ドビュッシーこどもの領分 全音ピアノライブラリー
ドビュッシーは技術的に難易度の高い数々のピアノ作品を残しているが、これは私たち一般人でも弾いて楽しむことのできる小品集。晩年に近くなってから授かった娘への愛情がこの曲集にちりばめられており、弾いて「ほっ」とできる・笑顔になれる、そんな無邪気な曲集だと思います。個人的に大好きなのは第4曲の「雪が踊っている」。私に理由を聞かずに弾いてみてください。雪が踊っているってこういうことなのかと気づかせてくれるはずです。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
ラヴェルの協奏曲はよく知らないので、ラフマニノフにだけコメントさせてください。
ラフマニノフは大変手の大きなピアニストでした。そんな彼の作曲したピアノ協奏曲は、手の小さな女性には演奏困難な難曲です。女性ピアニストの演奏するラフマニノフは、よく言えば繊細、悪く言えば弱弱しく聞こえることがあります。しかし、田中希代子さんの演奏は違います。冒頭の最初の音こそ静かに弾き始めるものの、弾き進むにつれてまさにわが道を行くがごとく堂々と弾きこなし、「突進」という表現が似合うほど力強い演奏です。第2楽章も、ただ遅いテンポでダラダラ弾くような演奏とは違い、実に表情豊かな演奏です。録音状態もことのほか良いです。こんな素晴らしい才能を持ちながら、病のために引退を余儀なくされたとき、ご本人はどんなお気持ちだったのでしょう。想像できません。日本に田中希代子さんのような素晴らしいピアニストがいたことは、私たちの記憶に永遠にとどめたいものです。
ラフマニノフは大変手の大きなピアニストでした。そんな彼の作曲したピアノ協奏曲は、手の小さな女性には演奏困難な難曲です。女性ピアニストの演奏するラフマニノフは、よく言えば繊細、悪く言えば弱弱しく聞こえることがあります。しかし、田中希代子さんの演奏は違います。冒頭の最初の音こそ静かに弾き始めるものの、弾き進むにつれてまさにわが道を行くがごとく堂々と弾きこなし、「突進」という表現が似合うほど力強い演奏です。第2楽章も、ただ遅いテンポでダラダラ弾くような演奏とは違い、実に表情豊かな演奏です。録音状態もことのほか良いです。こんな素晴らしい才能を持ちながら、病のために引退を余儀なくされたとき、ご本人はどんなお気持ちだったのでしょう。想像できません。日本に田中希代子さんのような素晴らしいピアニストがいたことは、私たちの記憶に永遠にとどめたいものです。
ドビュッシー・リサイタル
田中希代子さんは60年台に活躍されたピアニストですが、病が若い気鋭のピアニストから表現手段を奪い引退を余儀なくさせました。田中さんは引退後は後進の育成に力を発揮され、96年に64歳でこの世を去られました。田部京子さんとかが愛弟子です。いま、AVEXから売り出し中の菊池洋子さんは最後のお弟子さんだそうです。60〜70年台にN響のコンマスをされた田中千香士さんは弟さんです。
さて、この「子供の領分」は、私にとっては思い出のある盤で、私が中学生の頃である70年台前半に親から買い与えられたものです。私は、この盤をきっかけにしてフランス音楽にのめり込んで行きました。録音はそのさらに10年前の61年。70年には既に田中さんの指は動かなくなっていたとのことです。(当時はLPでした。ちなみに今日、当時のLPを手に入れようとするとヤフオクで10万円くらいします)
演奏は、聴いていると自然に体が動き出すような、生理的に無理のない演奏で、かつワイセンベルグのように点描画を描いていくような正確なリズムが緊張感を作り出し、うまいバランスの上に成り立っています。
なお、日本人の女流で、田中さんの演奏に匹敵する演奏はその後見当たりません。(キキ柏木さんという方の演奏は、次点に推薦できると思いますが・・・)
さて、この「子供の領分」は、私にとっては思い出のある盤で、私が中学生の頃である70年台前半に親から買い与えられたものです。私は、この盤をきっかけにしてフランス音楽にのめり込んで行きました。録音はそのさらに10年前の61年。70年には既に田中さんの指は動かなくなっていたとのことです。(当時はLPでした。ちなみに今日、当時のLPを手に入れようとするとヤフオクで10万円くらいします)
演奏は、聴いていると自然に体が動き出すような、生理的に無理のない演奏で、かつワイセンベルグのように点描画を描いていくような正確なリズムが緊張感を作り出し、うまいバランスの上に成り立っています。
なお、日本人の女流で、田中さんの演奏に匹敵する演奏はその後見当たりません。(キキ柏木さんという方の演奏は、次点に推薦できると思いますが・・・)
田中希代子―夜明けのピアニスト
才能に恵まれたピアニスト田中希代子を知らなかった人には、とてもよく書かれていて興味深く読めると思います。
しかし当時の世界の音楽界と日本の関係について著者なりの新しい視点が欲しかったし(特にハイフィンガー奏法うんぬんに関するくだりは中村 紘子女史の著述とかぶる事柄が多く関心しなかった)そこでのピアニストとしての彼女のおかれた立場や評価をもっと詳細に調べてほしかったように思う。(例えば演奏会批評やレパートリー、プログラム等の資料も欲しいところだ)
彼女の残した録音もCD化されているもの以外は調べられていなくて完全なディスコグラフィーとは言えないのが片手落ちである。
彼女のファン、音楽愛好家や専門家には少し物足りない内容で残念。
石川庸子さんの「原智恵子 伝説のピアニスト」や青柳いずみこさんの「翼のはえた指」はこういった点からもっと読み応えがありました。
しかし当時の世界の音楽界と日本の関係について著者なりの新しい視点が欲しかったし(特にハイフィンガー奏法うんぬんに関するくだりは中村 紘子女史の著述とかぶる事柄が多く関心しなかった)そこでのピアニストとしての彼女のおかれた立場や評価をもっと詳細に調べてほしかったように思う。(例えば演奏会批評やレパートリー、プログラム等の資料も欲しいところだ)
彼女の残した録音もCD化されているもの以外は調べられていなくて完全なディスコグラフィーとは言えないのが片手落ちである。
彼女のファン、音楽愛好家や専門家には少し物足りない内容で残念。
石川庸子さんの「原智恵子 伝説のピアニスト」や青柳いずみこさんの「翼のはえた指」はこういった点からもっと読み応えがありました。