ディスクになってから初めて鑑賞した、
オスメント少年が出ていたことなどすっかり忘れていた、

見直して気付いた最大のポイントは、子供時代のジェニーは父にレイプされていたと台詞で明確に語られていたこと、
後のジェニーの放浪癖、　幼少時を過ごした家への憎悪、　フォレストに促された結果としての帰郷と早すぎる死、みな少女時代の暗い記憶に端を発すると思えば、本作の主演はトム・ハンクスだが、物語の主人公はジェニーかもしれない、

「フィールド・オブ・ドリームス」はフォレストとジェニーの同世代が父と和解する物語だが、父と和解するどころか、おそらく満足な会話も成立しないほど親子関係が破綻したまま無軌道な生活を続けるジェニーがドラッグで酩酊し、ベランダの端に立つシーンの哀れさはどう表現したらいいのだろうと思う、　自殺願望を持つジェニーがかろうじて思い止まれる原因は何か？と考えれば、故郷アラバマしかないはずだ、　

もし本作に一点だけ物足りない部分があるとすれば、ジェニーがキリスト教に目覚めるシーンなり状況の描写がない点だと思う、　もう一人の主役といっていいダン中尉は戦場の理不尽さにいったんはキリスト(教)を見限るが、嵐の晩に神意を再度確認しているのだから、よけいにジェニーにも似たシーンが必要だと思うわけだ、　ただし監督・脚本家はガンプ二世の誕生とジェニー自身の死期が近いことを悟った描写で代用できたと考えたのかもしれない、

中盤でジェニーがフォレストに言う台詞　"You don't know what love is."　
愚者として疎外と迫害にまみれながらも、母親の愛情と人生の幸運に包まれてきたフォレストにはジェニーが飢えている愛の形は理解しようがない、

劇中繰り返される「ゴーイン・ホーム」とはそのとおり帰るべき家があるのなら、迷わず帰るべきだというメッセージなのだが、　ジェニーが骨の髄まで浸りきったサブカルチャー人生の果てにたどりつくのがフォレストの愛ということは、作品全体として伝統回帰が訴えられているのだと思う、
フォレストが暮らすアラバマ、エビ漁をするルイジアナと南部が舞台となっているのも、南北戦争後から続く南部の伝統回帰、伝統礼賛が脚本に仕組まれていることも間違いない、

同じゼメキス監督「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がロック・ミュージック生誕３０周年記念映画とすれば、本作は４０周年記念映画だ、
特に音楽と時代の関係と緊張が極大化していた６０年代後半のベトナム戦争最盛期時代を描いた中盤４０分ほどは映像と歌のシンクロ度合いが素晴らしいと思う、

ベトナムに赴いた時にかかるCCR「フォーチュネイト・サン(幸運な息子)」からジェニーがワシントンをバスで去ってゆくシーンに流れるザ・バーズ「ターン・ターン・ターン」までの瑞々しさのようなものはまさにマジックだと思う、
フォレストが本作で唯一声を荒げて家に帰ったほうがいいと忠告しているのに、　ジェニーが時代の波に呑まれるようにサンフランシスコへ去ってゆくシーンがこんなに感動的だったとは、　これは見る側の心境の変化なのだろうか、

ちなみに本作で流れる当時のヒットソングは、基本は時系列だが、必ずしもヒット順、発表順にはなっていない、
あくまでも各シーンに相応しい曲が選ばれている、
前記「幸運な息子」は自分は金持ちや議員の息子のように幸運じゃないからベトナムに来ているという皮肉が叫ばれている歌、

ワシントンでフォレストとジェニーが別れるシーンの背後には野営したヒッピー達が毛布をまといながらうろうろしている、　もちろん時代を最高に象徴したウッドストック・イメージが再現されていることになる、
そしてウッドストック・コンサートで最も歓声を浴びたのがテン・イヤーズ・アフターが演奏する「アイム・ゴーイン・ホーム」だったとは偶然にしては出来すぎた事実だと思う。　さらに驚くべきことに、「アイム・ゴーイン・ホーム」演奏に先立ちアルビン・リーは、"I'm goin' home by helicopter."とベトナム戦争を象徴する兵器であるヘリコプターを持ち出したのである。