Witold Malcuzynski
今から45年くらい前になるが、当時2000円が相場だったLPについて、1000円盤という廉価盤が出だした時期があった。玉石混合ではあったが、比較的市場で知られていない演奏家の、意外とすぐれた演奏もあり、その中にEMIから出たこのマルクジンスキーのショパンマズルカ選集があった。当時学生で金のなかった私は、安い(といったって今の価値に直すと3000円くらいか)ということで購入したものだが、のちになっていろいろ大家、名家(ルビンスタイン、ホロヴィッツ、ミケランジェロ、ルイサダ等々)を聞いてきても、この演奏は十分のそれに比する内容を持っていると感じ(特にリズムがいいと思う)、なぜあまり知られていないのかと思ったものであった。
今回これだけ出て、ラフマニノフの3番、ブラームスの1番の協奏曲、バッハの半音階幻想曲とフーガ、ベートーベンの熱情(どれもしっかりとした正統派の演奏)などを聞いてみると、この人はショパンに留まらず、幅広いレパートリーに対して、しっかりとした様式感をもった非常に力量のあるピアニストだと感じた。ラフマニノフなど、早めのテンポでサクサクと進むが、一音一音のクリアなこと、ちょっとホロヴィッツを思い出した。やはり恵まれたとは言えないポーランドの名指揮者パウル・クレツキの伴奏とともに素晴らしいと思う。リストのソナタなんかも素晴らしい(強靭な低音)。
ショパンのワルツ、マズルカ、バラード、3番のソナタ等以外はモノラルであるが、音質は良く、1949年ころのラフマニノフも弦の繊細さも聞き取れる。十分価値のあるICONセットであり、こういう商業主義に載らない演奏家の問題を改めて感じる。'
今回これだけ出て、ラフマニノフの3番、ブラームスの1番の協奏曲、バッハの半音階幻想曲とフーガ、ベートーベンの熱情(どれもしっかりとした正統派の演奏)などを聞いてみると、この人はショパンに留まらず、幅広いレパートリーに対して、しっかりとした様式感をもった非常に力量のあるピアニストだと感じた。ラフマニノフなど、早めのテンポでサクサクと進むが、一音一音のクリアなこと、ちょっとホロヴィッツを思い出した。やはり恵まれたとは言えないポーランドの名指揮者パウル・クレツキの伴奏とともに素晴らしいと思う。リストのソナタなんかも素晴らしい(強靭な低音)。
ショパンのワルツ、マズルカ、バラード、3番のソナタ等以外はモノラルであるが、音質は良く、1949年ころのラフマニノフも弦の繊細さも聞き取れる。十分価値のあるICONセットであり、こういう商業主義に載らない演奏家の問題を改めて感じる。'
ショパン:マズルカ選集
1975年、中学2年生だった私がショパンに傾倒し始めた当時、タイムリーにNHK-FM「大作曲家の時間」にショパンが取り上げられた。構成は野村光一さん。その番組のテーマ音楽に、マズルカ第17番変ロ短調・作品24-4が取り上げられていた。その半音ずつ下降・上昇する2つの旋律からなる印象的な序奏はまだ幼かった私の耳にこびりついて離れない。そして、そのマズルカの演奏こそ、ポーランド生まれのピアニスト、このヴィトルト・マルツジンスキによるものであった。
マルツジンスキのマズルカは、決して情緒に流されることのない硬派のイメージである。しかし、土着のマズルカのお国振りの訛りとでも言おうか、それはやはり紛れもなくポーランド人の血のなせる業であろう。私は今でも、マズルカの演奏ならこのマルツジンスキを選ぶ。
マルツジンスキのマズルカは、決して情緒に流されることのない硬派のイメージである。しかし、土着のマズルカのお国振りの訛りとでも言おうか、それはやはり紛れもなくポーランド人の血のなせる業であろう。私は今でも、マズルカの演奏ならこのマルツジンスキを選ぶ。