僕の小規模な失敗
自分は著者と完全な同世代で、性格的にも似た傾向があるので、心に突き刺さるところ、同感するところなどの連続でした。作品としては、若かったころの著者の、失敗多き「自分」探しの旅の物語。テーマとしては、暗くなりがち。いつも困ったような主人公の眼差しや、少し屈んだ姿勢などに、まったく自信を持てなかった頃の著者の苦悩と、自分の現状と同世代の人間の生き様などを、どうしても比べてしまうことによって生まれる葛藤との戦いが素直に描かれる。
しかし、絵柄は結構コミカルだし、女の子を可愛く描くのが上手いので、読後にどんよりと暗〜い気持ちにさせられるというよりも、これだけ開け透けに心の奥底を描いてくれた事に対する「よく描いてくれた」という気持ちが生まれる。本当の「自分」を見つけきれない状態でも、どうにかして生きていかなければならない、現代の若い人へ、それでも「がんばろうや」と優しく声をかけてあげたくなるような作品である。
豊かな不自由の少ない時代に、尻をあまり叩かれずに育った人間は、自分の生き方を全て自ら開拓して行かねばならない。これは、なかなか大変なのである。