大学破綻 ――合併、身売り、倒産の内幕 角川oneテーマ21
本書は、ミネソタ州立大学で長く教鞭をとり、学校運営に携わり、現在も桜美林
大学の学校運営に携わる経歴を持つ著者が、大学全入時代を迎えた日本の高等
教育の現状や今後の方向性について語った本である。
少子化が進む中で、その現状を知りながらも新たに大学が新設され、私立大学
でも学部や定員を増やす傾向がある昨今。外から見ていると、この傾向は理解
しがたいものがあるし、破綻する大学が多く出てくることは十分に予想される。
しかし、「4年制の私立大学では、約4割で入学者の定員割れに陥っています」
(p. 3)と現状を知ると、その深刻さを痛感せざるを得ない。
本書は、「10年後には100校近い数の大学が消滅しているでしょう」(p. 65)等
と厳しい現状を述べながらも、大学の学長には研究よりも「経営的な視点」が
必要であること、授業料の設定の仕方を明確にすること(それが社会人を取り
込むことにもつながること)、地域のニーズを考えた大学づくりをすること、
そして本書で何度も出てくる「大学のミッション」を明確にした上で初めて教育
が成り立つこと等といった、大学改革の提言を具体的に述べているのが有難い。
大学教員というと研究が求められるのは当然だが、ミッションによっては、
教育能力の方が高く求められる大学があってもいい、という著者の主張は、
全入時代や少子化を考えれば至極真っ当なことであり、実際、近年初年度教育
に力を入れる大学が増えてきたことが、著者の主張の説得性を高めている。
とかく昔の「名実ともに高等教育機関」であった頃の大学像をひきずって閉鎖的
な大学が多いように見えるが、今後しばらくは18歳人口が少ないことは分かって
いることであり、ミッション遂行のために変化していくことが求められるのだろう。
また、実際に、ミッションを掲げ熱心に取り組んでいる大学(例えば、金沢工業
大学)も、偏差値以外の物差しでしっかりと評価される時代にもなってきている。
大学関係者は一読すべき本である。
大学の学校運営に携わる経歴を持つ著者が、大学全入時代を迎えた日本の高等
教育の現状や今後の方向性について語った本である。
少子化が進む中で、その現状を知りながらも新たに大学が新設され、私立大学
でも学部や定員を増やす傾向がある昨今。外から見ていると、この傾向は理解
しがたいものがあるし、破綻する大学が多く出てくることは十分に予想される。
しかし、「4年制の私立大学では、約4割で入学者の定員割れに陥っています」
(p. 3)と現状を知ると、その深刻さを痛感せざるを得ない。
本書は、「10年後には100校近い数の大学が消滅しているでしょう」(p. 65)等
と厳しい現状を述べながらも、大学の学長には研究よりも「経営的な視点」が
必要であること、授業料の設定の仕方を明確にすること(それが社会人を取り
込むことにもつながること)、地域のニーズを考えた大学づくりをすること、
そして本書で何度も出てくる「大学のミッション」を明確にした上で初めて教育
が成り立つこと等といった、大学改革の提言を具体的に述べているのが有難い。
大学教員というと研究が求められるのは当然だが、ミッションによっては、
教育能力の方が高く求められる大学があってもいい、という著者の主張は、
全入時代や少子化を考えれば至極真っ当なことであり、実際、近年初年度教育
に力を入れる大学が増えてきたことが、著者の主張の説得性を高めている。
とかく昔の「名実ともに高等教育機関」であった頃の大学像をひきずって閉鎖的
な大学が多いように見えるが、今後しばらくは18歳人口が少ないことは分かって
いることであり、ミッション遂行のために変化していくことが求められるのだろう。
また、実際に、ミッションを掲げ熱心に取り組んでいる大学(例えば、金沢工業
大学)も、偏差値以外の物差しでしっかりと評価される時代にもなってきている。
大学関係者は一読すべき本である。