ジ、エクストリーム、スキヤキ(Blu-ray版)
主人公らは独身で、居酒屋でバイトしてたり、会社辞めてふらふらしたりしている。けれど、こんな年になっても、男は人生に迷うこともあれば悩むこともある、それはみんな同じ、大人ってナンだろな、なーんていうシンパシーを痛烈に感じさせる映画でしたネ。
人生に行き詰まって、懐古の情に激しく突き動かされた男(井浦新)が、疎遠だった学生時代の友人(窪塚洋介)に会いに行き、その恋人(倉科カナ)やら昔の女友達(市川実日子)を巻き込んで、クルマで海まで小旅行に出掛けるという話。特別な事件が起こるわけでなし、なーんの変哲もない道中をただ淡々と、まったりと、そして人間愛たっぷりにつづっています。
観ていると、日常生活のなかで知らないうちにピンと張りつめていた心の糸がほぐれるのがわかりました。鑑賞後、もっとこの空気に浸っていたい、というか、俺もアイツに連絡してみようかな、という気持ちまで芽生えてました。
あ、当方、登場人物たちとほぼ同世代の、既婚の子持ちです。
いくつかの疑問を観客に投げかけて、それを牽引力にして物語を進める、という構成をとっていますが、明確な答えは用意されていませんので、ここは注意。観客の興味を引きつけ、話を盛りあげるための小道具でしかありません。そこにとらわれすぎると、うちのカミサンのように、エンディングで「はあ?」と眉を寄せるハメになります。
役者がイイ。窪塚洋介さんがイイ。風貌もまなざしも完全に事故前のもの。いまだ若々しくて、キレがある。もっといろいろな作品で彼を見たい。
遅まきながら、この作品をアラフォー男子に強く推します。
※原作も読んでみたいのですが、アマゾンレビューがひとつしかなく、しかも★1個なので、二の足踏んでます。読まれた方、書き込みください^^
人生に行き詰まって、懐古の情に激しく突き動かされた男(井浦新)が、疎遠だった学生時代の友人(窪塚洋介)に会いに行き、その恋人(倉科カナ)やら昔の女友達(市川実日子)を巻き込んで、クルマで海まで小旅行に出掛けるという話。特別な事件が起こるわけでなし、なーんの変哲もない道中をただ淡々と、まったりと、そして人間愛たっぷりにつづっています。
観ていると、日常生活のなかで知らないうちにピンと張りつめていた心の糸がほぐれるのがわかりました。鑑賞後、もっとこの空気に浸っていたい、というか、俺もアイツに連絡してみようかな、という気持ちまで芽生えてました。
あ、当方、登場人物たちとほぼ同世代の、既婚の子持ちです。
いくつかの疑問を観客に投げかけて、それを牽引力にして物語を進める、という構成をとっていますが、明確な答えは用意されていませんので、ここは注意。観客の興味を引きつけ、話を盛りあげるための小道具でしかありません。そこにとらわれすぎると、うちのカミサンのように、エンディングで「はあ?」と眉を寄せるハメになります。
役者がイイ。窪塚洋介さんがイイ。風貌もまなざしも完全に事故前のもの。いまだ若々しくて、キレがある。もっといろいろな作品で彼を見たい。
遅まきながら、この作品をアラフォー男子に強く推します。
※原作も読んでみたいのですが、アマゾンレビューがひとつしかなく、しかも★1個なので、二の足踏んでます。読まれた方、書き込みください^^
愛でもない青春でもない旅立たない (講談社文庫)
自己愛によって濁されていない、うつくしく無駄のないさらりとした文章。水の中に浸かっているような心地よさがある。テンポも良く読みやすい。平凡な大学生の日常と心境に幻想的な夢の世界が折り込まれる。重苦しい主張もテーマもない。ただただ洗練された言葉がひとつの切り取られた世界をつくる。脱力しているといえばいいだろうか。それでいて作品全体に渡ってどこか切なさを漂わせる。純粋に読んで良かったと思わせる何かがある。平凡な大学生をひとときでも経験した人なら誰しも共感できるのではないだろうか。
夏の水の半魚人 (新潮文庫)
小学五年生の夏、少年少女たちの物語―
最初から、最後まで淡々と進んでいく。展開していくというよりは進行していくと言ったほうが近い。そのぶんラストシーンの加速が気持ちよかった。
情景も心情も、複雑に描写されることはほとんどない。短い文節でリズムを作ったり、小学生の感性のまま言葉が紡がれていたり、小説にしては奇妙なテンポ感があった。また、小説を読んでいると難しい言葉に出くわすことも間々あるが、この作品ではそういったことがなかった。読みづらくもあり、解りやすくもあった。
「いろんなことを知れば知るほど、いろんなことがつまらなくなる」
刺激的だったはずの秘密や魔法も、自分が主人公ではないという苛立ちも孤独感も、現実と幻想の狭間に立っているような感覚も、大人になるほどに、その神秘性は失われてしまう。そして気付いたときには取り戻せなくなっている。
本作は、あの感覚がまだリアルだった時代を、「切ない」という言葉の意味も知らない子供の目線のまま描き切っている。不思議なフィードバック感。何とも得がたい経験をした気がする。
軽く狂っている母親だけは、大人になっても神話の中に取り残されたようだった。彼女はまだ魔法を信じているのだろうか。だとしたらやはり不気味だけれど、少しだけ羨ましくも思えた。
最初から、最後まで淡々と進んでいく。展開していくというよりは進行していくと言ったほうが近い。そのぶんラストシーンの加速が気持ちよかった。
情景も心情も、複雑に描写されることはほとんどない。短い文節でリズムを作ったり、小学生の感性のまま言葉が紡がれていたり、小説にしては奇妙なテンポ感があった。また、小説を読んでいると難しい言葉に出くわすことも間々あるが、この作品ではそういったことがなかった。読みづらくもあり、解りやすくもあった。
「いろんなことを知れば知るほど、いろんなことがつまらなくなる」
刺激的だったはずの秘密や魔法も、自分が主人公ではないという苛立ちも孤独感も、現実と幻想の狭間に立っているような感覚も、大人になるほどに、その神秘性は失われてしまう。そして気付いたときには取り戻せなくなっている。
本作は、あの感覚がまだリアルだった時代を、「切ない」という言葉の意味も知らない子供の目線のまま描き切っている。不思議なフィードバック感。何とも得がたい経験をした気がする。
軽く狂っている母親だけは、大人になっても神話の中に取り残されたようだった。彼女はまだ魔法を信じているのだろうか。だとしたらやはり不気味だけれど、少しだけ羨ましくも思えた。