Hilary Hahn, A Portrait [DVD] [Import]
このDVDはコンサートやリハーサルの映像に加え、彼女自身と一緒に働いたことのある音楽家インタビューを通じて、ヒラリー・ハーンというヴァイオリニストの音楽と人物像を描きだすドキュメンタリーフィルムです。
収録曲はコルンゴールドのヴァイオリン協奏曲、バッハのシャコンヌ、 モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第25番。
彼女のインタビューから受ける印象は、音楽に対する豊富な知識と深い愛着に基づいたプロの音楽家としての自覚、そして若くして成功をおさめたことをおくびにも出さない謙虚さです。なかでも一番驚いたのは「私は自分のCDがその作品に対する評価を一変させたりできるなんていう幻想は抱いていません 」との発言です。彼女のCDを聴いてから、エルガーやバーバーそしてメイヤーの音楽のファンになり、バッハの素晴らしさを再評価するようになった私としては、彼女の発言は過小評価としか言いようがありません。
こう書くと、彼女は真面目で近寄りがたい人間に聞こえますが、このDVDから見えてくる彼女の人物像はその反対です。母校のカーチス音楽院を案内する姿はまさに少女時代にもどったかのようですし、このDVDに収録されているサイン会もファンを大切にする彼女にとっては珍しいことではありません。私自身も昨年1度コンサートに行きましたが、 彼女はコンサート後にスウェトシャツでロビーに出て来て1時間近くもサインと握手をしていました。
このDVDはRegion Allなので日本のDVDプレヤーやパソコンでも再生可能ですが、やはり日本語字幕がないと楽しみが半減する気がします。内容は素晴らしいので彼女のファンを日本でもっと増やすためにも国内版の発売を望みます。
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 他
若き天才ヒラリー・ハーンは、ブラームスの第3楽章を心軽やかにスキップでもしそうな快活な上機嫌さで一気に弾き切っています。コンチェルト全体のバランスを考えれば、この軽やかさこそ、ここで作曲家が求めたものだったのだという説得力があると思いました。従来の主流だった「白熱的」な演奏は、解釈というよりも、ここに仕掛けられた残酷なまでの重音のハードルに対する演奏者の技術的な余裕の無さ、そのための必死さだったのではないか、という気さえして来てしまいます。それほど、ここでのハーンの弾きぶりは卓越していると感じます。楽曲に対するイメージを一変させる力を秘めた見事な演奏だと思います。
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 他
ハーンは多くの協奏曲を録音しているが、今のところ自分はこれが一番気に入っている。音質もいい。
メンデルスゾーンは、一見彼女には向いていないタイプの曲なのだが、それでも面白く聞けた。こういう爽快な演奏もありかもしれない。
ショスタコーヴィチは二重丸。
ヒラリー・ハーン デビュー! バッハ:シャコンヌ
私はこれをかなり以前にamazon.co.jp経由で購入したと思います。きっかけは、同じくGidon KremerのBachの無伴奏バイオリンソナタ全曲(Philips)をしばしば聴いており、Hilaryとの比較を聴きたかったからでした。比較の一例を示すと、シャコンヌ(BWV 1004 in D minor Ciaccona) の両者の演奏時間は、Hilaryの17’ 52” に対して、Gidonの12’ 55”の違いがあります。この5分の違いは、両者を聴くとよくわかるでしょう。私はHilaryの演奏の方が好きです。
このような違いは、例えばGlenn GouldのBach Goldberg Variationsにも聴かれます。1955年のRecordingのアリアの演奏時間が1’53”であったのに対して、Glennが亡くなった1982年のそれは3’5”でした。この違い等はGlennとTim Pageの対話の中で語られています。私は1982年版の方が好きです。
同じく、森山良子さんは、「さとうきび畑」を二度Recordingしていますが、1969年の最初のそれでは歌唱時間は9’41”でしたが、2002年のそれでは10’18”でした。この場合も私は2002年版の方が好きです。
これらの違いはそれぞれの演奏家(Interpreter:翻訳者)の人世経験の積み重ねの結果なのでしょう。というわけで、(このRecording時点で) 17歳のHilaryが、彼女の晩年に再度CiacconaをRecordingするとしたらどんなになるのかが楽しみですが、そのときは間違いなく、私はもうあの世でしょう。中島みゆきさんが「時代」の中で歌っているように、「生まれ変わって」聴きたいものです。
ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン
ベートーヴェンの「ロマンス」が聞きたくて購入しました。古いモノラル録音ですが音より音楽優先で叙情と技巧性に満ちたエネルギッシュな演奏を堪能できます。