「くも膜下出血」のすべて (小学館101新書)
脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に代表されるが、「くも膜下出血」は脳内の太い血管にできた動脈瘤が破裂し、脳を覆う薄い膜の「くも膜」の間のくも膜下腔で起きる出血。出血が起きると一気に広がり、死亡率が圧倒的に高い。脳血管障害は生活習慣病で、肥満、高血圧、糖尿病、高コレステロールによる脂質異常と、ここまで本書で知れば、日頃の摂生に十分に資する。 くも膜下出血とは、脳卒中の約10%を占め、原因として脳動脈瘤の破裂が8〜9割、脳動脈瘤は日本人の2〜3%が持ち、破裂率は年間0.7〜2.0%ということだ。 くも膜下出血は「ハンマーで殴られたような」「今まで経験したことのない」突然の頭痛となるから怖い。比較的若い(60歳以下)発症で、項部硬直(頭のうなじ部分が突っ張ったような痛み・硬直)で痙攣する。その症状で直ぐに救急車だ。発症は脳血管が弱い日本人とフィンランド人が最多だ。 危険因子としては喫煙習慣、高血圧、1合以上の飲酒の順で危険倍率が増え、痩せていて、比較的若く、過度の喫煙し、高血圧で、過度の飲酒者となれば最悪で、リスクはかなり高い。また1親等内の近親者で脳動脈瘤患者がいれば更にリスクは高まる。 その他の病気として、無症候性脳梗塞、無症候性脳出血、未破裂脳動脈瘤、一過性脳虚血発作、もやもや病、脳動脈奇形、海綿状血管腫の解説もある。 本書の第1、2章は基礎知識として非常に参考になるが、第3章「脳動脈瘤が破裂したら」と第4章「未破裂脳動脈瘤をどうするか」は、手術法、研究発表等々の専門的記述が多く、一般読者向けの内容としては疑問だ。 また最終の第6章「いざという時に備える」として、脳ドックの活用、危険信号チェックポイントが有るが各1ページで、手抜きと言わざるを得ない。「おすすめ脳神経外科専門医一覧」として、全国42の病院名、42人の医師名が掲載されている。素晴らしいと思った一方、例えば東京23区内はたったの6病院、全てが著者・堀智勝先生の関係する機関だ。東京大学医学部附属病院(出身校)、森山記念病院(名誉院長)、東京クリニック(所属Dr.)、東京労災病院(診療科顧問)、東京女子医大病院と同東医療センター(前教授)というリストアップは、かなり身内に偏ったか。 以上備忘録まで。