文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
昨日読み始めたばかりなのですが、続きが気になってしまい、徹夜してしまいました。
姑獲鳥の夏の中では、登場人物がそれぞれとても魅力的で、そして狂気的です。果たして、狂っているのは誰なのか?自分でも境界がわからなくなり、鳥肌がたちました。
この物語に出来る陰陽師は非常に広い世界観を自分の中に構築しているように思われます。彼のアウトプットする言葉一つ一つがこの世で絶対の真理のように感じられます。この作品を読み終わった瞬間、自分がこれまで抱いてきた既成概念が全て崩壊したような爽快感を味わいました。
また、この物語の中に登場するある男性は、自分の生きる目的を「子孫を残すこと」としています。それでは、何故人間は泣いたり、喜んだり、憎んだりするのでしょう。何故人は生きるのか、その答えを考えさせる作品です。
ヘアピン・サーカス [DVD]
いや〜なつかしいものが出てきましたねえ。
72年といえば私は20歳、レーサーではトヨタワークスの見崎清志、スポーツカーといえばトヨタ2000GT・セリカ1600GT、ジャズといえば笠井紀美子、菊地雅章。
これは必見の価値があるDVDです。
2000GTのエキゾーストサウンドに菊地雅章のジャズが絡む。是非、70年代を懐かしんでください。
例外社会
著者がこれまで論じてきた社会・政治思想、文学から、昨今の格差、セキュリティ、テロリズムをめぐる議論をも縦横無尽に駆使し、21世紀の「例外社会」の形成過程を検証した大著。この「例外社会」とは、世界内戦(地球化された戦争)という例外状態を織り込んだ社会のこと。9.11同時多発テロ以降、例外社会化は急速に進んでいるというのが、著者の見立てである。9.11以降、国家による監視社会化が一挙に進み、市民もそれを進んで受け入れ、市民同士の相互監視も進行し、国家的監視と社会的監視の二重化という事態に至っているが、これこそ19世紀、20世紀とは異なる、社会の21世紀的なあり方なのである。
他のレビュアーの方も指摘されているように、あまりに多岐にわたる思想家、文学者、事件が扱われているためか、議論が錯綜しているように感じられ、読みやすい本とは到底言えない。また700頁を越える分量なので、笠井氏の評論文によほど慣れた人でもない限り、途中で投げ出したくなるのではないか。また、引用されている文章の解釈が恣意的に感じられる部分も少なくない。しかし、著者は研究者ではないので、それはそれでよしとすべきであろう。こういう本は、学問的な厳密さよりも、著者の思索そのものが何よりもが重要であるし、読者が思索するためのきっかけやヒントを得ることで満足すべきものだ。
麦の海に沈む果実 (講談社文庫)
単純にミステリーに謎解きやトリックなどを求めている人、
完全な世界の構築とそれに打ち立てられた謎を求めている人、
には向かないと思う作品だと感じる。
それだけ、この作品の世界観やトリックなどには
幼さや不完全さが残っている。
ただし。
個人的にはそれすらも作者の意図であるように感じる。
「六番目の小夜子」「夜のピクニック」などに代表されるように、
作者はまだ大人になりきれていない年頃の少女の深層を描くのが、
非常に上手く、また得意とする分野だと思う。
だからこそ、その少女が存在するこの本の世界も、
なぜか危うく幼い不完全さで構築されていることが自然だと感じてしまった。
そしてその世界が完全でない理由は、
社会からの隔離された世界にありながら、
結局は向いている先は社会や世間にあるという、
少年少女の(または大人の)矛盾した欲望で構築されているからなのだろう。
物語は、
立地的にも社会的にも世間から隔てられた元修道院の中に立てられた、
様々な理由から集まる生徒たちで構成された学校の中で展開される。
もちろん人は死ぬ。
そして物語を進めるごとに、
各登場人物の思いや悩みが少しずつ解き開かれて、
最後は主人公の記憶へと物語が収縮していく。
ラストは。。もちろん自分の目で確かめて欲しい。
そしてこの危うい少年少女たちで構成された不完全な世界を感じて欲しいと思う。