夢十夜 夏目漱石 第七夜 何でも大きな船に乗っている
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真空地帯 [DVD]
早稲田大学から学徒出陣というのかシンガポール戦線に送られた詩人の鮎川信夫や40歳で徴兵されフィリピン・ミンドロ島で生死の境をさまよう体験をした大岡昇平は野間宏の「真空地帯」を日本陸軍は「真空地帯」ではない、と批判した。野間宏はフィリピン戦線でパターン死の行軍や陸軍刑務所、陸軍内務班では顔が曲がるほど上官に殴られあらゆる貴重な経験をした人。だから日本陸軍は「真空地帯」ではないことは知っている。大岡昇平は一度も殴られたことがない。戦地では忙しくリンチなどやっている暇がないそうだ。日本人は集団化すると必ずいじめやリンチをする。これは企業、自衛隊、右翼、左翼を問わない。日本人の体質だ。 野間宏は岡本太郎に「のろまひどし」とあだ名をつけられた。
暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)
「暗い絵」――
ブリューゲルの絵の描写が印象的だ。
草もなく木もなく実りもなく
吹きすさぶ雪嵐が荒涼として吹きすぎる。
はるか高い丘のあたりは雪にかくれた黒い日に焦げ、
暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに
黒い漏斗形の穴がぽつりぽつり開いている……。
野間宏の卓越した筆致力。
この描写は、
特高警察監視下における
京大左翼活動家たちの苦境を
見事に表現している。
主人公・深見進介もまた活動家の一員だが、
他の仲間との距離感は複雑である。
仲間の一人は自分たちの行動を「仕方のない正しさ」と述べ、
活動の結果獄死を遂げる。
しかし、深見進介は言う。
「やはり、仕方のない正しさではない。
仕方のない正しさをもう一度真直ぐに、
しやんと直さなければならない。
それが俺の役割だ。
そしてこれは誰かがやらなくてはならないのだ」。
これは仲間と道を別ったうえでの発言ではあるが、
決して否定ではない。
そこには尊敬と肯定の想いがある。
これは深見進介=野間宏による、
そこに生じた歪みを引き受ける
苦渋の決断といえよう。
それは身が引き裂かれるような思いであったはずだ。
この畢生の決断と勇気を尊重したい。
ブリューゲルの絵の描写が印象的だ。
草もなく木もなく実りもなく
吹きすさぶ雪嵐が荒涼として吹きすぎる。
はるか高い丘のあたりは雪にかくれた黒い日に焦げ、
暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに
黒い漏斗形の穴がぽつりぽつり開いている……。
野間宏の卓越した筆致力。
この描写は、
特高警察監視下における
京大左翼活動家たちの苦境を
見事に表現している。
主人公・深見進介もまた活動家の一員だが、
他の仲間との距離感は複雑である。
仲間の一人は自分たちの行動を「仕方のない正しさ」と述べ、
活動の結果獄死を遂げる。
しかし、深見進介は言う。
「やはり、仕方のない正しさではない。
仕方のない正しさをもう一度真直ぐに、
しやんと直さなければならない。
それが俺の役割だ。
そしてこれは誰かがやらなくてはならないのだ」。
これは仲間と道を別ったうえでの発言ではあるが、
決して否定ではない。
そこには尊敬と肯定の想いがある。
これは深見進介=野間宏による、
そこに生じた歪みを引き受ける
苦渋の決断といえよう。
それは身が引き裂かれるような思いであったはずだ。
この畢生の決断と勇気を尊重したい。
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