マーラー:交響曲第1番<巨人>(花の章付き)
純真な子供が遊び、唄い、やさしく話しかけ、無邪気に・・・そして元気よく、遊びまわるような・・・・・爽やかで美しく、楽しさと快活さに溢れた演奏です。
どこまでもメロディーはやさしく、豊かで美しく、そしてさわやかで、元気で快活な子供の無邪気な笑いすら、聞こえそうです。
演奏にはどこにもに押付けがましさや猛々しさがなく、天使のようなさわやかさと無邪気で楽しい子供のような元気と愛らしさに溢れており、そこには淡々とした「音楽美」が存在します。
ボストン交響楽団の弦楽器と管楽器は、童話やメルヘンを奏でるようなデリカシーと表現で小沢の指揮に応えています。
この演奏を一言で言うとそれは「美」です。小沢さんの類稀なる美感覚を楽しむ事ができます。
無垢な子供の夢を奏でるような「花の章」はだれでも楽しむ事のできる別世界のメルヘン・ロマンのようです。
あらゆる部分で充分に熟れた、もぎたての果実を味わうような楽しみが溢れています。推薦します。
Mahler: Symphony No. 5 in C-Sharp Minor (Dover Miniature Scores)
マーラーの交響曲の中でも、第4楽章が有名なこの曲ですが、
その4楽章の演奏をする際は他の楽器の音を良く聴き、
その音に合わせる必要があります。
そこで、このミニチュアスコアを使うのですが、
「たかがミニチュアスコア」と侮るなかれ。
指揮者でもない人は、この本だけでも十分です。
価格もフルスコアに比べれば低価なので自信を持ってお勧めできるものです。
グスタフ・マーラー――現代音楽への道 (岩波現代文庫)
単なる作曲者伝ではない。マーラー曰く「いつか私の時代がくる」と。
20世紀という文明、大衆の時代をむかえ、各種メディアを通して西洋音楽は世界中に拡散していく。そのながれと動きを的確に捉えている作者の目。
終章は将に、西洋音楽史統括。ここまで纏めきれる音楽関係者は他にいない。
新書版という形式に乗った文、構成。語り口。広い知識と鋭い見識が感じられる。
数ある岩波新書の古典として残る名著である。
マーラー (河出文庫)
−−マーラーはむずかしい、私には。私には、まだ、彼がよくわかったとは言えない。では、なぜ、彼のことを書くのか?私はマーラーの一部しか知らない。だが、その一部でさえ、私の心を強くとらえ、彼の全体について、知れるだけのすべてを知り、味わえるだけのすべてを味わいたいという欲望をかき立てずにおかない。だが、私には、いつになったら、それがやれるか、その成算がないのである。−−(本書(河出文庫・2011年/初出1973年10月〜1974年2月『ステレオ芸術』)15ページ)
吉田秀和氏が、マーラーについて書いて来られた文章を、古い物は、1973年の文章から集めて、文庫本にした本である。上の文章は、この本の冒頭部分であるが、マーラーに対する吉田氏の姿勢の謙虚さに印象ずけられるのは、私だけだろうか?言ふまでも無い事だが、マーラーについて、これだけ多角的に語った本であるから、読めば、共感する部分もしない部分も有るに違い無い。だが、これだけ永くマーラーを、そして音楽を聴いて来られた吉田氏の本である。とにかく、マーラーを聴く傍らに、この本を読んで、自身の感性と吉田氏の言葉をぶつけてみる事を、お勧めする。
(西岡昌紀・内科医)