列島強靱化論―日本復活5カ年計画 (文春新書)
鹿島茂氏(仏文学者)が、この本について次のような書評を書いているのを目にしました。
「公共事業論を専門とする著者が三月二十三日の参議院予算委員会の公聴会で公述した提案を骨子にして二週間でまとめた文字通りの「緊急出版」。
著者の主張は明快だ。まず、東日本大震災によって、西日本大震災と首都直下型地震それに富士山大噴火の起こる確率が増し、日本全土がカタストロフィーに見舞われる恐れが強くなったにもかかわらず、日本のインフラはあまりに脆弱だという事実認識。おまけに、直接間接の被害と心理的な需要落ち込みで震災デフレが加速しようとしている。デフレ・スパイラルに陥ったら最後、復興さえおぼつかない。ゆえに、東日本復興と列島強靭化を一挙に推進すると同時に震災デフレを克服するには、思い切って財政出動し、強靭な(複線化された)流通。・通信・交通・エネルギー供給網を築き上げるしかないが、それは景気刺激策としても有効である。財源としては震災デフレを助長しかねない増税はさけ、国債発行と日銀の買いオペを実施すべきである。国債発行が金利上昇を招き、インフレと財政破綻をもたらすというデフォルト論はクルーグマンのいう「流動性の罠」に日本がはまりこんでいる現状(「たとえ金利がゼロであっても、なお人々が投資をしようとする額を超える貯金をするような状況」)にあってはナンセンスだ。要するに「せっかく政府が、困っている人を助けたいといってるんだから、まずは今まで通りの税金をしっかり払って、できる範囲でオカネを寄付して、できる範囲でオカネを貸してあげて、それでダメなら、日銀さんに、オカネを政府に貸してあげるようお願いしようじゃないか」ということなのだ。そして、財政出動でオカネが日本中を回ってデフレ・スパイラルが断ち切られれば、自動的に税収も回復し、国家債務も減少に向かうだろう。
基本的に賛成である。たしかに今できるのはこれしかない。遺伝学者ブライアン・サイクスが『アダムの呪い』(大野昌子訳 ヴィレッジブックス)で指摘していたが、生物がオス細胞(Y染色体)を造って単性生殖から両性生殖へと移行するという「面倒くさい」選択を行ったのは、単性生殖だとウィルスによって一瞬にして絶滅する危険があるためだったという。日本もインフラを複線化するという「面倒くさい」選択を行う以外には来るべきカタストロフィーから生き延びる道はないのである。(週間文春)」
私も、「たしかに今できるのはこれしかない」「日本もインフラを複線化するという『面倒くさい』選択を行う以外には来るべきカタストロフィーから生き延びる道はない」という鹿島氏の見解に、深く同意しました。
ビスコ 保存缶 30枚×10個
懐かしいデザインの缶だったので、思わず買ってしまいました。家族から、『食べてみようよ』といわれますが、我慢して開封せずに飾っています。賞味期限切れで開封する事を願っています。
首都直下地震“震度7” (PHP文庫)
老若男女、日本人と外国人そして城南、城西、城東、都心、湾岸等あらゆるエリアで色々な登場人物が出てきます。そのため直下型地震が発生しても湾岸の高層マンションと城西の戸建てなどの被害の違いが分かり現実味のあるシミュレーションが出来ていると思います。本書を読んだ直後は高速道路に乗ったり、地下鉄に乗ったりする事が心配になるくらいでした。しかし残念ながら本書に出てくる登場人物の多くが通常持ち合わせている以上に地震や地理について知識が豊富であるため現実からかけ離れている気がします。筆者とすればそれら登場人物の会話の中で東京の危険なエリアや現代建築の安全神話に対して警鐘を鳴らしているのでしょうが、実際には極度のパニック状態でこのような会話はありえないという場面が多く見られました。その分星一つ減らしておきます。