ジョイ・ライド
豪華なゲスト陣を招いて制作されたものだが、個人的には一際L.リトナーの参加という点だけで購入したようなもの。
しかし、内容は期待を裏切らないものになっている。
1曲目から「いかにもB.ジェームス」というタッチを聴かせ、2曲目ではスリリングな展開を見せたかと思えば、タイトルトラックではL.リトナーとの掛け合いもあり、古くからのFourplayファンには堪らない展開かも。
(リトナーの軽く歪んだギターも最高!)
終盤もボサノバ風の洒落た楽曲もあり、B.ジェームスのイマジネーションに改めて脱帽!
捨て曲は1曲もありません。
ニュー・シネマ・パラダイス
テレビでおなじみの高嶋ちさ子さんの初リーダーアルバムです。
全14曲とも有名な映画音楽で彩られています。彼女の華やかだけれど、どこか哀愁を帯びたヴァイオリンの音色が、テーマを持った映画音楽ととても相性がよく、全曲とも情感たっぷり演奏を伴った珠玉の作品に仕上がっています。
「ひまわり」、「ニュー・シネマ・パラダイス」、「マカロニ」、「太陽がいっぱい」等のヨーロッパの作品を前半に並べ、後半はアメリカ映画を取り上げるという選曲にも工夫が凝らされています。
こうやって聴きますと、映画音楽ってとても情緒豊かなメロディーとハーモニーを内在した曲が多いと言うことがよく分かりました。映画の名場面でこれが流れると涙腺が弛みそうです。
アレンジがまたいいですね。ストリングスやピアノが楽曲に変化と奥行きを与えています。ヘンリー・マンシーニの名曲「ひまわり」を聴いていますと、哀しい運命に翻弄された主人公を演じたソフィア・ローレンの哀しみがそのヴァイオリンの音色を通して伝わってきます。
映画を見た人が、その映画で受けた情感そのものを、音楽を聴くことで再現できるのが良いですね。
原曲の雰囲気を壊さずに、高嶋ちさ子さんの表現したいことが伝わった作品集だと思いました。
ブラー ブリット・ポップと100万ポンドのシャンパンの日々 (p‐Vine BOOKS)
ブラーというバンドが輝きを放った1990年代、それはイギリスにとっても特別な時代だった。
「クール・ブリタニア」という言葉が、生まれたのもこの時期だ。
イギリスの音楽・建築・ファッション・映画・スポーツなどのカルチャーを一番かっこいいと表現した言葉。映画「トレインスポッティング」ユアン・マクレガーが、その原作者アーヴィン・ウェルシュが、映画「ザ・ビーチ」原作者アレックス・ガーランドが、モデルのケイト・モスが、デザイナーのアレクサンダー・マックイーンが…。
そう、長い間続いた保守党の政権から労働党が政権を奪ったのもこの時期。
トニー・ブレア首相は、新しい時代の象徴となり、イギリスの停滞した流れが変わりそうな機運があった。
そんな特別な時代にバンドとしてピークを迎えたブラー。
そして、彼らと同じ時代にはほかにもスペシャルなバンドがいた。
そう、Nirvanaとオアシスだ。
ブラーなどイギリスのブリットポップが花開くきっかけを作ったのは、Nirvanaのカート・コバインの死でポッカリと空いてしまった人々の心の穴だ。
そして、Nirvanaがいなくなったこの世界に、イギリスのバンドであるオアシスがデビューする。
ローリング・ストーンズやビートルズを生んだ60年代のイギリスが特別だったように、確かにこの時期のイギリスはスペシャルな時を迎えていた。
そして、不幸なことに、オアシスVSブラーのCD売上戦争が勃発する。
ブラーが特別なのか、それともオアシスが特別なのか。
だが、最終的に問われたのは、音楽ではなく彼らの出自だった。
ビートルズもローリング・ストーンズもセックスピストルズも労働者階級出身だった。
労働者階級出身のオアシス、中流家庭出身のブラー。
CDの発売日を同じ日に当てた直接対決はブラーが勝利したが、その後、オアシスの2作目は計10州全英1位の大ヒットを記録する。
イギリスにとって階級差は、常に意識せざるをえないものだ。だから、彼らは労働者階級出身のオアシスを応援した、オアシスが彼らの代表であるかのように。
そして、現在、オアシスは2009年活動停止。ブラーは2003年以降長らく活動停止をしていたが、2009年夏に再始動した。
そして、この2003年以降、ブラーのデーモン・アルバーンの活動は目を見張るものがあった。ゴリラズとしての活動もその一つ。
本書に関して言えば、そんなブラーというバンドのベーシストのアレックス・ジェームスの半生について語られている。どんな国にも特別な瞬間が存在する。政治も経済も文化もすべてがキラキラと輝く瞬間が…。そんな特別な瞬間をとらえた、特別なバンドに所属する人間の言葉は一見に値する。