紅葉~autumn with your favorite music~V-music~ [Blu-ray]
「紅葉〜autumn with your favorite music〜 (DVD版)」のブルーレイ化作品です。V-Musicシリーズの他の作品と同様、主役である音楽に既存の素材を組み合わせたものなので、映像作品としては凡庸といえば凡庸です。これも同シリーズのほかの作品でもそうですが、ハイビジョンを謳っているわりには、そうとは思えない (またはカメラマンが下手) ような粗い画像も混じっていますし。より高画質で、よりコンセプトのはっきりとしたものを期待するのなら「夜もみじ 」を選ばれたほうがよいでしょう。
内容は、NHKで深夜に流しっぱなしになっている、ナレーションなしの音楽付き映像番組や、ニュースの合間に挿入されている季節の話題をつなぎ合わせたもの、を想像していただければ、おおむね正しいと思います。
「2. 箱根 (仙石原)」や「5. 愛媛...」の一部、「6. 北海道...」の一部、「7. 京都...」、「8. 青森 (奥入瀬)」の一部は雄大、壮観なカットが多いですし、BGVとして普通に楽しめると思いますよ。パッケージや紹介内容がこんなに持ち上げなければ、もっとよい評価をもらえると思うのですが。ただ、スワンボートとか観光船とかを入れてしまうあたりが、やっぱり「わかってないなあ」ともどかしく思うところです。
バロック・チェロ・ソナタ集
このCDは編曲物も含めた6人の作曲家の作品を収めたバロック・チェロ・ソナタ集で、シュタルケルの高潔とも言える音楽性、そしてバロック音楽への造形の深さと鮮やかなテクニックの冴えが顕著な1枚だ。バッハだけが1963年、その他の曲は66年のセッションだが、マーキュリー・リヴィング・プレゼンスの高音質録音も魅力のひとつだ。ピアノ伴奏はステフェン・スウェディシュで、バッハのみ彼としばしば協演したジョルジ・シェベックが受け持っている。ちなみにこのCDもコレクターズ・エディションに加えられた1枚で、今回ルビジウム・カッティングによる再発になった。セット物を買う以外には入手が困難になっていたので復活を歓迎したい。
6曲の中でもボッケリーニのソナタでの、ふくよかな音色を活かしたシンプルだが大らかで格調の高いカンタービレは彼ならではの表現だ。一方ヴィヴァルディのホ短調ソナタはピエール・フルニエのオーケストラ伴奏付のアレンジで知られているが、フルニエのロマンティシズムに溢れる解釈とは異なった、バロックの様式を踏まえたすっきりした演奏が特徴で、前者とは好対照をなしている。またロカテッリで聴かせるヴァイオリン顔負けの胸のすくようなシャープな切れ味の良さと剛毅さも心地良い。最後に置かれたバッハのガンバ・ソナタト短調での音楽的な強い推進力と個性的な奏法は、ヴィオラ・ダ・ガンバで演奏するのとは一味違うが、彼の語法には独特の説得力があり、この曲の可能性を広げた表現と言えるだろう。
V-music 07『紅葉~autumn with your favorite music~』 [DVD]
紅葉の時期は仕事が忙しく、なかなかこんな所に行くこと出来ないからせめてDVDでって購入したんだけど、金と時間かけて出かけるより家でこれ観てたほうがよっぽどいいかも。だってこれだけの場所で紅葉見るったらどんだけ時間と金かかる?画像はハイビジョンのビカビカだし、液晶やプラズマ持ってりゃ本物見るより綺麗かも。でも、全国のお父さんたち!このレビュー読んで「これ買おう!」なんて考えないでね!奥さんと子供たち連れて是非、外に紅葉を見に行って下さい。DVDで済ませようなんて私のように独身だけだから。(笑)また映像に音楽がマッチするんだなあ。今までかなりのBGVを買ったけど失敗も多かった。でもこれは大当たり!って感じでした。今年の秋までに結婚してこのDVDにお世話にならないよう、本物の紅葉を見に行くか!まあ無理だろうな。やっぱDVDにお世話になるか?(笑)
バッハ:無伴奏チェロ組曲(全6曲)他
生涯に4回の無伴奏チェロ組曲全曲録音を果たしたシュタルケル2度目の全曲集で、既に昨年マーキュリー・リヴィング・プレゼンス・コレクターズ・エディションに組み込まれていたものが、今回ルビジウム・カッティングのリニューアル盤2枚組で再登場した。シュタルケルは高度な演奏技術と幅広い表現力を持っていながら、バッハの演奏にあたって尊大になることもなく実直で飾り気のない、しかし一方で骨太で力強く揺るぎない音楽構成を聴かせているのが特徴だ。またバロック音楽に造詣が深いだけあって、ここでの舞曲や装飾音の解釈も今もって説得力のある普遍的なものだ。しかもこの録音は1963年から65年にかけて、彼が40歳になった頃のもので独特の覇気が全曲を貫いている。
尚この2枚組セットには6曲の組曲の他に、2曲のヴィオラ・ダ・ガンバのために書かれたソナタト長調BWV1027及びニ長調BWV1028も収録されていて、ピアノはハンガリー時代からの朋友でしばしば彼と協演して高い評価を受けているジェルジ・シェベックが担当している。ちなみにバッハのもうひとつのガンバ用ソナタト短調BWV1029は、同ピアニストとの録音で今回このシリーズで復活したバロック・チェロ・ソナタ集の方に収められている。録音技術と再生音の優秀さで知られたマーキュリー・リヴィング・プレゼンスだけあって音質の素晴らしさと臨場感は半世紀前のセッションとは思えない。
ヤーノシュ・シュタルケル自伝
名チェリスト、ヤーノシュ・シュタルケル氏の自伝。
戦後日本において、
コダーイの『無伴奏チェロ組曲』でその名を響かせた名匠。
本書に登場する人物はチェロのカザルス、フルニエ、トゥルトゥリエや、
指揮者のセル、ライナー、クレンペラー、カラヤン、ジュリーニといった多彩な顔ぶれが次々と登場する。
ハンガリーに生まれ、
同地で第二次世界大戦を生き抜きぬいた著者。
アメリカに渡り、市民権を得る過程や生活費の細かな証言は、
20世紀の欧米音楽史であると同時に、
戦後史のディテールを補う貴重な記録。
メトロポリタン歌劇場やシカゴ交響楽団時代のくだりは、
該当時期のCDを聴きながら読むとより一層面白い。
愛器・ストラディバリウスを抱えてのアフリカ・ツアーの様子が、
本書の一部として掲載されたことも嬉しい。
日本を気に入っていたようで、
最後の演奏会も日本だったとの記載。
ロストロポーヴッチ氏も逝き、
20世紀チェロ演奏の歴史を彩ってきた人々が黄昏の時に。
シュタルケル氏の御壮健を願わずにはいられない。
少々難のある和訳と誤植が散見され、そこが残念ではあるが、
文庫化したおりに修正されることを期待したい。