ドラマ志向の強いアドベンチャーゲームです。シナリオにしろ芝居にしろ音楽にしろ絵作りにしろ、いろいろな面で金のかかった海外のTVドラマといった感じです。原則として視点が初期の『バイオハザード』シリーズなどと同じく固定カメラ式で、これがいかにもTVドラマといった雰囲気を高めています。ただしこれは逆に言うと自由に視点を移動できないということで、最近のTPSに慣れた人はストレスを感じるかもしれません。また当時としては表情の表現も高水準だったようです。あくまでもアドベンチャーゲームであって、シューティングなどのアクション要素はありません。アクションシーンは若干あるものの、操作は全部いわゆるQTEです。

　大人の鑑賞に堪えるドラマをフィーチャーしたアドベンチャーゲームということで、発売当時としては意欲作だったろうと思いますが、シナリオ面について言うと、『The Last of Us』(ラスアス)あたりを既に見てしまっていると、ちょっと食い足りなさがありました。ラスアスと比べて目立つのは人間関係の描写が生硬なことです。どちらもプロローグ部分に「幸福な家庭」の描写があってここは対比がしやすく、技量の差がはっきりわかります。このシーンについて言えば、幸福とはどういうことか、愛されているとはどういうことかという点についての考察の深さで差が出たように見えます。
　また、イーサン以外のプレイヤーキャラクターについて行動の動機がかなり遅い段階まで明らかにされなかったのも如何かと思います。動機が分からないと人物の行動への共感が成立せず、話を受け身で見るしかないことになります。
　ミステリーとして見たときは、最大の謎である「イーサン自身が折り紙殺人鬼なのか」ということと、登場人物(ひいてはプレイヤー)の行動にあまり関係がないというのが問題だったと思います。イーサンが真犯人であろうとなかろうととるべき行動が同じなら、謎への答えを知る必要はあまりないわけです。これはつまりプレイヤーに話の続きを見たいと思わせる力が弱いということを意味します。もっともこれは、本格的な推理小説などでもなかなかできていないことです。

　そんな風に問題はありますが、それでもゲームシナリオとしてはよく出来ている方であり、この価格なら一度プレイしてみて損はないでしょう。