突然ですが、日本は世界の中にある一国です。また、沖縄県は、明治時代以降、日本の中の一つの県にになりました。
このように、世界から日本を、世界から沖縄を、さらには日本から沖縄を考えるような、いわば大きな枠組みから小さな枠組みを考えることは、案外簡単に想像できるのではないでしょうか。
では…その逆に、沖縄から日本や世界を、また、日本から世界を考えることは果たして出来るのでしょうか?
本書『琉球からみた世界史』の一番の目的は、まさにそこにあります。
タイトルの示す通り、この本は、果たして琉球(史)から世界(史)が考えられるのか(みえるのか)ということを、いくつもの方法を用いて検証しようとします。そしてそこから、国際関係を理解するための論理(ロジック)や普遍性を導き出そうとするのです。
例えば、琉球王国は17世紀以降、日本の島津氏や中国王朝(清朝)との間に君と臣という関係を築きます。臣である琉球王国は、正月の挨拶や貢物を捧げるために、君である島津や中国に赴きます。これを「朝貢」と言います。
琉球は19世紀に至るまで、この「朝貢」を通して君の国との国家間関係を安定的に維持していくのですが、では果たして、琉球の他にこういった関係から国家を維持してきた所は存在するのか、それとも、この形は琉球特有のものなのか等を、他国(本書では主にタイ)の事例と比べて検証していきます。
他にも、中国へ渡った琉球人のことや、16世紀以前の琉球王国と日本との関係、『おもろさうし』から考えられる歴史像、さらには、浦賀来航前に琉球に立ち寄ったペリー達の琉球での行動を通して、「琉球」から「世界」を見ていきます。
今まで、世界史から日本史や琉球史をみるような、大から小を見るというやり方は案外なされてきましたが、さて、今回のような小から(特)大をみるというような試みは果たして成功するのでしょうか。
その答えは、本書を書いた人間ではなく、本書を手に取り、本書を一通り読み終えてくれた読者の判断にゆだねられていると思います。学問とは案外、そうやって進歩・発展していくものなのではないでしょうか。
序 三谷 博
1章 「キカイガシマ」海域の考古学―「境界領域」としての奄美群島 高梨 修
2章 古琉球をめぐる冊封関係と海域交流 村井 章介
3章 久米島と琉球国―久米島おもろの世界 吉成 直樹
4章 ラタナコーシン朝初期シャムにみる「朝貢」と地域秩序
―「まるで琉球のようだ」(伊藤博文 一八八八年一月二十三日) 小泉 順子
5章 鄭秉哲の唐旅・大和旅―皇帝と話をした琉球人 渡辺 美季
6章 琉球と朝鮮の儒教 澤井 啓一
7章 ペリー艦隊の琉球来航―西洋の衝撃と対応をめぐって 真栄平 房昭
8章 世界史からみた琉球処分―「近代」の定義をまじめに考える 與那覇 潤
あとがき