Pink Moon
『ピンクムーン』は、ヴォーカル、ギター、ピアノのみの非常にシンプルな構成で、
彼らしさが最も出た作品だと思います。
私はニック・ドレイクの評価の高さから彼の作品を聴き始めたのですが、その痛々しい
までの剥き出しの魂に押されて、なかなか良いと思うことがありませんでした。
その印象が変わったのは初めて聴いてから5年ほど経った頃でした。陰鬱だと感じて
いたメロディを、ポップだと感じるようになったのです。それと同時に、呟くような
ヴォーカル、ひたすら伴奏に徹するギターなど、単調に思えていた曲調が非常に深みの
ある奥深いものに思えてきたのです。
そのあとはもうニック・ドレイクにどっぷりです。とにかく飽きるという感覚が全く
ありません。何度聴いても、“いいアルバムだな〜”と思えるのです。一度聴いて耳に残る
ようなメロディではないからこそ、深みがすごくで、とにかく何度も聴いて欲しいと思い
ます。
私が最も好きな曲は『Things Behond the Sun』です。この曲のサビがとても澄み
きっていて、ニック・ドレイクにしては明るいのです。曲のトーンとしては決して明るくは
ないのですが、それでもサビのメロディには胸の奥が温かい気持ちにしてもらえるのです。
今なお多くのファンがおり、また音楽誌でも高く評価されていることが納得できる
素晴らしいアルバムです。明るさや分かりやすさといった要素はほとんどありませんが、
心に訴えかけ、色褪せることのない奇跡の音楽だと思います。
彼らしさが最も出た作品だと思います。
私はニック・ドレイクの評価の高さから彼の作品を聴き始めたのですが、その痛々しい
までの剥き出しの魂に押されて、なかなか良いと思うことがありませんでした。
その印象が変わったのは初めて聴いてから5年ほど経った頃でした。陰鬱だと感じて
いたメロディを、ポップだと感じるようになったのです。それと同時に、呟くような
ヴォーカル、ひたすら伴奏に徹するギターなど、単調に思えていた曲調が非常に深みの
ある奥深いものに思えてきたのです。
そのあとはもうニック・ドレイクにどっぷりです。とにかく飽きるという感覚が全く
ありません。何度聴いても、“いいアルバムだな〜”と思えるのです。一度聴いて耳に残る
ようなメロディではないからこそ、深みがすごくで、とにかく何度も聴いて欲しいと思い
ます。
私が最も好きな曲は『Things Behond the Sun』です。この曲のサビがとても澄み
きっていて、ニック・ドレイクにしては明るいのです。曲のトーンとしては決して明るくは
ないのですが、それでもサビのメロディには胸の奥が温かい気持ちにしてもらえるのです。
今なお多くのファンがおり、また音楽誌でも高く評価されていることが納得できる
素晴らしいアルバムです。明るさや分かりやすさといった要素はほとんどありませんが、
心に訴えかけ、色褪せることのない奇跡の音楽だと思います。
Five Leaves Left
作品自体は確実に星5つです。リマスターによって音も良くなっています。ただし、2010年にはSHM−CDでなおかつ1800円で発売されているので、そちらの方が良いと思います。
このアルバムは、ニック・ドレイクが21歳の時にほぼ1年がかりで録音したもの。完成度の高さにびっくりします。アウトテイク集の『タイム・オブ・ノー・リプライ』には、このアルバムの録音時の音源が多く収められています。2011年現在、『タイム・オブ・ノー・リプライ』は廃盤で入手が困難になっているのが残念です。
さて、この2000年発売のニックドレイクのリマスター盤3枚は、残念ながら歌詞の日本語訳がついていません。だから、星を一つ減らしました。ニック・ドレイクのように歌詞が重要な意味を持つシンガーソングライターの作品には歌詞と日本語訳の両方をつけて欲しかったです。
このアルバムは、ニック・ドレイクが21歳の時にほぼ1年がかりで録音したもの。完成度の高さにびっくりします。アウトテイク集の『タイム・オブ・ノー・リプライ』には、このアルバムの録音時の音源が多く収められています。2011年現在、『タイム・オブ・ノー・リプライ』は廃盤で入手が困難になっているのが残念です。
さて、この2000年発売のニックドレイクのリマスター盤3枚は、残念ながら歌詞の日本語訳がついていません。だから、星を一つ減らしました。ニック・ドレイクのように歌詞が重要な意味を持つシンガーソングライターの作品には歌詞と日本語訳の両方をつけて欲しかったです。
Bryter Layter
発売年は1970年、本作は英国のシンガーソングライター、ニック・ドレイクのセカンドアルバムになります。
シンプルな室内楽的なファーストアルバムに比べ、こちらはより音を重ね、いっそう凝った作りとなっています(特にストリングスが目立ち、音の広がりを感じさせます)。
そして何より、明るいです、あくまで「彼にしては」という意味でですが。それでも他の二枚と比べれば明らかに親しみやすく、聴きやすいアルバムと言えます。
アルバムはストリングスとニックのギターによるインストに始まり、中間にも一つ、そして最後にまたインスト(他はもちろん歌入り)、という構成になっており、全体の雰囲気・アレンジにも統一が図られています。
アルバムとしてとにかく完成度が高く、明るさとほの暗さが入りまじった、青白い夜明けのような味わい深さがあります。他二枚のオリジナルと並んで、文句なしの名作です。
シンプルな室内楽的なファーストアルバムに比べ、こちらはより音を重ね、いっそう凝った作りとなっています(特にストリングスが目立ち、音の広がりを感じさせます)。
そして何より、明るいです、あくまで「彼にしては」という意味でですが。それでも他の二枚と比べれば明らかに親しみやすく、聴きやすいアルバムと言えます。
アルバムはストリングスとニックのギターによるインストに始まり、中間にも一つ、そして最後にまたインスト(他はもちろん歌入り)、という構成になっており、全体の雰囲気・アレンジにも統一が図られています。
アルバムとしてとにかく完成度が高く、明るさとほの暗さが入りまじった、青白い夜明けのような味わい深さがあります。他二枚のオリジナルと並んで、文句なしの名作です。
ニック・ドレイク―悲しみのバイオグラフィ
あまりにもシャイで人と接することを苦手とし、ライブを行うことに心底嫌気がさし、またとない才能を持ちながらも成功を収められずに精神を蝕まれ、そうして摂取したドラッグや抗鬱剤によってさらに状態が悪化する…、本文のおよそ半分には、勿論そういったやり切れない事実が書かれている。しかし、幼少期や高校・大学時代、デビュー当時の彼は冷静ではあったものの人当たりが決して悪くなく、思いやりのある家族や周囲の人々に恵まれ、音楽やスポーツ、旅行などを楽しんでいたとの記述もそこかしこに見られるし、本人にとっては遅すぎたことかも知れないが、死後に彼自身と彼の音楽が多くの人に知られ、愛されるようになった記述もある。
何よりも死の直前の数週間、ニックが快活な様子を取り戻して音楽活動を再開したいという意向を口にしていたことを彼の両親の証言から知った。そして、死の原因が寝付きの悪かった際の坑鬱剤トリプチリンの過剰摂取であり、自殺の意図を必ずしも示すものではないということも。
本文は家族、友人、仕事関係者を中心とした驚くほど数多くの証言から成り、ニック・ドレイクの真実の人生に近付こうとする真摯なもので、過剰なところは少なく、時に拍子抜けするほど地味ですらあった。しかし、その姿勢は実に好ましいものであり、ニックの生涯を多面・重層的に捉えて大いに関心を傾けて読むことを促すように思われる。
それゆえに『ニック・ドレイク 悲しみのバイオグラフィ』という邦題がつけられているのが残念でならない。原題が『Nick Drake The Biography』であり、できるかぎり真実の歪曲を避けるものなのに。せめて、この本を読む人に少しでも彼の本当の姿が伝わることを願います。そして、ニック・ドレイクのうつくしい音楽が偏見なしに愛されますように。
何よりも死の直前の数週間、ニックが快活な様子を取り戻して音楽活動を再開したいという意向を口にしていたことを彼の両親の証言から知った。そして、死の原因が寝付きの悪かった際の坑鬱剤トリプチリンの過剰摂取であり、自殺の意図を必ずしも示すものではないということも。
本文は家族、友人、仕事関係者を中心とした驚くほど数多くの証言から成り、ニック・ドレイクの真実の人生に近付こうとする真摯なもので、過剰なところは少なく、時に拍子抜けするほど地味ですらあった。しかし、その姿勢は実に好ましいものであり、ニックの生涯を多面・重層的に捉えて大いに関心を傾けて読むことを促すように思われる。
それゆえに『ニック・ドレイク 悲しみのバイオグラフィ』という邦題がつけられているのが残念でならない。原題が『Nick Drake The Biography』であり、できるかぎり真実の歪曲を避けるものなのに。せめて、この本を読む人に少しでも彼の本当の姿が伝わることを願います。そして、ニック・ドレイクのうつくしい音楽が偏見なしに愛されますように。