銀河鉄道の夜 (ぶんか社文庫)
岩手を語るときに欠かせない作家、石川啄木と柳田國男と宮沢賢治。
もし誰に出会わなかったら,一番,心豊かになれない人生を送ることになるだろうか。
私は,一番宮沢賢治と遠かった。この寓意とか,叙情とか言うやつが苦手なのである。
啄木は現実で,柳田は幻想である。
だから,断片でなく読み通した賢治の作品はこのマンガの『銀河鉄道の夜』が初めてとなった。
知識として知っているジョバンニや,カムパネルラが,天空を走る電車に乗っていた。
宮崎駿の『千と千尋の神隠し』ではないか。もちろん『銀河鉄道の夜』が先行作品である。
早く賢治作品に触れて置かなかったからこういう事になるのである。
ところで、石川啄木と柳田國男と宮沢賢治。
もし誰に出会わなかったら,一番,心豊かになれない人生を送ることになるだろうか。
ちなみに,本書の他のレビュー中に,本書ではないもののレビューが沢山混じっています。
大和古寺風物誌 (新潮文庫)
新聞に書かれた光明皇后施浴の伝説の一文を読んで心引かれたので買いました。想像していた以上に面白く、一気に読んでしまったという感じです。奈良に行ってみたくなりました。修学旅行で訪れた奈良の大仏様が、焼き討ちにされたり、しばしば災禍をこうむって、江戸時代に再建されたとは知りませんでした。またこの本を読んで、以前見た美術展で一同に展示された仏像に違和感を覚えたのを思い出しました。展示された仏像に少し恥ずかしそうにしながら、そっと祈る人々の姿を見て、やはりそこには祈りの場所が必要だなあと感じました。そういう一人ひとりの祈りの中に仏像は在るように思います。仏とは?人間とは?永遠とは?死とは?・・・深く考えさせられます。何度も手元に置いて読み返したくなる良い本だと思います。
聖家族~大和路 [DVD]
ラーメンズ片桐さんの才能は認めているし、まず何よりもタイトルに魅かれ、一体どんな掘辰雄の世界が解釈されるのだろうと期待して観ました。結果は、まったく肩すかしを受けたという印象でした。
「細雪」以来、日本文芸の映像化はおおむね無難に行われてきていると思いますが、これは、明らかに今までになかった感覚の文芸映画であり、極論するとストーリーすらない。
主人公のナイーブで、もはや外気に露出してしまった神経が、耐えきれず発する呻きを執拗に追うというのが本作の趣向と思われました。
ある程度、堀、芥川を読み込み、両者のアンビヴァレンツな関係も一応理解しているつもりの私でもついて行けなかったので、原作を十分読み込んでいない観客にあっては、文芸映画としては、ほとんど作品の態をなしていなかったのではないでしょうか。
しかし、何か隠れた感性の息吹があるのかもしれない。ただ今の私にはそれが全く感得はできない。
映像の美しさはプロの技ですし、この冒険主義的映像を制作してしまったスタッフに勇気に敬意を表し、☆3つにします。
特に若い方、原作を読んでるいないにかかわらず,一度、この不思議な感性にトライしてみるのもいいでしょう。
大和路・信濃路 (新潮文庫)
奈良を訪れた旅行記は数あるわけだが 個人的には 堀辰雄の この作品がもっとも好きである。
堀辰雄というと 軽井沢を舞台にした「風立ちぬ」等で 少々甘ったるい作家と言う評価になってしまうかもしれないが ある程度まとめて堀を読んでみると それなりの苦味も感じられて 面白い。
そんな中で 本作品は奈良訪問記であるわけだが エッセイストとしての堀の 手さばきの確かさが しっかり分る作品である。堀はいつもの通り 幾分感傷的な心で 奈良をうろうろしているわけだが うろうろ具合にも 堀らしい嗜好が散見されて好ましいと感じる。だいたい 奈良を旅行すること自体 誰でも幾分感傷になるわけでもあり その意味でマッチしていると思う次第である。
Jブンガク マンガで読む 英語で味わう 日本の名作12編
マンガと英語で近代文学を覗いてみる本。
明治から昭和初期の12作品が紹介されています。各作品には18ページずつ割かれていて、その18ページが更にいくつかの小部屋に分かれているので、どこからでも読めます。まるであらかじめつまみ食いされる事を想定しているかのよう。気軽に読める本ですね。
マンガと日本語と英語で粗筋が紹介された後、『キャンベル先生のつぶやき』という部屋では原文と英訳文が示されます。日本文学の専門家であるキャンベル先生が、英訳に際して感じたことなども書かれていて、敷居の低い本書の端倪すべからざる一面が垣間見えます。
文学の紹介本としてはかなり異色の一冊かもしれませんが、読み易いです。