ソウル／Ｒ＆Ｂ通の間では，アース・ウィンド＆ファイアーの全盛期は'70年代中半~末と言われている。確かに'80年代以降のアースを聴くと，本来の持ち味であるソウルにジャズ，ロックを融合した他を圧倒するような独創的で勢いのある音は次第に影を潜めるようになり，その時々の流行を巧みに消化したキャッチーなナンバーが目立つようになる。
本作もそんな全盛期以降のアルバムではあるが，個人的にはたとえミーハーと言われても聴かずにはいられない，あるいは推さずにはいられないアルバムである。
ヴォコーダーを活用した大ヒット・ダンス・ナンバー「Let's Groove」が収録されていることもさることながら，琴線に触れる曲が多いからである。パワフルなホーンセクションが印象的で，単にファンクというよりは，アフロ・ロックとでも呼びたくなる「Lady Sun」，スウィート・ソウルを彷彿させる甘美なバラード「My Love」，スリリングなアップテンポの「果てしなき挑戦」等々。
ソウル／Ｒ＆Ｂ通の間では，さほど評価の高くない本作だが，皮肉なことに「Let's Groove」の大ヒットもあってグラミー賞を受賞している。そんなせいか，彼らの代表作というと「Let's Groove」と思っているリスナーも少なくない。ただ，『暗黒への挑戦』など'70年代にも多くの秀作を残している彼らを本当に知るためには，売れ行きや賞の有無に惑わされずに，本作も過去の作品も一通り聴いてみるべきである。