パティ・スミス完全版
パティ・スミスの詩集として楽しんでもいいと思うし、歌詞カードのかわりにもなる。僕自身そんなふうに読むこともあるが、それ以上に“パティをあじわう”本。自分がこの本を楽しむ方法を表現するとこんな感じだろう。CDを聴く、ライブを体験する、それらと同格でもう一個追加されたのが「パティ・スミス 完全版」を読む楽しみだ。
ファーストアルバム「Horses」から最新作「Gung Ho」までの全訳詞を軸に構成されている。歌詞カードのように「聞き取り不能」なんてのはないし、訳詞ではなく訳詩なのがいいところ。装丁など原書の味わいはそのままといってよいが、原文歌詞は含まれない。できれば、原書も手に入れることをおすすめする。(ハードカバー/ペーパーバックがある。ハードカバー版には最新アルバム「Gung Ho」が含まれていないことに注意)
アルバムや一部の曲については、パティのエッセイが添えられている。このおかげで、Kimberly や Redondo Beach, Grateful といった曲は今まで以上のお気に入りになった。
そして、数多く含まれる写真がいい。ジャケ写、ステージショット、ファミリーショット、スナップ、スケッチその他さまざまだが、写真集としても秀逸だと思う。「Dream of Life」~「Gone Again」の部分は特に感動的で、涙をこらえきれないときすらある。
CD・ライブ・本を同じように楽しんでいる、と最初に書いた。だけどそのうちの一つの楽しみだけでは完結することはなく、全部体験したくなってしまう。なので最後に一言。「来日ツアーしてください」
25 Years of #1 Hits - Arista Records 25th Anniversary Celebration [VHS] [Import]
ARISTA創立25周年記念ライブの模様を収録したもの。
豪華なメンバーだし、私が好きな
・SANTANA
・Whitney Houston
・Annie Lennox
が出ているのも良い。
画質も音質も良く、おまけも楽しめる。
ただ、ちょっと残念だったのは、Whitney Houstonの声の伸びが今ひとつだったところかな。
#Donna SummerのライブDVDを見た後に連続して観たのもだから、
#なおさらそう感じたのだと思うけど。
DIVASライブなどと同じで、豪華メンバーが出てくるからこそ、
数曲だけとか、メドレーだけだと、欲求不満が残るなぁ(^^;
この価格にしてはよいと考えるか。
Banga
07年のカヴァー作「Twelve」を除くと8年振り、パティ・スミス10作目のオリジナル・アルバム。
制作は08年頃から行なっていたそうだが、彼女を初期から支えた写真家、故ロバート・メイプルソープとの関係を綴った随筆本「
Just Kids」の執筆や写真家としての活動と重なったことにより制作は長期に分散したようだ。
一応「混沌を増す世界と自らの夢」をテーマとしているが、彼女が強い興味を示す文学・絵画の芸術作品から、逝去した諸人物、
日本の3.11等の自然災害といった外的要因まで様々なものに着想を得た12曲に強い繋がりはなく、近年の彼女の心象をそのま
ま音へと映したスケッチ集の様な趣もある。タイトル題の「Banga」はウクライナの小説家ミハイル・ブルガーコフの作品「巨匠とマ
ルガリータ」中に登場する犬の名から来ている。
演奏陣はレニー・ケイ、ジェイ・ディー・ドハーティ等初期からの気心知れた面子が中心、そこにSSWトム・ヴァーレインやパティの
子供達等を加え安定感ある演奏を展開。俳優としても活躍するジョニー・デップの参加曲を含む(「Banga」にドラム・ギターで参加。
デップが作成したデモ音源に肉付けしたという)のも売りの一つだろう。
全体の印象としてはロック特有の攻撃性は控え目、カントリーやラテン風味等複数の要素を程良く混ぜた風情の楽曲は、派手さは
ないがまろやかで聴き易い。簡素な音創りの中でパティの歌と語りの味わいを浮び上がらせた仕上がりだ。
語りと歌を自由に往来するパティのアルトボイスは、いつの間にか歌詞を追うのを忘れつい声そのものに聴き入ってしまう。表層は
若い頃の荒ぶる激しさこそ潜めたものの、極めて冷静に発せられる言葉には単なる癒しでない強い意思が宿り深い余韻を残す。
彼女の冷静沈着な表情は先頃逝去した歌手エイミー・ワインハウスへ捧げた追悼歌「This Is the Girl」でさえ崩れることはないが、
その淡々とした歌い口は逆に感傷を誘う。3.11を経た日本人に捧げる「Fuji-San」の壮大な歌は何処か神々しさを感じさせる。
パティの歌以上に前へ出ることを注意深く避けながらも、言葉の間や空気感を絶妙に補完するバンド・サウンドの雄弁さにも注目。
「Mosaic」でマンドリンの音色が異国的な空気を、10分に渡る大曲「Constantine's Dream」ではイタリアの演奏集団Casa del Ven
toを迎えバイオリンやバンドネオンの音色がデカダンな雰囲気を演出したりと、曲毎に構成を組み換え丁寧に音を編み上げる。
焦りを微塵も見せないパティの歌と語りを堪能させる一作、瞑想するように心静かに聴き入りたい逸品である。
バンガ
私はパティについて全く詳しくないですが、彼女の音楽は基本的にパンクナンバーでも「祈祷」なんだと思います。我々リスナーじしんの力を呼び覚ますための、といったら大げさか、それでも「祈り」でしょうね。
この優しく素敵なアルバムも彼女の願いの、祈りの作品なのでは。歌い方をみてもやはり我々に対して祈り願っているようです。怒りでなく祈り。
静かに夜に聴くためのアルバムでは。ガンガン昼間に鳴らすアルバムではないでしょう。
なお、ニール・ヤングのカバーは輸入盤にもあります。