ロマン・ポランスキーの吸血鬼 [DVD]
'90年代の後半に、ヴァンパイア映画の中で起こった、密かな潮流がありました。それは「スラヴ吸血鬼源流説」です。『ナディア』『ドラキュリア』『ブレイド』といった作品がそうで、インディペンデント系からハリウッド娯楽作まで同時多発的に起こり、吸血鬼映画好きには嬉しいことでした。
「スラヴ吸血鬼源流説」― 吸血鬼のルーツは東欧世界にある、という説は民俗学の世界では昔からあったものですが、それは上記の映画を製作したスタッフたちが、真に「吸血鬼」というキャラクターを愛している事の表れ、そして新たな方向性を模索しようとする流れだったのですが、悲しいことに一過性のものとして、いつの間にか立ち消え、映画の中の吸血鬼は再びステレオタイプのキャラクターに戻ってしまい(『僕のエリ』のような、数少ない良作を除いて)今に至ります。
前段が長くなって申し訳ありませんが、本筋に入る前にもう一つ語っておきたい事があります。それはキャラクターとしての「ドラキュラ」の起源について。イギリスのブラム・ストーカーという作家が、実在したワラキアの串刺し公ヴラド・ツェペシュをモデルに創った事は有名ですが、吸血鬼=貴族というイメージが確立されたのは、実はこの小説によって、なのです。
ヨーロッパの民間伝承の中にルーツを求めていくと、もともと吸血鬼は、教会の洗礼を受けることができなかった貧しい人たちや、異教徒が死後蘇って生き血を求める・・・というものです。ではなぜ、ストーカーは「貴族」という飛躍したイメージを与えたのか。これまた'90年代後半に、わが国で丹治愛氏という英文学者が画期的な解釈を「吸血鬼ドラキュラ」にもたらします。
「吸血鬼ドラキュラ」は「侵略小説」。この小説が書かれた背景には、当時(19世紀末)のイギリス社会が抱えていたある集団ヒステリーがあります。それは、「英仏海峡トンネル建設計画」。ドーバー海峡によって隔てられてきた、ヨーロッパ諸国からの侵略が、トンネルが建設されることで容易になってしまう ― 英国社会が陥った恐怖から、「侵略小説」というジャンルが誕生します。H.G.ウェルズの「宇宙戦争」そしてB.ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」も、この系譜に属する物語なのです。ヨーロッパの奥地からやってきた「貴族」が、吸血行為によって、イギリス人たちを次々と吸血鬼に変えていく ― ここに「ヨーロッパによるイギリス侵略」に対する恐怖が暗示されているというのです。
そして、この小説が創り出した吸血鬼=貴族のイメージが一人歩きして、今に至るのです。
ポランスキーの『吸血鬼』はホームビデオの普及・ビデオレンタルの黎明期だった'80年代、「風と共に去りぬ」や「サウンド・オブ・ミュージック」といった名作中の名作しかレンタル店に置いてなった時代から、借りて観ることができた数少ない吸血鬼映画のソフトでした。そしてこの映画を筆者がはじめて観た高校生当時、この映画には他の吸血鬼映画、たとえばハマープロ製作の作品とは違った雰囲気がある、と感じました。その当時はその「雰囲気」の正体が何なのか判るわけもなく、それに気づくのはずっと先の事になるのですが、それこそまさにスラヴ世界=「東欧」の土着的イメージだったのです。ポランスキーとジャック・マクゴーラン演じる吸血鬼ハンターのコンビが泊まる宿や原野の風景、人物の名前などは東欧のイメージで、ここに純正イギリス製作のハマーホラーとは一線を画す世界観が確立されているのです。
そこには、ポーランド人であるポランスキーならではのこだわりがあった事は間違いありません。なぜならポーランドは、東欧世界の中でもスラヴ族のまさにルーツ、「原故郷」と言われる地域の一部なのです。
この映画は、吸血鬼もののパロディー、一種のコメデイー映画として評価されています。しかしポランスキーが描こうとしたのは単なるパロディではなく、貴族というキャラクターに変えられてしまった吸血鬼に対する、皮肉ともいえるカリカチュアだと思うのです。この映画の中に登場する吸血貴族たちが、舞踏会で着る衣装。それはドライフラワーを想像させる「枯れた」色合いです。その中で一人際立つサラ(シャロン・テイト)は真紅のドレス。これは鮮血のイメージでもあり、彼女が「生者」と「死者」の境目にいる事を暗示しています。
ハリウッド映画の中にスラヴ世界への回帰のイメージを忍び込ませ、東欧人としての誇りをさりげなく示そうとしたポランスキー。しかし本作は、スタジオ側によって監督の意図とは裏腹の編集を施され「滅茶苦茶にされた」とポランスキーは嘆いています。真のディレクターズカットでは、現行のバージョンとどう違うのか、それを我々が観る事は残念ながら叶わないようですが、それはポランスキーの東欧人としての思いがより強く反映された作品になるのだろう、と想像に難くないのです。
最後に。この映画と出会った事で、高校生だった筆者はすっかりシャロン・テイトの美しさに夢中になってしまい、ずいぶん狂おしい想いをしたものです。あれから20年以上の歳月が過ぎ、とっくの昔にシャロンの歳を追い越してしまい、今ではすっかり冷静に受け止められるようになりましたが、この映画を再見する時はいつも、かつての初恋の相手に再会したような、ほほえましい気持ちになるのです。
萌え萌えヴァンパイア事典
無事に商品が届き、ざっと目をとおしました。
感想を述べたいと思います。。。
とっても分かりやすいです!!!!
イラストも完璧な萌え絵ですw
また、p129から始まる「吸血鬼資料編」がヴァンパイアについて分かりやすくミッチリと書かれています。
是非、ヴァンパイア好き、そうでない方も読んでみては如何でしょうか?
悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印 公式ガイド コンプリートエディション (KONAMI OFFICIAL BOOKS)
本作は、ニンテンドーDS『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』の公式攻略本です。
タイトル名通りに、完璧な攻略を目指すのならば、購入されておいて損のない一品ですね。
このゲームも探索型。シリーズ恒例のことなのですが、マップ率100%を目指して
いきます(ほとんどのプレイヤー諸氏は)。
ゲーム中のマップは当然しっかり載っており(お約束の壊せる壁)、奪われた刻印の最大の売り
でもある、グリフシステムにおいてもしっかりと解説されています。
今回、プレイヤーを何度も苦しめてくるボスキャラクターの攻略も掲載されています。
値段は攻略本としてはまずまずといったところかと。
そのぶんの情報はちゃんと書かれていると思われます。
五年二組の吸血鬼 (一迅社文庫)
エロい挿絵ばかりが注目されているようだが、楽しく読めた。ラノベにありがちな
・くどい説明的な文章
・下手な漫才と同レベルのボケ・ツッコミ会話の連続
がなく、飽きさせない。
吸血鬼の真祖である桃子が知的なのは当然として、主人公・翔も小五にしては状況認識力が高く、低脳じみたセリフを吐かないところが良い。翔が好意を寄せる万里衣はちょっとバカだが許容範囲だ。
小学生に羞恥プレイ、という点に目くじらを立てる人もあろうが、フィクションなんだから大目に見てほしい。このくらい現実離れしている方がかえって気楽に楽しめるというものだ。
中盤に、万里衣のセリフなのに「西本ぉ」となっている書き間違いがあるので、☆マイナス1つ。(ここは万里衣が翔に呼びかけている場面なので、「上原ぁ」が正しいはず)