プレイズ・ビートルズI~フール
本作は94年にデジタル録音された、全曲クラシック・ギターの独奏によるビートルズ・カヴァーの金字塔と評すべき傑作。M8、9、13、17は11弦ギターでの演奏。セルシェルはこの後ギター独奏だけでないビートルズ・カヴァー第2集セルシェル・プレイズ・ビートルズII〜フロム・イェスタデイ・トゥ・ペニー・レインをリリースし、それら2作からギター独奏を集めてビートルズ名曲集が作られた。そのビートルズ名曲集には本作から11曲選ばれているので、オリジナル盤の2作でセルシェルのビートルズ・カヴァーをすべて集めるか、編集盤のビートルズ名曲集を求めるか検討することを薦める。編集盤には収録されず本作だけで聴けるのは、M2、3、11〜13、15の6曲。編集盤を持っていても、ビコーズ、イフ・アイ・フェルやアンド・アイ・ラヴ・ハーは本作でしか聴けないし、実際期待を裏切らない名演だから、結局本作も求めたくなるのではと思う。
G.マーティンがコメントしているが、控えめな編曲(セルシェルのものが6曲で、残りは武満徹、森永永和およびサンドクィストのもの)が曲の本来の美しさを引き出していて、ギター独奏に素晴らしくマッチしている。演奏はクラシック・ギターの音色の心地よさに満ち、聴き飽きることがない。本家ビートルズCDのリマスター盤の発売の前に、カヴァーでビートルズ名曲の真価を確認できる最上クラスの作品だ。
なお、上のジャケ写真は紙ケースに印刷されているもので、その中のプラスチック・ケース内のジャケ写真はカラーです。
ピアソラ:名曲集
演奏者によって曲の印象や感じ方も変わったりしますが、とても美しく上品なピアソラです。
チョン・ミュンフン指揮の「リベルタンゴ」も素敵ですが、
個人的には「タンゴの歴史」が良いなあ。
品があるのです。
セルシェルのギターも美しいです。
でも激しいタンゴがお好みの方は物足りないかも?
ルネサンス・リュート曲集
ルネッサンス音楽の素朴かつ深い味わいが好きですが、その見本みたいな演奏だと思います。
ルネッサンスリュートではKirehhofやDomboisの「ルネッサンスリュート集(どちらもSEON版)」を長年聴いており、どちらも当時の音色をそのまま伝えるような古典的演奏ですが、このCDはいわば現代ルネッサンスリュート(変な言い方ですが)。16世紀へタイムトリップしたいならSEON版はお勧めですが、現代生活の中に溶け込んだルネッサンス音楽を聴きたい時はこちらかと。楽器も現代11弦アルトギターのようです。
セシェルと云う人の深みある演奏は「バッハ曲集」でいかん無く発揮されていますが、このアルバムはもうちょっと明るくアットホームです。上手いとか下手と云うのも恐れ多いくらい素晴らしい演奏ですが、技術を前面に出すところは皆無。ただだだ優しく、そして心の深いところに届きます(やっぱり上手い)。
新しい録音で柔らかい音色がクリアーに録れているのも良いです。
イレヴン・ストリング・バロック
セルシェルのギターはスペイン風ではないかもしれない。つまりあまり暗い情熱を感じさせない、実に日常的な美しさを持ったどこか懐かしい、あたたかい音色です。私はセルシェルのギターっを聞く度に、幼い頃の昭和の風景を思い出します。渥美清の「泣いてたまるか」のような風景を思い出すのです。それはセルシェルが北欧の人だからかもしれません。その人が弾く11弦のギターのバッハは、それはそれは優しい美しいバッハです。日常のどんな場面でも聞いていたい、まさに家具のような音楽です。