彩(エイジャ)
昨年、ケーブルテレビのMusic AirでSteely Danの"Aja"のMaking ofを放送していました。
それまでイージーリスニングなみの気持ちで聴いていたのが、まるで罪であるかのような後悔が走りました。とにかく信じられないほどの深みを持った作品群です。
表題曲の"Aja"は、1度さっと聴き、2度目はドラムセクションだけ聴き、3度目はギターセクションだけ、4度目は、、、という具合に続けて何度聴いても全く飽きがきません。
もし無人島に1枚だけCDを持っていって良いなら、ためらわず、ボクはこの"Aja"を選ぶでしょう。おっとその前にその島には電源はあるのか?
彩(エイジャ)
久しぶりにこのアルバムを聴いてみて感じたのは、
この頃から彼らの音は時代にフィットし始める。
それまでの音から立ち上るような「自己否定」の匂いは、このフィット感のなかにうまく処理されてゆく。
といった感じで、さらに・・・
「音を処理する」という考え方は、このアルバムが出たあたりから、時代の音が電気音から電子音に
変わり始めるのとともに、急速にその完成度を高めてゆき、あっという間に世界を覆い尽くしてしまう。
そして、それがそれまで彼らを際立たせていた、「自己否定」という感性を作品(アルバム)に
結実させる可能性の行き止まりをもたらすこととなる。
・・・といったことも、後から振り返ってみれば、言えるかもしれない。
Aja
確かに、従来マスタリングの盤よりクリアに各楽器の粒立ちが聞こえるようになりました。このアルバムを初めて買う方には絶好の企画です。要するにこの新しいCDは、盤の透明度を上げてエラーを極力押さえるところに狙いがあると思います。だから、なのですが、その分CDの音の薄さがはっきりしてしまいました。とてもデジタルっぽい音なのです。CDの規格は既に30年も前のものです。それを改めて思うと、16bit 44.1Khzの限界が良くも悪くも感じられます。大好きなこのアルバムは、LP,CD(国内盤、米国盤)で未だにオーディオリファレンス用としても愛聴しているので、情がある分そう思ってしまいます。 MDラジカセやiPodで育ったデジタル録音世代は何とも思わないかも知れません。とはいえ、それこそこのアルバムを作った時代のSteely Danの音が、この新しい規格でオリジナル録音の世界に近づいたかというと、必ずしもそうは思えません。Steely Danの同じく名作"Gaucho"はSACDが発売されています。これは本当に素晴らしい音質で、一曲目ド頭、Bernard Pardieのタムのフィル一発で鳥肌が立ちます。AjaのSACD化を是非。
クラシック・アルバムズ:エイジャ(彩) [DVD]
1977年に発表した『彩(エイジャ)』。この名盤の制作過程を振り返るように語るドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー。彼等はほとんどもの凄いチャンネル数のミキサーの前で語り続けるのだが、トラックを減らしたり、突出させて自分たちの頭の中にあるイメージにいかに近づけていったかを説明してくれる。その徹底ぶりはもの凄く、完璧を通り越して、最高のアドリブがあたかも自然に出てきたかのような状況を完璧に譜面でがちがちにしていながら感じさせてくれる。非常にすばらしいドキュメンタリーに仕上がっている。
ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー、彼等2人には若さも見た目の良さもまったくない。あるのは極めて論理的な作曲・編曲能力と、ずば抜けた演奏の旨さと、組み合わせるミュージシャンを選び抜く耳である。およそロックの世界にはいなかった理論的作編曲家と言うことができるだろう。どの曲もどの曲も複雑なコード進行と複雑なコーラス、旨すぎる演奏である。
名盤『彩(エイジャ)』の誕生過程を完璧に理解できる必見の作品だ。
彩(エイジャ) [DVD]
通称:糖尿病アルバムといわれ、とにかく当時最高のミュージシャンを集めてしかもこの素晴らしいミュージシャン達に注文をつけているからこの2人は世界最高のひねくれ者達の称号に値する。兎に角、チャック・レイニー&バーナード・パーディのリズム隊は目から鱗であるので好きな方は鑑賞する価値あり。