さよなら、ヘロン (Canna Comics)
素敵な表紙とハヤカワノジコ先生推薦との帯に惹かれて購入しましたが、私にはあまり合いませんでした…。二人の共依存的な関係や話の筋自体はとても好きな部類なのですが、全編通してポエム調の心情描写がいちいちくどく感じてしまいました;個人的に、読む人を選ぶというか、好き嫌いが結構分かれる作品ではないかなぁと思います。
ヘロン&シングル(紙ジャケット仕様)
ブリティッシュ・フォークと聞くとなんか難そう、暗そうとかよく分らない印象があってどうも近づきがたい雰囲気を感じてしまってほとんど縁がなかったのですけれど、そんな文脈とは全く関係のないところから彼らの音楽に出会い、そしてこんなに親しみやすくてカジュアルで暖かなこのアルバム(1970年発表の1st)がブリティッシュ・フォークに分類されているなら、ブリティッシュ・フォークの深遠なる森に是非入らせていただきたい、と思ってしまいました。迷って出られなくなってもかまいません(笑)。
スタジオ・ミュージシャンを使ったりして作り上げられた非常に濃密な世界というのも、それはそれで完成度の高さなど素晴らしいとは思いますけれど、青い空の下アコギ1本持ち出して、コードをかき鳴らし、不安ながら声を合わせて歌う。そんな隙だらけの世界に僕はとてつもない魅力を感じてしまいます。手触りというか、ぬくもりというか、体温のような暖かさと空気のおいしさ、なんて。実際、青空の下のレコーディングをしたということで、鳥のさえずりなんかも曲間に入ってきたりして、牧歌的な雰囲気をかもし出すのに一役買ってはいますが、所詮そんなことは、この素晴らしいアルバムを彩るサイドストーリーのひとつに過ぎないとまで思っています。
king of convenience、belle&sebastian、ジェイムズ・イハ、渚にて、そしてTFC「13」の頃のシングルB面の世界に共感できる(まあ、どうしてもS&Gの陰がちらついてしまうのも事実なんですけれど)僕と同じアンテナを持っている人なら、間違いなくジャスト。今年最高の収穫であり、文句ないベストアルバム。これから先もずっとこんな作品と出会える、そんなことを考えると年齢を重ねていくことも悪くない、なんて、こんなサウンドなのに、どうしても聴き入ってしまってベッド・ミュージックになりえないこのアルバムを聞きながら、冴えまくってしまった頭を抱えて思ったりしたのであります。
スタジオ・ミュージシャンを使ったりして作り上げられた非常に濃密な世界というのも、それはそれで完成度の高さなど素晴らしいとは思いますけれど、青い空の下アコギ1本持ち出して、コードをかき鳴らし、不安ながら声を合わせて歌う。そんな隙だらけの世界に僕はとてつもない魅力を感じてしまいます。手触りというか、ぬくもりというか、体温のような暖かさと空気のおいしさ、なんて。実際、青空の下のレコーディングをしたということで、鳥のさえずりなんかも曲間に入ってきたりして、牧歌的な雰囲気をかもし出すのに一役買ってはいますが、所詮そんなことは、この素晴らしいアルバムを彩るサイドストーリーのひとつに過ぎないとまで思っています。
king of convenience、belle&sebastian、ジェイムズ・イハ、渚にて、そしてTFC「13」の頃のシングルB面の世界に共感できる(まあ、どうしてもS&Gの陰がちらついてしまうのも事実なんですけれど)僕と同じアンテナを持っている人なら、間違いなくジャスト。今年最高の収穫であり、文句ないベストアルバム。これから先もずっとこんな作品と出会える、そんなことを考えると年齢を重ねていくことも悪くない、なんて、こんなサウンドなのに、どうしても聴き入ってしまってベッド・ミュージックになりえないこのアルバムを聞きながら、冴えまくってしまった頭を抱えて思ったりしたのであります。
窓際のスパイ (ハヤカワ文庫NV)
失敗や不祥事を起こして閑職に追われたスパイの溜まる部署。
これだけで、もう一本取ったようなものですね。
そんな泥沼に沈んだ奴らが、ある事件をきっかけに再浮上をはかる物語です。
著者は相当の実力者。
この作品で英国推理作家協会のスティールダガー賞を受賞し、続編でゴールドダガー賞を連続受賞。
次作の翻訳にも期待したいです。
これだけで、もう一本取ったようなものですね。
そんな泥沼に沈んだ奴らが、ある事件をきっかけに再浮上をはかる物語です。
著者は相当の実力者。
この作品で英国推理作家協会のスティールダガー賞を受賞し、続編でゴールドダガー賞を連続受賞。
次作の翻訳にも期待したいです。
Upon Reflection: The Dawn Anthology
英国のフォークバンド、ヘロンの1st、2ndカップリング。1970/72作
鳥のさえずりが聞こえる。のんびりとした英国の田園風景が目に浮かぶ。
野外録音で作られた彼らのアルバムは、どこにでもありそうな素朴なフォークなのだが、
この自然と一体となったようなおおらかさは、なんとも耳に優しい。
アコーステイックギターにマンドリン、オルガンの音色すらもやわらかだ。
マイルドな歌声に耳を傾けつつ、おだやかな風や日差しすらも感じる気がする。
2ndの方はややカントリー的なフォークロックとなっていて聴きやすいが、
牧歌的な魅力という点では、やはりほのぼのとした1stのサウンドがよろしい。
鳥のさえずりが聞こえる。のんびりとした英国の田園風景が目に浮かぶ。
野外録音で作られた彼らのアルバムは、どこにでもありそうな素朴なフォークなのだが、
この自然と一体となったようなおおらかさは、なんとも耳に優しい。
アコーステイックギターにマンドリン、オルガンの音色すらもやわらかだ。
マイルドな歌声に耳を傾けつつ、おだやかな風や日差しすらも感じる気がする。
2ndの方はややカントリー的なフォークロックとなっていて聴きやすいが、
牧歌的な魅力という点では、やはりほのぼのとした1stのサウンドがよろしい。
ギル・スコット・ヘロン:ブラック・ワックス~ライブ・イン・ワシントンD.C.~ [DVD]
ギル・スコット・ヘロンは、まずこっちを笑わせてくれる。
そして笑ってリラックスした僕らに、グサリと真実を突きつけてくる。
こんな詩を作ったんだけどね、とまるで友達に自作の詩を聞かせるノリでキツい詩を朗読してくれる。
この映像では詩を朗読するその表情がよく映ってて、表情を見ながら聴いているとさらにパワフルに伝わってくる。
(このDVDは字幕がとてもいい。ハズしてない。そしてラジカセを背負ってワシントンの川、ポトマック川?の遊歩道をユラユラ歩くシーンが楽しい)
それからバンドの演奏が素晴らしい。音声はモノラルだけど、聴いているうちにそれがあまり問題でなくなってくる。グルーヴが気持ちよくて、気がついたら身体が勝手に快感でゆれている(笑)。これは凄いことだと思う。これが本物ということだろう。(モノラルだけど、ベースの動きやドラムス、ホーン、ギター、どれもよく聞こえる)
(最近のファンクバンドの演奏も聴くようにしているけれど、聴いてみると演奏は凄くタイトでキレがよく、気合入ってたりハイスピードだったりするけど、聴いていて身体が勝手に揺れはじめるこのバンドのような感じは、、、あまりないような、、、。それはそれで今のファンクなのかもしれないけど、このバンドのサウンドは、ゆるいのにタイト、タイトなのにゆるくて快感で、その矛盾がオーガニックというか、気持ちいい。特に、バンドを演っている人はぜひこれ聴いてみてほしいです)
ファンクやブラックミュージックって、カッコよくキメるには音楽的な才能やテクニックが必要だろうと思う。
その上ただカッコよくキメるだけでもまだ何か物足りなかったり。
このバンドには、才能や技術のほかに、演奏へ向かう強烈な動機や衝動がある気がする。
上手くいえない、でも観て、聴いて感じて欲しい。
「なんで演奏するのか」「なんで演奏したいのか」
この人達にはそれがあったと思う。それで、このサウンドは30年近く経ったいまも生々しい存在感を放ってるし、心にひっかかるから、どうしても「消費」して忘れることができない。(どの曲も、サウンドはとてもポップだ。へんな言い方だが、ジャミロクワイが、、、大人になったような。このバンドの特徴は、後味が尾をひくこと)
モノラルだし、ちょっと高かったけど、これは観て聴いて楽しめて、カッコよく、そしてシリアスにしてくれるライブ。
作品としても、映像処理にコンピュータが使われるようになる以前のこの映像が、今となってはかえって新鮮ですらある。
そして字幕が本当にいい。(演奏や朗読のテンポに遅れずに、詩の内容が最大限理解できるように日本語字幕が出てくる。味わうには英語そのものに耳を傾けるのがいいけど、この字幕は有り難い)
で、肝心のポエトリーについては(僕自身は相当心を動かされたけれど、)アフロアメリカンとしてダイレクトにアメリカという国の核心に迫る内容なので、黒人でもアメリカ人でもない僕は知ったかぶりして語れない気がする。けれど目の前や自分のいる社会に問題があるときこうして歌う人間、黙っていない人間、笑わせながらしぶとくパフォームする人間がいるのを見てると元気湧いてしまう。
音楽のジャンルはだいぶ違うけれど、この人、ギル・スコット・ヘロンを見ていると、なぜかエリック・ドルフィーを思い出す − 見るからにカリスマチックで「帝王」といわれた(日本でだけ?)マイルス・デイヴィスでもなく、宗教家・哲学者のようだったジョン・コルトレーンでもなく、マッチョでゴッドファーザーだったジェイムズ・ブラウンでもなく、ひたすらセンシュアルだったマーヴィン・ゲイでもなく、どこまでも優しかったカーティス・メイフィールドでもなく。なんというかこの人には、いい意味でのイジワルさやユーモアを併せ持った正気、クールネス、ダンディズムを感じる。そして、「俺?いや、平凡な男だよ」とスッとぼけたカオでふらりとやってきて油断させ、グサリ!とやって去っていく感じは、必殺仕事人の中村主水にも通じるような、、、。どこまでも正気で、やることはハズさない、しかし瞳の奥に見えるのは本当の怒り − それがギル・スコット・ヘロンという人の個性・魅力なのかもしれない。
ちなみにこのDVDを観てギル・スコット・ヘロンの近況は? と思ってウィキペディア(英語版)を見てみたらいま60歳、そして近々新譜をリリースする(!)というので驚いた。30年ぶりのアルバムだという。(その新譜の出る前のタイミングでこのDVDがリリースされたということかな?)
オバマが大統領になった21世紀のアメリカでこの詩人が何を見つめ、何を歌うのか。その新譜も僕は楽しみにしている。
★は僕としては5つでもいいけれど、これを読んだ人がまず4つくらいの期待を持って観て「いや、これは★5つでしょ」と思ったほうがいいかなと思うのでなんとなく4つにしています。以上、読んでくれてたらありがとう。まとまりのないレビューを書いてしまったけどギル・スコット・ヘロン、大好きだ。この人の音楽には、ジャズ、ソウル、ファンク、ラテンのいいところが入っていて、そしてフュージョンやスムース・ジャズと違う方向の、、、音楽の塊(たぶんブルース)が芯に息づいてる。
あとよく、彼がその後のラップに与えた影響も大きい、と言われるけれど、それについては他の人の意見を聞いてみたい。
(僕自身はラップも好きだけど、)こうして生演奏とボーカルでライブをしたギル・スコット・ヘロンと、その後〜現在のラップのあいだには、どこがで断絶があったような気がしている。(どちらも、根底に怒りや悲しみがあったとしても)おそらく、白人との向き合い方や、問題を突き詰めるのか、怒りを炸裂させるのかという点、そして「自分」や「自分達」が何者であるかといった点において。
そして笑ってリラックスした僕らに、グサリと真実を突きつけてくる。
こんな詩を作ったんだけどね、とまるで友達に自作の詩を聞かせるノリでキツい詩を朗読してくれる。
この映像では詩を朗読するその表情がよく映ってて、表情を見ながら聴いているとさらにパワフルに伝わってくる。
(このDVDは字幕がとてもいい。ハズしてない。そしてラジカセを背負ってワシントンの川、ポトマック川?の遊歩道をユラユラ歩くシーンが楽しい)
それからバンドの演奏が素晴らしい。音声はモノラルだけど、聴いているうちにそれがあまり問題でなくなってくる。グルーヴが気持ちよくて、気がついたら身体が勝手に快感でゆれている(笑)。これは凄いことだと思う。これが本物ということだろう。(モノラルだけど、ベースの動きやドラムス、ホーン、ギター、どれもよく聞こえる)
(最近のファンクバンドの演奏も聴くようにしているけれど、聴いてみると演奏は凄くタイトでキレがよく、気合入ってたりハイスピードだったりするけど、聴いていて身体が勝手に揺れはじめるこのバンドのような感じは、、、あまりないような、、、。それはそれで今のファンクなのかもしれないけど、このバンドのサウンドは、ゆるいのにタイト、タイトなのにゆるくて快感で、その矛盾がオーガニックというか、気持ちいい。特に、バンドを演っている人はぜひこれ聴いてみてほしいです)
ファンクやブラックミュージックって、カッコよくキメるには音楽的な才能やテクニックが必要だろうと思う。
その上ただカッコよくキメるだけでもまだ何か物足りなかったり。
このバンドには、才能や技術のほかに、演奏へ向かう強烈な動機や衝動がある気がする。
上手くいえない、でも観て、聴いて感じて欲しい。
「なんで演奏するのか」「なんで演奏したいのか」
この人達にはそれがあったと思う。それで、このサウンドは30年近く経ったいまも生々しい存在感を放ってるし、心にひっかかるから、どうしても「消費」して忘れることができない。(どの曲も、サウンドはとてもポップだ。へんな言い方だが、ジャミロクワイが、、、大人になったような。このバンドの特徴は、後味が尾をひくこと)
モノラルだし、ちょっと高かったけど、これは観て聴いて楽しめて、カッコよく、そしてシリアスにしてくれるライブ。
作品としても、映像処理にコンピュータが使われるようになる以前のこの映像が、今となってはかえって新鮮ですらある。
そして字幕が本当にいい。(演奏や朗読のテンポに遅れずに、詩の内容が最大限理解できるように日本語字幕が出てくる。味わうには英語そのものに耳を傾けるのがいいけど、この字幕は有り難い)
で、肝心のポエトリーについては(僕自身は相当心を動かされたけれど、)アフロアメリカンとしてダイレクトにアメリカという国の核心に迫る内容なので、黒人でもアメリカ人でもない僕は知ったかぶりして語れない気がする。けれど目の前や自分のいる社会に問題があるときこうして歌う人間、黙っていない人間、笑わせながらしぶとくパフォームする人間がいるのを見てると元気湧いてしまう。
音楽のジャンルはだいぶ違うけれど、この人、ギル・スコット・ヘロンを見ていると、なぜかエリック・ドルフィーを思い出す − 見るからにカリスマチックで「帝王」といわれた(日本でだけ?)マイルス・デイヴィスでもなく、宗教家・哲学者のようだったジョン・コルトレーンでもなく、マッチョでゴッドファーザーだったジェイムズ・ブラウンでもなく、ひたすらセンシュアルだったマーヴィン・ゲイでもなく、どこまでも優しかったカーティス・メイフィールドでもなく。なんというかこの人には、いい意味でのイジワルさやユーモアを併せ持った正気、クールネス、ダンディズムを感じる。そして、「俺?いや、平凡な男だよ」とスッとぼけたカオでふらりとやってきて油断させ、グサリ!とやって去っていく感じは、必殺仕事人の中村主水にも通じるような、、、。どこまでも正気で、やることはハズさない、しかし瞳の奥に見えるのは本当の怒り − それがギル・スコット・ヘロンという人の個性・魅力なのかもしれない。
ちなみにこのDVDを観てギル・スコット・ヘロンの近況は? と思ってウィキペディア(英語版)を見てみたらいま60歳、そして近々新譜をリリースする(!)というので驚いた。30年ぶりのアルバムだという。(その新譜の出る前のタイミングでこのDVDがリリースされたということかな?)
オバマが大統領になった21世紀のアメリカでこの詩人が何を見つめ、何を歌うのか。その新譜も僕は楽しみにしている。
★は僕としては5つでもいいけれど、これを読んだ人がまず4つくらいの期待を持って観て「いや、これは★5つでしょ」と思ったほうがいいかなと思うのでなんとなく4つにしています。以上、読んでくれてたらありがとう。まとまりのないレビューを書いてしまったけどギル・スコット・ヘロン、大好きだ。この人の音楽には、ジャズ、ソウル、ファンク、ラテンのいいところが入っていて、そしてフュージョンやスムース・ジャズと違う方向の、、、音楽の塊(たぶんブルース)が芯に息づいてる。
あとよく、彼がその後のラップに与えた影響も大きい、と言われるけれど、それについては他の人の意見を聞いてみたい。
(僕自身はラップも好きだけど、)こうして生演奏とボーカルでライブをしたギル・スコット・ヘロンと、その後〜現在のラップのあいだには、どこがで断絶があったような気がしている。(どちらも、根底に怒りや悲しみがあったとしても)おそらく、白人との向き合い方や、問題を突き詰めるのか、怒りを炸裂させるのかという点、そして「自分」や「自分達」が何者であるかといった点において。