著者は昭和29年生まれであるということで、私とまったく同世代である。
したがって、私と同様に著者も昭和40年代は小学校高学年から大学生までという、まさに最も多感な思春期に相当するわけである。
そして、この青春時代というか学生時代の経験や体験、そして接したものたちは、50代になった今から振り返ると、まさに自身の人生を決定する要因となったものが多かったのだ。

この時期には、まずテレビではアニメ、特撮もの、ドラマ、今ではバラエティと分類されるものたちなどがある。
そしておもちゃ、アイドル、さらにはマンガやお菓子などに代表される子供文化といったものたちに触れるわけである。
本書で紹介されているものは、いずれも昭和40年代をいろどった、まさに懐かしいものたちである。
そして本書で改めて振り返ってみて、それらが実に個性的であり、パワーを秘めていたことに気づく。

中にはすでに過去のものとなってしまった、まさに思い出の中にしか存在しないものもある。
また、オロナミンCのように今でも継続されているものもある。
そして、それらが輝いていた時代を改めて振り返るとき、昭和40年代が日本の大きな転換期だったことに気づくのである。
すなわち、高度成長期から、大阪万博を経て、公害などの社会問題が顕在化して、成長に伴うマイナス面に改めて気づいた時代になったのである。
その中で、著者の成長とともに、本書で紹介されている40年代を代表するものたちは、子供のものから次第に大人のものになっていく。
それはまさに日本と日本人の成長を表してもいるようである。

本書は年代順となっており、またひとつずつの項目が簡単なクイズ形式となっている。
そしてその解答が紹介されている項目の説明を兼ねる、というスタイルになっている。
しかもその解答が会話形式で記されているため、非常に読みやすく、また楽しい。
昨年の震災を経験して、少子高齢化でめざましい成長が望めない今は、まさに40年代末のオイルショックの時代に似ているかもしれない。
昭和40年代の文化、特に子供を中心とした若者文化を振り返ることは、今の日本の状況を変えるヒントを得る一助になるかもしれない。

まあ、そんな難しいことを考えなくても、とにかく本書は昭和40年代を経験したものにとっては、実に楽しい一冊である。
そうそう、あんなものがあったね、というように、気楽に読むのが良いだろう。
大村崑、藤田まことからコロンボまで、やはり懐かしいのひとことである。
ただし、簡単なミスが多いのだけはマイナスかな。
「へびぐち」じゃなく「じゃぐち」だからね。