・商品概要
１９９１年に放映されたＴＶ版の続編ＯＶＡ全４作品と、ＴＶ版の総集編『EARLYDAYS RENEWAL』を全７枚に収めたブルーレイBOX。
本編ディスク（４ケースに収納）と、各話解説やキャラ・メカ紹介、メインスタッフのインタビュー等を収録したブックレットに加え、
初回特典として、キャラ原案いのまたむつみさんが描いてきたOVAシリーズの版権絵集が付いてきます。
（但しこの版権集、何とBOXに収納できない仕様。特典自体は嬉しいだけに残念でなりません；；）

ブルーレイ化で、本編映像がHD対応になって、綺麗になっているのも当然良かったのですが、個人的には音質が良くなっているのが何より嬉しかったですね。
SAGAとSINのBGMは、作曲担当の佐橋俊彦氏が手掛けて来たBGMの中でも特に大好きなので（特にSINのサントラはマジで名盤です）

映像特典は各シリーズのノンテロップOP・EDに加え（何故か11だけノンテロップOP・EDの特典無し）、各シリーズの最終回にオーディオコメンタリーを収録。
内訳は11（緑川光・松岡洋子）ZERO（置鮎龍太郎・島田敏）SAGA＆SIN（福田己津央・金丸淳一・関俊彦）となっており、話の内容は最終回自体の内容よりも、
ネタ・真面目な話含め、当時の思い出話が中心だった印象。今回初めて知るエピソードも多く、楽しく聞けました。

・各作品概要（以下ネタバレあり）
＜サイバーフォーミュラEARLYDAYS RENEWAL＞『終わりの無い夢が始まる』
時期的にはZEROとSAGAの間に制作された、TVシリーズの総集編で、TV版全３７話を前編と後編（各１時間）に分けてまとめられています。
２時間に収める為に、新規アフレコと映像で話の繋ぎを短縮してコンパクトにまとまる様に、微妙に話の内容が変更されているだけで無く、
回想シーンでクレアさんが出てきたり、最終戦での今日子さんの台詞の変更等により、この後のOVAシリーズとの繋がりがより自然になる様にまとめられています。

＜サイバーフォーミュラ１１＞『ドライバーにとって最も必要なのは、テクニックでも素質でも無い。最後の最後までレースを諦めない、不屈の闘志だという事を』
言わずと知れたOVAシリーズ第１弾。
正直言ってTV版でのハヤトの優勝は、（作中でも突っ込まれていますが）『半分以上マシンの性能のおかげじゃね？』というモヤモヤした気持ちがあったのですが、
今作ではTVの段階では未熟だったハヤトのドライビングテクニックが、シューマッハとのバトルを通して、徹底的に鍛え上げられていきます。
純粋なドライビングテクニックの上達度は、今作が一番と言っていい位に。（メンタル面での成熟は更にZEROとSAGAを経ないといけない訳ですがｗ）

これは１１だけで無く、後のシリーズにも言える事ですが、このＯＶＡシリーズで特に気に入っている点は、TVアニメの続編OVAに有りがちな【後日譚】では無く、
登場人物達の【更なる成長】が描かれている点にあります。
上記のハヤトだけで無く、今作ではランドルとミキさんも、自分のアイデンティティを見失いそうになりますが、
グレイスンや新条さんの叱咤激励で立ち直るドラマが用意されていたりと、ハヤト以外のキャラの成長ドラマも毎回魅力的なのが良いんですよね。
レース内容がTV版のごった煮仕様からＦ１っぽさメインの描写になった事も含めて、その後のOVAシリーズの方向性を決めたと言える作品です。

＜サイバーフォーミュラZERO＞『ハヤト、お前は俺だ。お前は俺に、よく似てる』
シリーズの中でも特にエンタメ色が強いシリーズ第２弾。
事故で心身共に深い傷を負ったハヤトの復活劇・あすかとの恋愛ドラマ・後輩ドライバー、アンリとの確執・新条さんの落ち武者っぷり（笑）と不死鳥っぷり・
渋カッコ良さ全開の５話のブーツホルツさん・謎のドライバー白薔薇のプリンス（笑）と見所満載ですが、やはりZEROと言えば加賀さんとのバトル。

弟にできれば位に思っていたハヤトが、かつて自分が負けたZEROの領域を乗り越えた事で、一人のライバルとして戦いを挑まざるを得なくなる加賀さん。
チームの皆、アンリ、あすか、そして自分自身の為にZEROにも加賀さんにも負けられないハヤト。
結果的に、真の決着自体はSINまで持ち越しになる訳ですが、最終戦でのバトルを通してZEROの領域に立ち向かい乗り越える２人のレースはシリーズ屈指の名勝負。

＜サイバーフォーミュラSAGA＞「彼なら知っているのかもしれないわね、違う未来を」
事実上の完結編と言えるシリーズ第３弾。
今作からメインスタッフがガラリと変わり、内容的にもZEROまでを少年ジャンプ作品とするなら、SAGAとSINはヤングジャンプ連載作品的なノリになります。
メインキャラの平均年齢が上がっているので、キャラデザの変更も大人向けの描写も、個人的には違和感なく受け入れられましたが。
（というか、キャラクターの成長に合わせて、ドラマの内容も大人向けになっていくのに何の問題が？って話ですけどね）

テーマ的には、進化し続けるマシンと、それを操る人間との関係が、今作登場のマシン・アルザードを中心に描かれていきます。
各登場人物がそれぞれに周りの人間と支え合いながら、レースとマシン、そして自分自身と向き合い、結果的にどんな答えに辿りつくのか？
特にハヤトは、11とZEROでは影が薄かったけど、今回はギャグ的にもレース的にも大活躍のアスラーダと別れ、そして再会する事で、
図らずも（SINで語られる）父が目指した『人とマシンの真の融合』の完成形に辿りつきます。
彼とアスラーダのレース自体はこれからも続いていきますが、ハヤトの成長ドラマは事実上今回で完結と言っていいでしょう。

準主人公キャラの新条さんとランドルも、それぞれ美味しいドラマと活躍を与えられ、ラストはこれ以上無い位の大団円EDですが、
過去のしがらみから解放されていない男達の為に、後１作続く事となります。

＜サイバーフォーミュラSIN＞『チェッカーヲ』
名目上はハヤトが主人公扱いとなっているが、事実上加賀さんが主人公で、ハヤトはラスボスポジションで描かれるシリーズ第４弾（最終シリーズ）
一見とんでも内容ですが、正直SAGA最終回のEDの段階で『これ以上ハヤトが主人公の話を続けるのは無理だろ』という気持ちだったので、
ハヤトをラスボスポジにするのは、むしろ良いアイデアだな、と思いました。

（全５話という事もあり）スポットが当たってるキャラ以外は殆ど出番が無かったり、
セル画とデジタル絵がごっちゃになってるせいで作画に統一感が無かったり、（作られたのがちょうどセルからデジタルへの移行期）
ドラマCDシリーズ（特にSAKURA)を聞いていないと良く分からない描写があったりと、正直シリーズの中で一番見る人を選ぶ作品だと思うのですが、
個人的には、各キャラの熱過ぎる『想い』が画面越しに鮮烈に伝わって来て、今作が一番見ていて胸が熱くなりました。

過去のしがらみから決別するために、加賀に凰呀を託した名雲。加賀さんの気持ちを優先しようとする傍ら、自分の気持ちから逃げる形になってしまっている彩。
どうしようもないジレンマを抱えながらも、ただハヤトを信じるしかない無力感に苛まれるあすか。オーナーとしての自分と、女としての自分の間で揺れる今日子。
全てを承知の上で、だからこそ全力で加賀を迎え撃つハヤト。空回りする現実と、勇み足の苛立ちの中で、本当にケリを着けなきゃいけない何かの為に走り続ける加賀。
メインの登場人物達の、シンの決着の行方は果たしてどうなるのか？
このレビューを見ている殆どの人は結末を分かっているとは思うのですが、それでも書く訳にはいかない位、最終回後半はネタバレ厳禁の熱いレースでした。

どの作品も、それぞれもっと書きたい事があるのですが、長くなり過ぎるのでここまでで（これでも十分長いと言う人もいるでしょうが許してｗ）
今回のBOXで改めてシリーズ全話見ましたが、やっぱり自分はこのシリーズが大好きなんだな、と再認識させられました。
本編スタッフの皆さんと、BOX発売に尽力してくれたスタッフの方達には、最大限の感謝の気持ちを送りたいです。本当にありがとうございました。