犬―他一篇 (岩波文庫)
保坂和志なら「犬に人間の勝手なレトリックを押し付けるんじゃない」というかどうかは定かではないが、『銀の匙』のリリカルな作家の人間のおぞましい欲を暴いた傑作である。復刊を切に望む。
日本合唱曲全集「雨」多田武彦作品集
柳川風俗詩、父のいる庭、中勘助の詩より、雪明りの路、雨などなど、多田作品はやはり男声合唱のバイブルである。
関西学院、同志社、慶応などの男声合唱団は、世界的レベルでもあった。
もう古典となり余り歌われなくなっているかもしれないが、日本の叙情を余すところなく伝える多田作品を是非歌い継いで行ってもらいたいものだ。
関西学院、同志社、慶応などの男声合唱団は、世界的レベルでもあった。
もう古典となり余り歌われなくなっているかもしれないが、日本の叙情を余すところなく伝える多田作品を是非歌い継いで行ってもらいたいものだ。
銀の匙 (角川文庫)
ほんとうに記憶だけで書いたのだろうか。
大人の書いた子ども、ではなく、子どもそのもの──
本書はまるで、小さい頃に綴っていた日記を久しぶりに
開いたような懐かしく繊細で清浄な光に満ちている。
繊細であればあるだけ人一倍被り感じるものの哀れに
始終涙を浮かべる少年は周囲の野卑な者の目には
確かに煩わしく見えることだろう。
そしてそれが為にますます人嫌いや憂鬱症に拍車をかけ、
うちなるもの・儚いもの・美しいものに心惹かれ
耳を傾けていく彼の心のうちが薄玻璃の花のように
痛々しく愛おしく感ぜられる。
文章も美しく、自然で衒いがない。
仲良しの女の子が遊びにくる時の足音「ぽくぽくちりちり」や、
鳥が飛び立つ時の羽音「たおたお」など、
擬音語や擬態語も澄んでいる。
いつか全文を手書きで書き写してみたいと思う。
大人の書いた子ども、ではなく、子どもそのもの──
本書はまるで、小さい頃に綴っていた日記を久しぶりに
開いたような懐かしく繊細で清浄な光に満ちている。
繊細であればあるだけ人一倍被り感じるものの哀れに
始終涙を浮かべる少年は周囲の野卑な者の目には
確かに煩わしく見えることだろう。
そしてそれが為にますます人嫌いや憂鬱症に拍車をかけ、
うちなるもの・儚いもの・美しいものに心惹かれ
耳を傾けていく彼の心のうちが薄玻璃の花のように
痛々しく愛おしく感ぜられる。
文章も美しく、自然で衒いがない。
仲良しの女の子が遊びにくる時の足音「ぽくぽくちりちり」や、
鳥が飛び立つ時の羽音「たおたお」など、
擬音語や擬態語も澄んでいる。
いつか全文を手書きで書き写してみたいと思う。
日本合唱曲全集 多田武彦作品集
25年前、大学の合唱サークルでタダタケに出会い、男性合唱にはまりました。当時愛聴したLPが懐かしく、今回このCDを求めましたが、色んな年代のグリークラブが演奏しており、懐かしくかつ新鮮に楽しんで聞くことができました。
各グリーの出来映えも満足のできる演奏で、格調高く仕上がっており、世代、大学の差を越えて楽しめる一枚だと思います。
日本語の母音のもつ曖昧さに、西洋との違いを感じる部分がありますが、この課題に、3人の指揮者と3グリー5世代の演奏は、見事に統一された個性を聴かせてくれています。
各グリーの出来映えも満足のできる演奏で、格調高く仕上がっており、世代、大学の差を越えて楽しめる一枚だと思います。
日本語の母音のもつ曖昧さに、西洋との違いを感じる部分がありますが、この課題に、3人の指揮者と3グリー5世代の演奏は、見事に統一された個性を聴かせてくれています。