当時、この原題『
デジタルモンスターゼヴォリューション』という作品は劇場公開される予定で、久々のデジモン映画ということでファンは歓喜したと思いますが、結局は2005年のお正月特番扱いで一部地域のみでテレビ放送されるという、不満の残る形で登場となりました。そのため、もはや見る機会は無いと思っていましたが、同年11月にDVDで販売され、私のように、ようやく見ることのできた方も多いかもしれません。
しかし、この作品の元になった、いわゆる「X抗体デジモン」のストーリー展開によって、これまでのデジモンシリーズの方向性が根本から変わってしまい、それが原因かこれ以降のデジモンシリーズは作中通り、二つの意味で危機に瀕してしまったため、今でもファンの間で評価が分かれるところでしょう。
そんな異分子ならぬ異端児な『ゼヴォリューション』の音楽ですが、それまでのデジモン映画(初代〜フロンティア)がアニメ作品だったのに対し、今作ではフルCG映像作品となり、見た目の印象も変わりました。それに伴い、それまでのバラエティ豊かなデジモンアニメBGMとは異なり、全体的にシリアスにまとめられています。
その重厚な雰囲気のBGMは、作品の根源にある命というテーマはもとより、主人公・ドルモンが己の生存とその身に宿る真実を求め、神と揶揄される巨大な存在に立ち向かうという壮大なシーン、そして、死のふるいにかけられたデジモンたちの末路を描いた悲壮感漂うシーンをも、うまく表現されています。
しかしその反面、それまでのデジモンのアニメシリーズには欠かせなかった、和田光司さんやAiMさんによる主題歌や、デジモン進化の際に流れる挿入歌は今回無し。そのため、アニメシリーズに慣れ親しんでいると、劇中でせっかくデジモンが進化したのにイマイチ盛り上がりに欠け、そういった点で見るとやや残念ではあります。人によっては手抜きと感じるでしょう。ただ、劇中では人間(デジモンで言うところのテイマー)が登場せず、今作は「デジモンとテイマーとの絆」がテーマではないため、意図的に無しにしたのかもしれません。
収録曲の中でも断トツにおススメなのが、メインテーマ的位置づけのTr.1と29。これを聴くためだけでもこのCDを買う価値があります。個人的には、後半戦突入前に流れたTr.12、凶悪な敵の襲来とそれに奮闘する場面のTr.14、そしてTr.24の《
アルファモン登場》は、劇中での直後の「オレの名は
アルファモン」と言うセリフも合わせて、もう一度聴きたくなる1曲。さらに、
アルファモンと
オメガモンがイグドラシル中枢に向かう時に流れるTr.25、
アルファモンらが覚悟を決め、最後の戦いに挑むTr.27が印象深いですね。
…と、なかなかに良曲揃いなのですが、DVD発売後もなかなかCD化されず、そもそもデジモンという作品自体がメディアから消えかかっていた当時、もうサウンドトラックなど発売されるわけがない、と私は思い込んでいたため、最近になってようやくこの存在に気づいたという体たらくでした。
最後に、あえて不満をあげるとするならば、CDの値段が高いというところでしょうか(ディアボロモンの逆襲のサントラは割と安かった気が)。とはいえ、かつてのデジモンの音楽集も同じくらいの値段でしたが、あちらは主題歌と挿入歌のTVサイズが収録されていたため、あまり割高感は感じませんでした。
さらに欲を言えば『デジモンペンデュラムX』の世界観の集大成として、ゲーム『デジモンワールドX』のBGMも収録し、お値段据え置き豪華二枚組みあたりで出して欲しかったところですが、昨今のデジモンの環境を考えると、それは叶わぬ夢ですね…
『ゼヴォリューション』を見た方以外で、このCDに興味がある方がいるかは分かりませんが、amazonにはサンプルも用意されておりますので、ぜひ試しに聴いてみてはいかがでしょうか。