人間の証明 [DVD]
角川映画のスタートは鮮烈だった。
今の大映を吸収した角川映画ではなく、凄いスケールだった頃の角川。
角川春樹氏という良くも悪くも「ツインターボ」みたいに馬力のある
大プロデューサーに率いられて、確かにそれまでの日本映画にはない
魅力を届けてくれた。
第1作の「犬神家」はもはや伝説の域だが、この2作目もなぜだか
忘れられない。子供の頃に映画館で観た記憶が残っているのは本作と
「八つ墓村」くらいのものだ(笑)。
マンハッタンであれだけのスケールでロケを行い、松田優作とオスカー
俳優G・ケネディとの対峙に震えたが、子供心にNYCは危なそう、という
感覚を持ったのも確かだ(笑)。G・ケネディの最期も忘れられない。
松田優作は「ブラック・レイン」が遺作となったが、なにかアメリカが似合う
俳優だった。
それから三船敏郎と鶴田浩二の出演(とはいえシーンは一緒にならないが)も
凄いことだった。東宝時代に鶴田が大スターの三船に嫌悪感を持っていた
ことはよく知られるが、こういう再会の仕方は良かった。
ニューオータニの夜景も今なお鮮明に思い起こされるが、ストローハットと
あのラストシーンの関係性など、本当に見事な作品だった。
後年にTVドラマや渡辺謙の主演作なども作られたが、パンパンの記憶
とか原作を追っていたのも本作だけだ。ゆえに仕上がりも「格」が違う。
画質の限界はあるだろうが、ともあれHD化されるのは嬉しいこと。
2012年に初見の方には「何だこれ」と思う向きもあるかもしれない。
でも角川の凄みを知る世代には忘れられないシャシンです。星は当然の5つ。
今の大映を吸収した角川映画ではなく、凄いスケールだった頃の角川。
角川春樹氏という良くも悪くも「ツインターボ」みたいに馬力のある
大プロデューサーに率いられて、確かにそれまでの日本映画にはない
魅力を届けてくれた。
第1作の「犬神家」はもはや伝説の域だが、この2作目もなぜだか
忘れられない。子供の頃に映画館で観た記憶が残っているのは本作と
「八つ墓村」くらいのものだ(笑)。
マンハッタンであれだけのスケールでロケを行い、松田優作とオスカー
俳優G・ケネディとの対峙に震えたが、子供心にNYCは危なそう、という
感覚を持ったのも確かだ(笑)。G・ケネディの最期も忘れられない。
松田優作は「ブラック・レイン」が遺作となったが、なにかアメリカが似合う
俳優だった。
それから三船敏郎と鶴田浩二の出演(とはいえシーンは一緒にならないが)も
凄いことだった。東宝時代に鶴田が大スターの三船に嫌悪感を持っていた
ことはよく知られるが、こういう再会の仕方は良かった。
ニューオータニの夜景も今なお鮮明に思い起こされるが、ストローハットと
あのラストシーンの関係性など、本当に見事な作品だった。
後年にTVドラマや渡辺謙の主演作なども作られたが、パンパンの記憶
とか原作を追っていたのも本作だけだ。ゆえに仕上がりも「格」が違う。
画質の限界はあるだろうが、ともあれHD化されるのは嬉しいこと。
2012年に初見の方には「何だこれ」と思う向きもあるかもしれない。
でも角川の凄みを知る世代には忘れられないシャシンです。星は当然の5つ。
新装版 人間の証明 (角川文庫)
過去の作品がテレビドラマ化されることで話題となり原作本を知るという図式で面白い本に何冊か最近出会っている。本書もそうして読む機会を得た。
時は昭和50年代か、黒人の青年が東京で死体となって発見される。異国での死。殺人事件を捜査する棟居刑事を突き動かすものは彼の過去の体験が基となっているようだ。
東京、ニューヨークと小説の中に時々、挿入される大都会の風情は社会的に冷徹に客観的な様子で描かれていてどきりとする。今はそれが加速されてしまったのか、どうか。
殺人事件は棟居刑事が気が付かない場所でその後も起こる。時代の申し子のような裕福な家庭の子息、社会的名声がある人物たち、不倫をしている人なども登場する。
ラストはせつなく、犯罪者が悪人かというと言い切れない。犯罪者が生まれる社会の構造、人間の業(ごう)を想った。また何より小説冒頭で殺された黒人青年ジョニーの足跡をたどるラストの棟居刑事の語り、彼の少年時代のどうにもならない怒り、その鉾先のくだりはせつなさ、苦しさが胸に沸き立つ感があった。
過去にも映画やドラマとなったそうだがそれはよく知らなかった。今回、めぐり合えてよかった1冊だ。
時は昭和50年代か、黒人の青年が東京で死体となって発見される。異国での死。殺人事件を捜査する棟居刑事を突き動かすものは彼の過去の体験が基となっているようだ。
東京、ニューヨークと小説の中に時々、挿入される大都会の風情は社会的に冷徹に客観的な様子で描かれていてどきりとする。今はそれが加速されてしまったのか、どうか。
殺人事件は棟居刑事が気が付かない場所でその後も起こる。時代の申し子のような裕福な家庭の子息、社会的名声がある人物たち、不倫をしている人なども登場する。
ラストはせつなく、犯罪者が悪人かというと言い切れない。犯罪者が生まれる社会の構造、人間の業(ごう)を想った。また何より小説冒頭で殺された黒人青年ジョニーの足跡をたどるラストの棟居刑事の語り、彼の少年時代のどうにもならない怒り、その鉾先のくだりはせつなさ、苦しさが胸に沸き立つ感があった。
過去にも映画やドラマとなったそうだがそれはよく知らなかった。今回、めぐり合えてよかった1冊だ。
人間の証明 デジタル・リマスター版 [DVD]
昭和51年、犬神家の一族で映画産業に参入した角川映画第二段。日本映画は完全な斜陽で、「何を今更」という声と「角川なら何かやるかもしれない」という期待とがあった。
本作は、ベストセラーになった小説の映画化。「読んでから見るか、見てから読むか」というコピーは大流行となった。もちろん映画自体も注目を集め「ストウハ」「僕のあの帽子どうしたんでしょうね」なども大流行。釣られて西条八十の詩集を買い求める人が増えたりもした。
思い出してみれば角川映画。その後も「かいかん」や「お父さんを殺しに何かがくるよ」(コピー、やや不正確)など、爆発的ブームになるコピーを生み出している。映画を見ない人もコピーに釣られて映画館に出かけることもあった。そういう意味で「角川映画」のした役割は確かに大きい。
さて、四半世紀ぶりに見る本作。映像の作り方などに古さは感じるが、それは「陳腐」に感じる古さではなく「懐かしさ」に通じると思う。有名俳優の若き姿を見ることができるのも楽しみだ。「ハリウッドプライス」と言わないまでも、もう少し価格が下がってくれれば「必見の一作」扱いなんだろうけれども。日本映画のマーケットの狭さが残念ではある。
本作は、ベストセラーになった小説の映画化。「読んでから見るか、見てから読むか」というコピーは大流行となった。もちろん映画自体も注目を集め「ストウハ」「僕のあの帽子どうしたんでしょうね」なども大流行。釣られて西条八十の詩集を買い求める人が増えたりもした。
思い出してみれば角川映画。その後も「かいかん」や「お父さんを殺しに何かがくるよ」(コピー、やや不正確)など、爆発的ブームになるコピーを生み出している。映画を見ない人もコピーに釣られて映画館に出かけることもあった。そういう意味で「角川映画」のした役割は確かに大きい。
さて、四半世紀ぶりに見る本作。映像の作り方などに古さは感じるが、それは「陳腐」に感じる古さではなく「懐かしさ」に通じると思う。有名俳優の若き姿を見ることができるのも楽しみだ。「ハリウッドプライス」と言わないまでも、もう少し価格が下がってくれれば「必見の一作」扱いなんだろうけれども。日本映画のマーケットの狭さが残念ではある。