遺言 a Will
野ばらちゃんの、少しレトロで耽美な雰囲気が好きな乙女達は、AKBやミクなどに夢中な野ばらちゃんに、違和感を覚えるのではないだろうか。
それらの分野がきらいではない私だが、野ばらちゃんがそこにいくの?と驚いた。
しかし、公人としてパブリックイメージを大切にしなければいけないはずなのに、そんなことお構いなしにすべてをさらけ出す彼の姿はある意味で素晴らしい。
現在のサブカル事情を知ることもできるという意味で、新しい野ばら本とも言えるのかもしれない。
STORY BOX 25
前号の「神様のカルテ」の櫻井翔に引き続き、今月号は「僕たちは世界を変えることができない」の映画化の主演の向井理が表紙。別に二人とも嫌いなわけではないんだけど、映画の宣伝は別な媒体でやって欲しかった。
文庫判の月刊の文芸誌であるこの雑誌は、今まで、あまり小説以外の記事はほとんど載せることはなかったんだけど、先月号からその路線を変更したのか、映画の宣伝を載せるようになった。出版社が映画の宣伝をしてはいけないなんてことはないし、今までの読者とは違った人たちもこの雑誌を読むようになること自体は悪いことじゃないけど、この雑誌の良さが消えてしまう気がする。一本でも良質な小説を掲載したほうがいいのでは?
なんてことを言いながら、今月号も楽しめた。嶽本野ばらの新連載「破産」も面白かったが、夏川草介の「神様のカルテ3」も良かった。なかでも先月号から連載されている笹本稜平の「遺産」の展開は目が離せない。それと毎号楽しみに読んでいる飯島和一の「狗賓童子の島」は、いよいよ明治維新へと突入。これから、どうなるんだろう?
STORY BOX 29 (小学館文庫)
文庫判の月刊の文芸誌。ここのところイケメン俳優の表紙が続いたが、今回は堀北真希。映画の宣伝だが、この路線はずっと続くのかな。一本でも小説を増やして欲しいんな。まぁ、毎回同じことを言うのはやめよう。
今回から始まった「文庫グランプリ2012」のベスト40が発表が掲載されている。全国の書店員114人が厳選ということなので、内容は信頼してもいいのかもしれないけど、1位が自社が出している夏川草介の「神様のカルテ」とは...ちゃんと読んでいるわけではないので、私自身も評価できるわけではないけど、第1回から自社の作品を1位にしてしまうというのはどうなんだろうね。公正さを疑うわけではないけど、そもそものこの賞の創設目的から疑われてしまうかもしれない。書店員が選ぶってのもどこかで聞いたような話だしね。
さて、今回面白かったのは、大正時代の北海道の百貨店開店の話を描いた小路幸也の「オールディーズ・ロマンス」。まだ話は序盤もいいところだけど、かなりいい出だし。
アマリリス名曲大全集
なんかただの色物というか、下手物バンドというかそんなイメージがあったんですが、
すごくかっこいいですね!!!
色んなジャンルから影響受けてるんですね。
ただ、ポスト戸川純とは言われてますが、「戸川純」を期待するとガッカリするかも。
歌声使い分けるでもなく…
全体的になんだかロックしてます。
あぁ、リアルタイムで聴きたかったなぁ。
親がこれくらいの世代なのに聴いてなかったなんて本当に勿体ない。
それいぬ―正しい乙女になるために (文春文庫PLUS)
あとがきに「若気の至りに頬を赤らめるばかりです」とある通り、少しレトリックが過剰であるようにも感じられます。「今ならこんなペダンチックで刺々しい文章は綴るまい、モチーフは同じでももう少し万人に解りやすい平易なレトリックと文体を用いることでしょう。」
これは野ばらさんが小説家としてデビューする前にフリーペーパー『花形文化通信』に連載していたエッセイをまとめた本です。これを書いていた頃は、恐らく現在の野ばらさんの置かれている立場と比べてだいぶ状況に違いがあることと思います。比較的、自由に文章を書ける状況にあったことでしょう。
であるとすれば、本作の過剰なレトリックと攻撃的=挑発的な文章こそが、野ばらさんの混じりっけのない高純度な哲学、乙女の思想ではないかと思うのです。まだ、知名度も全国的ではなく、自由に、何の縛りもなく文章を書けた頃の作品として、やはり本作は「乙女のバイブル」なのでしょう。
文庫版あとがき(本作には、あとがきと文庫版あとがきがあります。)で、野ばらさんはこう言います。
「(これまでにたくさんのエッセイや小説を書いてきたが)それらの作品の源泉を辿れば全て『それいぬ』に行き着くのです」と。
野ばらさんのファンの方や我こそは乙女という方はもちろん読んで損はないと思います。
また、私のように純粋な興味で読まれる方も楽しめると思うのです。
それは、野ばらさんの乙女論は、世間一般では人の目を気にして言えなかったことを惜しげもなく言い放つものであり、ラディカルで、それゆえに刺激的だからではないでしょうか。