アラビアのロレンスを探して―揺れる英雄像 (20世紀メモリアル)
「暗い夜空に彗星のように輝くあのような人物は、一世紀に一人しか現れないだろう」と謳われ、あのウィンストン・チャーチルから「彼は我々の時代の最も偉大な人物の一人だと思う。彼の名はイギリス文学の中で、戦史の中で、そしてアラビアの伝説の中で生き続けるだろう」と評された「アラビアのロレンス」とは、どういう人物なのか。
これまで出版されたさまざまな伝記の主張を検討、整理して、すっきりとした回答を示してくれたのが、『アラビアのロレンスを探して』(スティーヴン・E・タバクニック、クリストファー・マセスン著、八木谷涼子、浜田すみ子、加藤裕子訳、平凡社。出版元品切れだが、amazonで入手可能)である。確かにトマス・エドワード・ロレンスはかなりの変わり者であった。私生児であった。酒を嗜まず、煙草を吸わず、菜食主義者であった。一生、異性を知らなかったといわれている。また、同性愛者、マゾヒストであったかもしれない。しかし、それがどうしたというのだ。そういうことよりも、ロレンスが多彩な才能と抜群の行動力を有しており、かつ、非常に優れた知性の持ち主であったことの方が重要だ、というのが、この本の著者の考え方である。
「ロレンスは時代の先端をいく考古学者であり、有能な秘密諜報員であり、卓越した軍事戦略家、ゲリラ戦指導者であり、挫折したとはいえ確固たる信念を持った外交官であり、優れた機械技術者であり、さらには偉大な作家だった。彼が46歳で死んだことを考慮すれば、全く驚くべき業績である。ロレンスの生きた時代の中に、彼と肩を並べ得る人間は、そう多くない」と評価している。
中野好夫が「悲劇はいつも栄光の道づれという形でやってくる」と述べているように、ロレンスの場合もまた、砂漠の英雄という名声と、矛盾し実行不能な祖国の外交方針に起因する良心の呵責が、まさに手を携えてやってきたのである。そして、この精神的な苦痛はロレンスの生涯に極めて重大な影響を与えることになる。祖国イギリスのアラブに対する裏切り行為がいかにロレンスを苦しめ、絶望に突き落としたかは、ロレンスのアラブ独立運動の体験記『知恵の七柱』の後半部分に幾度となく現れる痛ましい告白によって窺い知ることができる。
ロレンスの事例に照らして、つくづく思うのは、個人の目標、方針と組織(国家、企業など)のそれが一致している人間は、本当に幸せだということである。
アラビアのロレンス-完全版-
この作品のスケールの大きさ。
是非とも大画面で観ることです。砂漠の蜃気楼からロレンスが自らを省みず仲間を救出して帰ってくるシーンなんてカッコイイ!
砂漠の中を疾走するラクダにまたがっての戦闘シーンもいいです。
だんだん、ロレンスが狂気におぼれていくさまを見所いっぱいに描いた大作です。
アラビアのロレンス【完全版】 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
これだけのも映画を作ったら、もうリメイクなんてできないだろう。自然の作った砂漠という最高のロケーションの中で美しく撮りあげている。現場的意見だが、撮影状況を想像するとすごい根気だと思う。ロケハンはできないし、NGも出せないし、足跡もつけられない。内容も素晴らしく、ロレンスの人間臭さがよく表されている。英雄にされ、天狗になる所などかなりのナルシストっぷりがうかがえる。(笑)女性を一切使わず、妙な数字取りに走らないところもいい。戦争がテーマなのであまり女性受けはしないかも。できれば大画面で見たい傑作。