたもので海外文学を想起させます。神父と女子高生という取り合わせも新鮮です。「心」のリアルな生活感、漁師と船宿の主の夫婦の葛藤と愛情を生々しく描いたドラマは「あいびき」、「意趣返し」「獣愛」、「愛奴」はエロトピアらしく刺激的なストーリーにしたようですね。「日の興奮」は確かに絵が読み難いですが、史実とすれば歴史観も変りそうです。