現在、上方落語界を第一線でけん引する6人の噺家に、落語作家・小佐田定雄氏がインタビューしてまとめたもの。1952年生まれの編者にとって、鶴瓶師、南光師、文珍師、ざこば師は、ほぼ同世代。福團治師、仁鶴師はひとつ上の世代ということになるが、いずれも編者が多感な青春時代に憧れた人たちである。テレビやラジオでも活躍し、当時の若者たちに強い影響を与えた面々だ。
同じ関西弁を操っていても、それぞれの口調や醸し出される雰囲気、トータルでの個性のようなものはまったく異なる。その辺りの微妙なニュアンスまできちんと押さえたまとめ方がされていることに、大いに感心した。小佐田氏らしい丁寧な仕事だなあ、上方落語への愛情があふれているなあ、とうれしくなる。
それだけに瑕瑾ともいうべき記述ミスが、逆に気になった。ひとつどうしても看過できないミスは、仁鶴師のインタビュー中の、「古典は落語会ではやらずに、
演芸場でやるようにしてました」というところ。これはどう読んでも「落語会」と「
演芸場」がテレコである。その後で、「お客さんの気さえつかめたら
演芸場でも古典落語をやってましたですよ。やれんことはないんです」とあって、やはり先の記述がうっかりミスであったことが分かる。玉に瑕、とはこういうことを言うのだろう。
しかしトータルとしては実に楽しい読み物で、申し分ない。内弟子時代の話、それぞれの師匠連(松鶴、文枝、米朝、春團治の四天王や枝雀)とのエピソード、まさに現役バリバリの今現在の落語に対する思い、そしてこれからの若手たちへのメッセージなど、「現在・過去・未来」に目配りをしたバランスのよいインタビューになっている。シュッとしているというか、端正な作りの本という印象である。