赤い橋の殺人 (光文社古典新訳文庫)
フランス本国で忘れられた作家だったシャルル・バルバラが、本書の訳者の研究が契機となって復活したという。作家の生年もその研究によって改められた。研究を発表した1980年代前半にはフランス語圏でインターネット検索しても、誤った記述を含む短い文書が2〜3件ヒットするに過ぎなかったらしい。今ではネット上の情報も増え、仏国の教科書にも載っているとのことだ。2000年代になるとスペイン語訳と英語訳が出た。(「訳者あとがき」)
本作品は日本では初訳となる由。訳文は硬めで、それがいかにもヨーロッパの夜な雰囲気を出しているようだ。
「訳者あとがき」で「次作の出版に向かって精進するつもり」と記している。楽しみに待ちたい。
詩人のボードレールとの親交もあったバルバラは、エドガー・アラン・ポーの翻訳をしたとのことだが、恐怖小説、探偵小説の要素を本作品に取り入れている。
また、同時代の作家にロシアのドストエフスキーがいる。帯の推薦文でロシア文学の亀山郁夫が「これぞフランス版『罪と罰』だ!」と言っている。(ちなみに『赤い橋の殺人』は安政年間、『罪と罰』は慶応年間)
確かに、道徳なんか妄想に過ぎないと自我を肥大させる一方で、犯罪の発覚にヒステリックに怯える性格は、ラスコーリニコフを先取りしている。
ベートーヴェンの交響曲が耳元で鳴り響くような長広舌もドスト的。
しかし、主人公クレマンはラスコーリニコフよりも皮肉な運命をたどる。フランスには、身を投げ出して接吻すれば受け入れてくれるようなロシア的な大地はないのだ。
とりわけ、「全き告白」の章に描かれる男と女の孤独さはきわめて象徴的。神の死を宣告したニーチェやハイデガーが捉えた、人間の寄る辺のなさを示している。
その感覚は映画「パパってなに?」をニセ父親の視点で見たときの感じに似ているかもしれない。
いろんな意味で、159年の時を経て届いた風が身を引き締めてくれる。
本作品は日本では初訳となる由。訳文は硬めで、それがいかにもヨーロッパの夜な雰囲気を出しているようだ。
「訳者あとがき」で「次作の出版に向かって精進するつもり」と記している。楽しみに待ちたい。
詩人のボードレールとの親交もあったバルバラは、エドガー・アラン・ポーの翻訳をしたとのことだが、恐怖小説、探偵小説の要素を本作品に取り入れている。
また、同時代の作家にロシアのドストエフスキーがいる。帯の推薦文でロシア文学の亀山郁夫が「これぞフランス版『罪と罰』だ!」と言っている。(ちなみに『赤い橋の殺人』は安政年間、『罪と罰』は慶応年間)
確かに、道徳なんか妄想に過ぎないと自我を肥大させる一方で、犯罪の発覚にヒステリックに怯える性格は、ラスコーリニコフを先取りしている。
ベートーヴェンの交響曲が耳元で鳴り響くような長広舌もドスト的。
しかし、主人公クレマンはラスコーリニコフよりも皮肉な運命をたどる。フランスには、身を投げ出して接吻すれば受け入れてくれるようなロシア的な大地はないのだ。
とりわけ、「全き告白」の章に描かれる男と女の孤独さはきわめて象徴的。神の死を宣告したニーチェやハイデガーが捉えた、人間の寄る辺のなさを示している。
その感覚は映画「パパってなに?」をニセ父親の視点で見たときの感じに似ているかもしれない。
いろんな意味で、159年の時を経て届いた風が身を引き締めてくれる。
エム・バタフライ【字幕ワイド版】 [VHS]
デイヴィッド・クローネンバーグ監督作品。
いろいろと酷評されているらしいんですが...
ジェレミー・アイアンズのファンでキャスト買いした身としては、
「Mr破滅愛」の名にふさわしい、溺れっぷりが見事な作品だと思います。
ジェレミー・アイアンズの仕草とか、表情とか、
眼差しとか、キスの仕方とか...etc
彼の”恋する切ない表情”は、他の作品と比べても群を抜いていると思います。
その辺を楽しむ映画だと思っています。
たぶんDVDやBlu-rayにはならなそうなので、このVHSはある意味貴重かも。
いろいろと酷評されているらしいんですが...
ジェレミー・アイアンズのファンでキャスト買いした身としては、
「Mr破滅愛」の名にふさわしい、溺れっぷりが見事な作品だと思います。
ジェレミー・アイアンズの仕草とか、表情とか、
眼差しとか、キスの仕方とか...etc
彼の”恋する切ない表情”は、他の作品と比べても群を抜いていると思います。
その辺を楽しむ映画だと思っています。
たぶんDVDやBlu-rayにはならなそうなので、このVHSはある意味貴重かも。