作り物ではなく、実際にあった出来事、言動は、凡百の創作ミステリーを超越した凄みがある。
壮絶なはずの犯行の現場での行いも、どこか乾いた視点で語れ淡泊な印象をうけるが、だからこそ本質的な悲惨さ猟奇的な恐怖と狂気が伝わってくる。
共犯者の視点で語られる主犯関根の言動は、一見特殊なもののように映るが、関根の持つ狂気は現代の誰もが少なからず持つ狂気である事にいやがおうでも気付かされる。
社会的な要因が犯罪を行わせるのでなく、現代に生きる日本人の誰もが少なからず持つ要因が、この狂気の事件の背景にある事に気付いた時に、自らも持つその芽に感じる恐怖は、フィクションでは感じる事のできないものだ。
実際に社会では、この作品に登場するような人間が同じような事件を沢山おこしている。私達が暮らすこの世の中には、関根の狂気が溢れている。それだけでも戦慄すべき恐怖だ。
作者は実際の共犯者だと言われていた。それが事実かどうか今確かめる方法がないが、この作品の持つ力は本物だ。