正攻法な場面構成を無視した複雑なストーリー展開に話題が集中した、デイヴィッド・リンチ監督の現時点での最高傑作。
その難解さは半端ではなく、1度や2度見たくらいでは完全な解釈など到底不可能だ。
これほど「繰り返し何度も見たい」という衝動に駆られる作品は、そうお目にはかかれない。
巷では、「"現実"と"夢"の2部構成の作品だ」「いや、"現実"と"夢"と"夢の夢"の3部構成だ」など、場面構成を巡って様々な解釈が飛び交っているが、監督自身は「見る者それぞれが答えを出してくれればよい」と公言している。
我々、見る側としては、見るたびに新たな発見をしていけばよいのではないか、また、それがこの作品の正しい楽しみ方だと思われてならない。
優??ているのは、複雑なストーリー展開だけではない。
各シーンの美しさ、先を期待せずにはいられない見事な演出、俳優陣の優れた演技、そして完成度の高い脚本など、傑出した部分が多々あり、見応えのある出来となっている。
何よりもストーリーそのものが非常によい。
成就することのない愛に苦しむナオミ・ワッツ演じるダイアンの哀しみが、痛切に観客に伝わってくる。
悲しい女の嫉妬と情念に
ハリウッドにおける映画制作の暗部が絡み、まさに出色の出来だ。
ナオミ・ワッツとローラ・エレナ・ハリングには、惜しみなく拍手を送りたい。