リアリズムの宿 [DVD]
異色の実写化つげ漫画。
竹中直人でさえ「無能の人」では抑えた演技で雰囲気を作っていたのに、この「リアリズムの宿」は、テンションの低さだけは継承しているものの、終始間の抜けた登場人物に笑ってしまった。
とはいうものの、原作も他の作品と比べて割とほのぼのとした旅行記なので、不自然な演出ではなく自然に見ることがでるでしょう。
山下監督の独特のテンポは、なんとなくATGの諸作品を思わせるビートの無さ、日本映画の特徴であるところのうまい「間」の使い方だなと思いました。
つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む (ちくま文庫)
噂の「ねじ式」を初めて、この文庫で読みました。
不思議な漫画。
頭がおかしくなったかと思うような不思議な世界に引き込まれます。
「ねじ式」だけでなく、その他の漫画も、現実と夢が継ぎ目なく
あわさっている感じで、一冊読むと、頭がぼうっとします。
なるほど。「ねじ式」。
これだけの漫画が文庫で読めたのは、非常にお得でした。
ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)
興味深い内容ではあるが、この本はタイトルの『ストーリーメーカー』より、
副題の『創作のための物語論』の方が正しく内容を言い表わしていて、
純粋に話の作り方を学びたくて購入すると肩透かしを食らいます。
この本の七割ははっきり言ってどうでもいい様な物語論に関する云々で、
肝心の話の作り方に関する説明もあまり分かり易いとは言えません。
文章は眠たく、誤字脱字も多く、そもそも知りたくもない話が延々と続いてイライラすること間違いなし。
それでも☆三つをつけるくらいの勉強にはなるかと思います。
ねじ式 [DVD]
言わずと知れた、つげ義晴の名作漫画の映画版である。漫画の絵の印象
が強くて、公開当時は主人公が浅野忠信というのはカッコ良過ぎてミス
キャストではないかと思っていた。しかし蓋を明けてみると、この妄想
癖のあるジメジメとした性格の売れない漫画家ツベの役は実にハマって
いた。彼は手塚真監督の「白痴」でもダウナー系の役を見事に演じてい
たが、こちらでもその才能を如何なく発揮している。機関車のシーン
でもわかるように、この映画は完全に低予算のB級映画である。バカ映
画にならずに済んだのは、主人公の無意識下にマグマのように流れてい
るプリミティブなエロスが、溶岩のように妄想として吹き出すのを描く
ことに成功したからであろう(一見本編と関係のなさそうな冒頭とラス
トの怪しい映像も、剥き出しのエロスを表現するためには絶対必要)。
石井輝男監督だからこそできたハナレワザ。強烈な印象を残す作品。
蒸発旅日記 [DVD]
つげ作品の映画化作品は今まで一本として好きな作品はありませんでした。つげファンはつげ漫画を映画になんかしないでそっとすておいて欲しいという気持ちがみんなあると思います。そんな中で山田勇男監督は極めて個人的につげ作品にご自身を投影したのがこの映画の成功の原因だと思います。決して上手い映画ではありません。しかし8ミリ映画作家でもある山田監督ならではの映像のコラージュが、うまく言えませんが…、常識的な映画のマニュアルではなしえない、全く新しいイメージを生み出していて、それがつげさんの世界と素敵にシンクロしているように思えました。俳優陣では田村高広さんが素敵。名優のインディーズ映画への特別出演的に浮いたりせず、つげワールドと山田ワールドに実にしっくり納まっていることに驚きます。あえて不満を言うならば主役の銀座吟ハさんがややミスキャストかなあ。特典映像に監督の山田さんが写っていますがとてもいい顔をしています。山田監督ご自身で津部を演じられたほうがよかったのではと思いました。山田監督はもっと評価されるべき監督だと思います。あと他の方も書いていますが特典映像には何と動くつげ義春さんが写っています!つげファンとしては最高の特典です。それだけでも星五つの価値ありです!